新入社員向け「企業年金」ガイド:元本確保型とアクティブ型を避ける理由

新入社員向け「企業年金」ガイド:元本確保型とアクティブ型を避ける理由

新社会人として第一歩を踏み出したこの時期、多くの企業で案内されるのが企業年金(確定拠出年金)の「運用指示」です。学校では学ぶ機会の少ない資産運用ですが、最初の銘柄選びが将来の受取額に大きな差を生みます。本記事では、初心者が陥りやすい誤った選択肢を避け、新NISAにも通ずる効率的な運用の考え方について解説します。 (2024.4.16)

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企業年金の「運用指示」手続きが持つ将来への影響力

すっかり春ですね。オフィス街を歩いていると、リクルート姿の若者をたくさん見かけます。

一人で行動しているなら就活生だと思いますし、集団でいるなら「新入社員さんたちだな」と見当がつきます。どちらにも心の中で「がんばれ」とエールを送りますが、多くの企業で新入社員が研修期間中に必ずやることがあります。何だかわかりますか?

新入社員が研修期間中に必ずやることーーそれは企業年金確定拠出型年金=DC年金)の商品設定です。

DC年金は、基本的に企業が掛け金を用意して従業員が金融商品を選んで運用する制度で、退職金制度として採用している企業が数多くあります(企業によって、将来受け取る給付額が決まっている確定給付型年金=DB年金のところもありますが、DB年金とDC年金を両方採用している企業もあります)

DC年金の最大のメリットは税制優遇です。運用中の利益は非課税で、60歳からの受給時は退職金と年金の税制優遇を受けられます。また、企業が拠出する掛け金に加えて従業員が”自腹”で掛け金を増やせる「マッチング拠出」を採用している企業も少なくありませんが、こちらも拠出時の所得控除を受けられます。

このDC年金がなぜ、新年社員の時に大事になるかというと、DC年金は、企業側が用意する掛け金を含めて、従業員が金融商品を自分で選んで運用する仕組みだからです。

これを「運用指示」と呼びますが、運用指示の初回は会社に入社した時ーーつまり新人研修の最中に行います(初回に設定した後に自分で商品設定を変えることができます。これを「スイッチング」と言います)

従業員の運用指示によって、60歳の時に受け取れる退職金額や、60歳以降好きなタイミングで需給開始時期を選べる企業年金額が大きく変わります。

年利10%以上の好成績で運用している運用巧者も入れば、マイナス10%以上というダメダメな従業員もいて、特に後者は60歳の時に愕然とすることになります。

学校や大学では教わらない社会人のための資産運用

わたしは常々不思議に思っているのですが、新しい仕事への期待と不安で胸を膨らませている社会人1年生の新入社員のなかで、DC年金の「運用指示」をできるための前提の知識を、あらかじめ身に着けている人がどれだけいるのでしょうか。 

というのも、大学で教えてくれるとは、とても思えないからです。 

商学部や経営学部の学生なら学べる授業はあるかもしれませんが、文学部や法学部など、それ以外の学部の学生なら、まず間違いなく学ぶチャンスはありません。 

人事部の研修担当者が概略は教えてくれるでしょう。あるいは、人事部が手配したFP(ファイナンシャル・プランナー)が30分程度のレクチャーをしてくれるかもしれません。 

でも、それは本当の概略です。せいぜい下記のエッセンスを教えてくれるだけでしょう。 

  • 元本確保型(定期預金)と元本変動型(投資信託)がある 
  • 投資信託にはアクティブ型とパッシブ型がある 
  • 株式は変動が大きく、債券は株式と逆の動きをする 
  • 株式と債券を組み合わせたバランス型の投資信託もある

ぶっちゃけ、どれを選べばいいの。それだけ教えてよ!

そう言いたくなる気持ちはよ~くわかります。

でも人事部の研修担当もFPも、それだけは絶対に教えてくれません。個別商品のサジェスチョンはしてはいけないことになっているからです。あくまで本人が「運用指示」するのが決まりなのです。

初心者が陥りやすい2つの誤った運用選択のパターン

ですから、だいたい陥りやすいパターンは、以下の2つではないかと想像します。 

元本割れはやっぱり怖いわ…だから元本確保型を多めにしようかな

パッシブって「消極的」って意味だよな。おれはアクティブ型の投資信託から選ぶぜ! 

