きょうは映画「イエスタデイ」(2019年制作)を紹介します。「イエスタデイ」が秀逸なのは、ビートルズが存在しない世界を描くことで、逆にビートルズの偉大さを称えたところです。ビートルズの名曲をふんだんに使ったラブコメディになっています(2023.8.20)
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「イエスタデイ」のあらすじは、DVDの背表紙から引用しましょう。
売れないシンガーソングライターのジャック(ヒメーシュ・パテル)が音楽で有名になるという夢をあきためた日、12秒間、世界規模で謎の大停電が発生ーー。真っ暗闇の中、交通事故に遭ったジャックが昏睡状態から目を覚ますと…あのビートルズが世の中に存在していない世界に! 彼らを知っているのはジャックだけ!? ジャックがビートルズの曲を歌うとライブは大盛況。そしてエド・シーランのオープニングアクトを任され、ついにメジャーデビューのオファーが舞い込んでくる。思いがけず夢を叶えたジャックだったが……。
文字にするとおもしろみがうまくつたわらないので、ユーチューブの予告編映像をごらんください。
着想の勝利のような映画ですが、ビートルズの存在しない世界に舞い込んだ最初の兆候ーージャックが友人たちを前に「イエスタデイ」を歌う場面は特に好きです。
予告編にもすこし出ていますが、オリジナルサウンドトラック盤では、わたしはこれがいちばんのお気に入りです。
「現代のモーツァルトだ」
もうひとつ秀逸なのがエド・シーランとの絡みの部分。映画への出演オファーをよく受けたなと思いますが、エド・シーランご本人が出演しています。
ジャックの曲を聴いてジャックの自宅におしかけてきて、自身のツアーの前座を依頼します。ところが、前座のほうが観客の心をつかんでしまうのをみて、コンサート終了後、ジャックに即興で作曲する勝負を持ち掛けるのです。
ジャックが唄ったのは「ロング・アンド・ワインディング・ロード」。ジャックが演奏を終えると、エド・シーランがこう言います。
「君はモーツァルト、僕はサリエリだ」
モーツァルトの時代の宮廷作曲家サリエリの名が歴史に残らなかったことになぞらえて、ビートルズは「現代のモーツァルト」だと言っているわけです(サリエリとモーツァルトについては、ミロス・フォアマン監督の名作「アマデウス」が有名です)
「イエスタデイ」をみると、ビートルズは本当に名曲を数多く残したんだなあと実感します。先の予告編だけみても、「イエスタデイ」「抱きしめたい」「レット・イット・ビー」「ヘイ・ジュード」…。エド・シーランが言うとおり、ビートルズはこれから何世紀たっても名前が残り続ける存在でしょう。
ジャック以外にもビートルズの存在を知っている人物が出てきたり、売れない時代もずっと励まし続けてくれた幼なじみのエリ―(リリー・ジェームズ)への愛に気づいたものの、名声を得たジャックのもとを去るエリーと最後に結ばれるかどうか…など、物語としても優れていて、ラストにみんなで幸せいっぱいに唄う「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」まで、まったく飽きさせない映画です。
(しみずのぼる)
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