山伏・忍者・陰陽師の末裔が織りなす青春小説「RDG レッドデータガール」 

山伏・忍者・陰陽師の末裔が織りなす青春小説「RDG レッドデータガール」 

きょうは荻原規子氏の和製ファンタジー×青春小説の「RDG レッドデータガール」の魅力について書きます。忍者の里・戸隠を舞台にした冒険、八王子城の亡霊が招き入れられた学園祭……。見せ場がてんこ盛りです(2025.9.1) 

内藤氏新刊が触発…再読

荻原規子氏の「RDG レッドデータガール」(角川文庫)はすでに一度紹介済みです。あらすじを煎じ詰めれば、こんな内容です。 

内気な少女・鈴原泉水子(いずみこ)は、姫神(ひめがみ)の秘密を抱えながら、山伏の末裔・相楽深行(みゆき)と共に鳳城学園に進学する。だがそこは陰陽師や忍者の末裔が集められた高校だったーー。 

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姫神のくだりは、わたしが初めて読んだ時の興奮から、なるべく触れないで紹介しようと思ったので、以前の紹介文は第1巻「はじめてのお使い」の中盤までしか触れませんでした。 

でも、内藤了氏の伝奇小説「火之神の奉り」(U-NEXT千夜文庫刊)を読み、戸隠神社や学園祭のくだりが出てきたため、 

あ~、RDGを読み直したい… 

という欲求に憑りつかれ、小説と漫画を再読する羽目となりました…。 

せっかく読み直したんだし、戸隠や学園祭のくだりだけでもRDGを紹介し直そうか… 

と考えた次第です。でも、RDGのいちばんの魅力ーー姫神のくだりは触れたくないので、あくまで部分的な紹介となるのはお許しください。 

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戸隠忍者の末裔

最初に忍者の里・戸隠から紹介します。 

泉水子が入学した鳳城学園の女子寮でルームメイトになった宗田真響(まゆら)は戸隠忍者の末裔。弟の真夏(まなつ)とともに、子供の時に亡くなった真澄(ますみ)を呼び出す能力を持っています。 

学園内で勢力拡大を図る陰陽師の末裔・高柳一条と対立関係にあり、高柳の式神を見破る泉水子や、泉水子が頼る深行とは親しい関係にありますが、泉水子や深行とともに属する生徒会執行部の夏合宿を戸隠で行っている時、真響は深行を試します(第3巻「夏休みの過ごしかた」) 

「私、そろそろ相楽の正体が知りたいの。参戦する人なのかしない人なのか。術者の世界でも、私を抜くことができる人なのかそうでないのか」 

深行には「何かある」と見抜いたのは真響の父ーー大学教授でありながら戸隠忍者の上忍(じょうにん)ーーだった。 

「そんな話、教授としたおぼえはないぞ」
「しなくても、わかっちゃうのよ。うちの父は」

「おれは、鈴原を従えてなどいないし、霊能を身につけたいとも思っていない。そんなうさんくさいものにかかわらずに、まともな道をとって大学へ行き、まともな職業につきたいんだ」
「それらしく聞こえるね……相楽によく似合っている」
「本音だからだよ」
「でも、だめ。私、お父さんの言うことのほうを信用する」

真響がそう言うと、深行の周囲を天狗の面をつけた人影が取り囲んだ。 

「今見ているものは現実と少しだけちがうの。少しだけちがう層の場所に入っている。ここは戸隠だから、真澄にはそういうことをやってのける力があるの」 

「この中に真澄がいるけど、どれだかわかる? あとの何人かは真澄の眷属だと思って。たいしたことはできないけど、攻撃されるとやっぱり痛いと思う」 

「相楽が山の修行で習っていることを見せてよ」と真響が言っても、深行は「自分を基準にするなよ。妖怪退治まで習ってるもんか」と答え、泉水子も「やめようよ。真響さん。こんなこと」と止めに入るが、真響は取り合わない。 

「まだ隠すの? いつまでもこのままになるけど、いいの? 真澄をつかまえるか、真澄の結界を破ってもとの空間にもどすか、二つに一つだと思って」 

「護身だけじゃだめ。調伏しないと」 

クラスメートに戸隠忍者の末裔なんて持ちたくないですねー。 

登場するのは制服姿の高校生たちだというのに、口をついて出てくる単語が「護身」とか「調伏」とか尋常ではありません。陰陽師の末裔・高柳が登場する場面でも、深行と泉水子に向かって「験者(げんじゃ)と憑坐(よりまし)か」と吐き捨てたり……。 

でも、このアンバランスなところがRDGの魅力でしょう。 

学園祭のホラーハウス

次は学園祭の場面です(第5巻「学園の一番長い日」) 