人事担当者やFPは、必ず「商品設定は途中でスイッチングできますから」と説明しています。研修時に渡される資料ーー金融商品ガイドと仕組みを説明する資料にもスイッチングのやり方が必ず書いてあります。

にもかかわらず、日々の仕事に追われて、自分がDC年金で何を選択したかもすっかり忘れてしまい、研修時に渡された資料も紛失し、スイッチングできることも忘れてしまうーー。

その結果、知らぬ間にマイナス運用を40年続け、60歳の時に退職金額と年金額を知らされて愕然とする!というパターンに陥っていくのです(何が「正解」なのか、のちほど書きます) 

【実例】20歳からNISA経験済みの娘が選んだ選択肢

ちょっと私的な話題をはさみますと、私は娘が20歳になった時につみたてNISAiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めさせました(NISAは現在18歳からできますが、当時は20歳からでした) 

つみたてNISAの掛金は毎月3万3333円、iDeCoは毎月2万円。大学3年と4年の2年間分の積立額と掛け金はわたしが出してあげました。 でも、商品を設定する時は娘を横に座らせて、PC画面で商品の説明をしながら設定しました。 商品を選択する理由がとても大切だからです。

〇〇ちゃんはまだ20歳だから長期に運用ができる。経済は必ず成長するから、世界経済やアメリカ経済の成長を買うと思えばいいよ。だから、この「先進国株」というのを設定するよ。

投資信託を選ぶ基準は手数料(信託報酬)だ。これが低いものを必ず選ぶこと。それだけに気を付けて全世界株、先進国株、米国株のインデックス型投資信託で比較してみてごらん。 ここにパッシブ型と書いてあるのがインデックス型投資信託だから。

2年間の運用でも含み益が20%前後あったため、資産運用の大切さを娘は肌身で知っていました。

ですから、娘は2年後、新入社員研修でDC年金の説明を受けた際、すぐに連絡してきました。

ねえねえ、間違ってないと思うけど、念のため実家に帰るから、商品選択の確認に付き合ってくれる? 

ちゃんと適切な金融商品(商品一覧で信託報酬が最安の米国株連動インデックス型投資信託で100%)を選んでいたので、大学の2年間、つみたてNISAとiDeCoで教えた甲斐があったな~と嬉しくなったものです。 

ちなみに、娘が2年間積み立てたiDeCoは、会社勤めになったため企業型DC年金に移管となり、その手続きも厚生部(?)に自分で連絡をとって手続きしていました。 

そんな娘なので「〇〇は大学生の時から資産運用してたらしい」とうわさになり、数年先輩の社員から「SBI証券に口座作りたいんだけど、やり方教えてくれる?」と声をかけられたりしたそうです。 

わたしの娘のように、大学在学中からNISAやiDeCoをやっているのは相当レアなことで、親が子どもに「社会に出るために必要な教育」の一環で投資教育をしているケースに限られるだろうと想像します。 

ということは、大半の新入社員は自分で何とかしないといけないのです。

新人研修で覚えることはたくさんあります。60歳になって初めて受け取れる企業年金のことなど、FPの説明も話半分(スマホいじり半分?)で聞き流すでしょうし、スイッチングのことも絶対忘れるに決まっています。 

ところが、そんなうかつな対応をしていたら、先ほど書いたように、60歳になって愕然とすることになります。 

長期的な資産形成を妨げる元本確保型商品のデメリット

元本割れはやっぱり怖いわ…だから元本確保型を多めにしようかな

これがなぜダメかと言えば、40年近くものインフレ率(物価上昇率)から、確保される「元本」の価値は、おそらく半分ぐらいになっているだろうからです。 

毎月2万円ずつ40年積み立てた場合、元本は960万円ですが、インフレ率2%と仮定した場合、40年後の960万円の価値は430万円程度まで下落しています。 

インフレ率を上回る利回りを目指さなければ、事実上、60歳以降に受け取れる実質的なお金は相当減ってしまいます。「国民年金+厚生年金」に上乗せされる3階部分の企業年金を、「元本」にこだわって貨幣価値で半減させたら、老後がかなり不安な状況になりかねません。 

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コストが高く長期運用には不向きなアクティブ型投信

パッシブって「消極的」って意味だよな。おれはアクティブ型の投資信託から選ぶぜ! 

