高木信哉『「ケルン・コンサート」のキース・ジャレット』:初心者に適した入門書

高木信哉『「ケルン・コンサート」のキース・ジャレット』:初心者に適した入門書

ジャズ評論家・高木信哉氏による『「ケルン・コンサート」のキース・ジャレット』を紹介します。本作は映画『1975年のケルン・コンサート』の公開に合わせて出版されたものですが、キース・ジャレットの音楽に初めて触れる方が、その波乱の半生や伝説的な演奏の背景を知るための入門書として、非常に適した一冊です。(2026.4.16)

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まるで映画パンフレットのような薄い冊子

高木信哉氏の『「ケルン・コンサート」のキース・ジャレット』(1500円=税別)は、書籍識別番号こそありますが、出版社が「高木信哉」となっており、ふつうの書籍とは異なります。 

しかも、ページ数が46ページで、映画パンフレット並みの薄さです。ですから、Amazonのレビューでも厳しい指摘がついています。もしキース・ジャレットをよく聴き込んでいるようなファンなら、「ほかの本や雑誌で読んだ情報ばかり」と思うかもしれません(そういうコメントもついています) 

でももし、あなたがジャズもキース・ジャレットもふだん接していない人で、映画『1975年のケルン・コンサート』を観て、キース・ジャレットを聴いてみたいな!と思ったなら、きっと最初に手に取るとよい一冊ではないかと思います。 

高木信哉『「ケルン・コンサート」のキース・ジャレット』
キース・ジャレットの金字塔「ケルン・コンサート」をめぐる物語。 史上最も売れたソロ・ピアノ・アルバム『ケルン・コンサート』。発売から50年、今も売れ続けるこの金字塔の裏には、信じがたい運命の連鎖があった。キース・ジャレットの苦難の半生から、伝説の夜の真実までを綴る冊子。

高木信哉『「ケルン・コンサート」のキース・ジャレット』

キース・ジャレットの半生とケルンの伝説の夜の真実を辿る

序文やあとがきを除く内容は、 

  • 1.キースの人生は苦難の連続 
  • 2.多くのバンドで頭角を現すキース 
  • 3.ケルン・コンサートが生まれた背景 
  • 【キースを深く知るためのディスク・ガイド】 
  • 4.知られざるケルン・コンサートの真実 
  • 5.ケルン・コンサートで築かれた功績 
  • 6.「ケルン・コンサート」を演奏する人々 
  • 山口ちなみ:スペシャル・インタビュー 
  • ラズウェル細木:キース・ジャレットと私 
  • 巻末付録:キース・ジャレット来日公演記録 

となっています。 

このうち4は、映画『1975年のケルン・コンサート』の内容を文字にした印象なので、映画で楽しみたい!という方は、映画を先に観てから手に取ったほうがいいかもしれません。 

📖あわせて読みたい:映画『1975年のケルンコンサート』の紹介はこちら👉 

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初心者に最適な、厳選された全8枚のディスクガイド

初心者にやさしいと思うのは、3と4のあいだに挟まれるディスク・ガイドです。 

全部で8枚のアルバムが紹介されていますが、キース初心者に勧めるなら確かにこれ!と思えるアルバムばかりです。いくつかサンプル音源もつけて紹介文の一部を引用します。 

サムホエア・ビフォー/キース・ジャレット・トリオ
全9曲中、7曲がキースのオリジナル。2曲がカバー曲。冒頭のボブ・ディランの「マイ・バック・ペイジ」が、特に素晴らしい。ジャズの枠を超えて人気となった。

フェイシング・ユー/キース・ジャレット
初のソロ・アルバム。全8曲は、キースのオリジナル。全世界が驚いた傑作である。とにかく型破りで、抒情的であり、随所にロック的なアプローチもある。すなわちキースは、ジャズもロックも超越して、ピアノ・ソロのインプロビゼーション(即興演奏)という最もシンプルな形式で演奏した。

マイ・ソング/キース・ジャレット
一度聴いたら忘れられない、とても美しいアルバムである。特にタイトル曲の「マイ・ソング」は秀逸。キースとヤン・ガルバレクの綺麗な音には、感動という言葉しか浮かばない。

病を克服して妻に贈られたクリスマスプレゼント

8枚目に紹介されるアルバムは、紹介文自体がとても惹かれるので、全文そのまま引用します。 

メロディ・アット・ナイト、ウィズ・ユー/キース・ジャレット
「慢性疲労症候群」を克服した後、制作された特別なアルバム。全曲がソロ・ピアノで、スローなスタンダードばかり。しかしながら、その音楽のなんと美しく感動的なことか。キースは、スタンダードのメロディを一音一音丁寧に慈しむように奏でていく。本作は、元々発表する予定などなかった。病を克服したキースが、妻に感謝の気持ちを込めて録りためた「私家盤」だったのだ。1998年のクリスマス、キースは妻に小さなリボンをかけた録音テープをプレゼント。それが、本作だ。

どれも納得の紹介文です。サンプルを聴いて気に入ったら、キース・ジャレットの公式YouTubeで曲を探して聴いてみて、アルバムを購入するかどうかの判断にしてください。 

即興性を追求するスタンダーズ・トリオの厳しい流儀

個人的に「へえ…そうなんだ」と思ったのは、1983年から始まったスタンダーズ・トリオの演奏が、曲目こそスタンダード・ナンバーなのに、事実上、インプロビゼーション(即興演奏)に近いスタイルだった…というくだりです(巻末付録のキース・ジャレット来日公演記録、1996年来日の項に出てきます) 

この当時のスタンダーズ・トリオの演奏は、大変だった。SET LISTは、事前に作成されない。すなわち、ゲイリー・ピーコック(b)とジャック・ディジョネット(ds)には、事前に何の曲を演奏するのかは、何も伝えられない。その時々のキースの気分(インスピレーションとも言える)によって、その日のプログラムが決まるのだ。キースが奏でるピアノ独奏のイントロを聴いて、「何の曲か?」と、ゲイリー・ピーコックとジャック・ディジョネットが、自然に感知しないといけないのだ。そして全員の合奏に移行していくのである。この厳しい流儀こそが、素材の新鮮さとバンドの即興性を創造する。すべてはキースが決めるのだ 

映画を観て、高木氏の冊子を読んで、ぜひキース・ジャレットの世界にいざなわれてみてください。 

(しみずのぼる) 

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