学園祭の統一テーマは戦国時代。学園のすぐ近くにある八王子城は、豊臣秀吉の天下統一で関東制圧のかなめとなり、北条氏照の軍勢は豊臣勢の前に籠城の末に落城。秀吉の意向で「降伏させるだけでなく必要のないところまで徹底的に攻め殺した」と言われる。その八王子城の亡霊が、高柳の仕掛けた術により、学園内に紛れ込んだーー。 

学園祭の出し物のホラーハウスで、泉水子は深行を探して暗幕をめくった。 

生首が頭上からぶら下がったり、長い髪を口にくわえた女が現れたりするが、誰も怖がっていなかった。いちゃつくカップルもいて、泉水子は(いいなあ……)と羨ましく思うほど。 

ところが、出口付近に赤黒く血に染まった着物を着た何人もの女性が見えた。すると、女性たちは前を歩くカップルに目もくれず、泉水子めがけて集まってきた。 

「お方(かた)さま」
「お方さま。よかった、ここにいらした」
「すぐに敵方が攻め寄せてまいります」
「お急ぎくださいませ。どうぞこちらへ」

そう言って女たちが泉水子の腕を取り背中を押した。 

(……ああ、そうだ。ここには氏照さまがいない。このわたしを守ってくれる人はいない。だから、わたしは、ひとりで行かねばならないのだ)
何となく納得する気分になってから、愕然として頭を振った。今、ぼんやりとでもそう考えた自分が怖くなった。のどもとに恐怖がこみ上げてくる。
(ここにいては、いけない……)

暗がりに浮かぶ無数の手が、泉水子を追ってさしのべられる。
泉水子が走り続けると、女たちの白い手だけが、あり得ない長さに伸びてゆらゆらと追いすがってくる。
(追いつかれたら、二度と外へ出られなくなる。わたしが、自分をここの住人だと信じこんでしまう……)
足の遅い泉水子だが、けんめいに走った。

光の差し込む出口が見えた。誰かと話している深行の姿も見えた。 

泉水子には、その姿が救命ブイのように映った。あれを手につかめば助かるのだ。
けれども、出口を飛び出そうとした瞬間、泉水子の肩に手がかかった。
低くささやく声。
「……つかまえた」

どうです? ものすごくホラーですね~。 

学園祭に付きもののホラーハウスの中で、スルリと異界に位相が変わるあたり、荻原さんは怖がらせるツボをよくわかっています。 

「彼女、ホントに人間?」

第5巻「学園の一番長い日」は、高柳が学園祭に仕掛けた罠を泉水子が打ち破るシーンも圧巻です。 

風がないにもかかわらず、高柳とその仲間たちは、風圧を受けたようにたじろいだ。
アンジェリカが驚いた声で何か言ったが、あいにくフランス語だった。泉水子は彼女を無視して、燃える目で高柳をにらんだ。
「わたしのこと、コントロールできると思ったのね」
泉水子のわきで、クラウスが息をのんだ小声で言った。
「彼女、破ります。信じられない」
高柳も今は驚いていたが、まだ少しかまえていた。
「そこで怒ったらだめだよ。それじゃ、まるで、悪霊みたいだよ。落ち着いて話そう。きみだって合意したことなんだからーー」
「ふざけないで」
泉水子はつっぱねた。声が怒りに震えた。
「あなたの仲間になんかならない。そんなこと一度も言ってない。高柳くんが正しいなんて、思ったこともないんだから。それなのに、ねじ曲げて思いこませようとしたのよ」
(中略)
「わたしは、高柳くんとはちがう」
かすれた声で、式神に人さし指を突きつける。それだけでよかった。
式神は宙に散逸した。二体とも、画像を消し去ったように消えて、あとかたもなかった。
アンジェリカが恐怖にあえぐ声を出した。今度はかろうじて日本語だった。
「彼女、いったい何者? ホントに人間?」

いかがですか。留学生も通う普通そうにみえる高校なのに、出てくる単語が「結界」「式神」「悪霊」……。 

こうやって場面場面を抜き書きするだけでも、RDGの面白さの一端がわかって頂けるのではないでしょうか。 

小説は7冊、漫画は5

「RDG レッドデータガール」は、小説は全6巻とスピンオフ的な1冊(「氷の靴 ガラスの靴」)の計7冊出ています。琴音らんまるさんの絵になる漫画版は全5巻です(雑誌連載が第6巻発売前だったため、内容は小説の第5巻まで) 

漫画版(KADOKAWA刊)は全5巻

泉水子さんは今日目覚めるらしい
そう予言されている学園祭だった
そこで何が起こるかは誰にも正確に言えない

被甲護身だ 唱えろ真夏っ
オンバザラギニ ハラチハタヤソワカ!

先ほど引用した高柳と泉水子の対決シーンに出てくるセリフですが、小説のほうはさらにその先(第6巻「星降る夜に願うこと」)があるので、ぜひ原作のRDGを読んでほしいと思います。

今回の再読もそうでしたが、読み始めたら、かっぱえびせんのように、 

やめられない…とまらない… 

という状態になること必定です。 

(しみずのぼる) 

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