これがなぜ間違えかと言えば、アクティブ型は信託報酬が高いからです。

娘をiDeCoに加入させた時のパンフレットをひもとくと、投資信託で一番低い信託報酬は0.1989%、一番高い信託報酬は1.705%でした。アクティブ型にはもっと高いものもゴロゴロありますが、それでも両者の差は1.5%以上になります。

どちらの投資信託も運用利回りが4%だったと仮定すれば、手数料の差で片方は事実上の利回りは2.5%ということになります。 毎月2万円の掛け金で40年後、利回り4%なら元本960万円に対して、利息分は約1370万円。2.5%なら利息分は約680万円です。差し引き690万円も損をすることになります。

ちなみに、パンフレットの商品の中には「ターゲットイヤー型」も複数選べるようになっていますが、それがダメな理由も手数料が高くなるからです。 

📈あわせて読みたい:投資信託の手数料、インデックス型とアクティブ型の比較はこちら👉

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新NISAと共通する効率的な銘柄選びのコツ

このように書いてくれば、実は、これはすべてNISAで言われていることと一緒だとわかるでしょう。 

たとえば、マネーコンサルタントの頼藤太希さんの「新NISAで絶対買ってはいけない5つの地雷商品」を見てみましょう。 頼藤氏が挙げる「地雷商品」として、

  • 信託報酬の高いインデックス型の投資信託 
  • ターゲットイヤー型 
  • テーマ型 
  • 隔月分配型 
  • ファンドラップ・ロボアド 

の5つを列挙していますが、 「信託報酬の高いインデックス型の投資信託」なら、 

eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の信託報酬は、年0.05775%です。(略)しかし、全世界株インデックスファンドはeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)の他にもたくさんあります。そして、商品ごとに信託報酬はバラバラです。たとえば、「全世界株式インデックス・ファンド」(運用会社:ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ)というものがありますが、信託報酬は年0.528%です。また、「eMAXIS全世界株式」(運用会社:三菱UFJアセットマネジメント)は運用会社がeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)と同じで、限りなく商品名も似ていますが、全く別の商品であり、信託報酬は年0.66%です。つまり、全世界株がいいからと、適当に商品を選んでしまうと、信託報酬の高いものを買って大損してしまうかもしれない、というわけです。 

全世界株インデックスファンドは、同じ指数に連動する商品ならどの商品を選んでも運用成績に差はありません。しかし、信託報酬が違うと、手元に残る資産残高が変わります。 

たとえば、新NISAで「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」と「eMAXIS全世界株式」にそれぞれ月5万円ずつ投資したとします。運用利率はどちらも年5%だった場合の30年後の資産額の差は次のようになります。 

「新NISAで絶対買ってはいけない5つの地雷商品」より

と書いていますし、「ターゲットイヤー型」なら、

ターゲットイヤー型とは、時間が経つにつれて自動的に資産配分を変化させる投資信託です。一般に、リスク許容度(いくらまで損に耐えられるかの度合い)は、年齢が上がるにつれて低くなります。これを踏まえて、ターゲットイヤー型では投資信託を保有する人が若いうちは株式の比率を高めて高いリターンを狙い、年齢が上がるにつれて徐々に債券の比率を高めてリスクを減らすという運用を運用会社が自動的にやってくれます。(略)しかし、ターゲットイヤー型の商品の信託報酬は、バランス型(配分比固定型)よりも高く設定されています。 

たとえば、投資家に人気のバランス型(配分比固定型)「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」の信託報酬は年0.143%です。 

それに対して、つみたて投資枠のターゲットイヤー型「野村資産設計ファンド(DC・つみたてNISA)2060」の信託報酬は年0.462%。さらに、成長投資枠のターゲットイヤー型「アライアンス・バーンスタイン・財産設計2050」の信託報酬は年1.59%です。上でも確認したとおり、長期間運用するほどに資産額の差が大きくなっていきます。 

バランス型を買うなら超低コストのものを買っておけばいいでしょう。わざわざ余計な手数料を払ってまで「自動的に資産配分を変化させる」必要はありません。 
(略)  
また、ターゲットイヤー型は、株式などのリスクの高い資産に投資しているときに大きな損失を被ってしまうと、債券などのリスクの低い資産に切り替わったあとで損失を挽回することはできなくなる点に注意が必要です。 

新NISAではいつでも自由に資産を売却して引き出すことができますし、売却枠も翌年に復活します。もし、年齢によって資産配分を変えたいのであれば、ターゲットイヤー型に頼らずに、自分で資産を売却したり、新たに投資をしたりして調整すればいいだけのことです。ですからターゲットイヤー型の投資信託は、買ってはいけません。

「新NISAで絶対買ってはいけない5つの地雷商品」より

と書いています。 これはそっくりそのまま、DC年金の「運用指示」にあてはまります。 

NISAは18歳から利用できるようになったのに、18歳は高校3年生だから受験勉強に追われてそれどころではありません。でも、大学に入っても「NISAはこうしたらいい」なんて教えてくれる授業はおそらく皆無でしょう。 

結局は何ごとも自分で勉強するしかないのですが、新入社員たちのリクルート姿をみて「彼らは大丈夫だろうか…」と思ってしまう今日この頃です。 

(いしばしわたる)

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