不朽の名作ミュージカル「ウィキッド」の実写映画が11月から全米公開されます(日本公開は25年春)。予告編も公開されて関連情報も多くなりそうですが、「ウィキッド」こそサントラ盤が優れているのです。映画の予習を兼ねてぜひ聴いてほしいです(2024.10.9)
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目次
「西の悪い魔女」の視点から描く
「ウィキッド」は、わたしがいちばん好きなミュージカルです。2003年のブロードウェイ上演以来、世界各地で公演が行われています。
わたしはアメリカに1年住んでいた2008年にブロードウェイではじめて観ました。帰国してすぐ家族を誘って劇団四季を観に行き、コロナ禍前の2019年には長女とふたりでニューヨークにミュージカル三昧の旅行を立て、「ウィキッド」はこれまでにブロードウェイで2度、劇団四季で2度観ています。
ブロードウェイではじめて観た時は、
「オズの魔法使い」でドロシーに滅ぼされる「西の悪い魔女」の視点から描かれた物語
ということしか予備知識がありませんでした。
英語のリスニングもおぼつかなく、「西の悪い魔女」ーーエルファバと、ウィンキー国の王子フィエロとの恋の行方は、フィエロ自身が何度も重要なキーワードを口にしているにもかかわらず、それに気づかないままラストシーンを迎えました。
もう号泣です。もともと涙もろいので嗚咽を抑えるのに苦労することは多々あるものの、ミュージカルを観て恥も外聞もなく号泣したのは「ウィキッド」だけです。
観劇後すぐにCDを買い求めて、「ウィキッド」の情景を思い浮かべながら、繰り返し聴いたものです。
映画の日本公開は25年春
その「ウィキッド」の実写映画がついに観られるのです。映画は前編・後編の2部作で、前編の全米公開は11月22日。予告編もすでに公開されています。
「人は邪悪に生まれるの?それとも邪悪になっていくの?」というささやかな問いから始まる。魔法と幻想の国・オズにあるシズ大学の学生として出会ったエルファバ(シンシア・エリヴォ)とグリンダ(アリアナ・グランデ)。緑色の肌をもち周囲から誤解され、まだ自分の本当の力を見いだしていないエルファバと、野心的で、まだ自分の本当の心を見いだしていない人気者のグリンダは、寄宿舎で偶然ルームメイトに。見た目も性格もまったく逆のふたりは、最初こそ衝突し合うが、次第に友情を深めてゆく。そしてこの出会いが、やがてオズの国の運命を大きく変えることになる…。
日本公開は2025年春ですので、まだしばらく余裕はありますが、全米公開後はいろいろと話題になる場面も増えそうです。それなら今から予習しておけばいいですし、それにはサントラ盤を聞くのが最善です。
しかも、サントラは劇団四季版もあります。

英語の歌詞を読み、四季版の訳詞もみながら、「ウィキッド」の物語世界への想像を膨らませてみてはいかがでしょうか。
No One Mourns The Wicked
印象的な幕開けとなる「No One Mourns The Wicked」(四季版は「グッド・ニュース」)の歌詞を書き出してみましょう。
Good news!
She’s dead!
The Witch of the West is dead!
The wickedest witch there ever was
The enemy of all of us here in Oz is dead!
Good news!
Good news!グッドニュース!
聞け!
恐ろしい魔女
悪者は消え去る
俺たち皆の敵は
死んだ!
グッドニュース!
グッドニュース!
「南の善き魔女」--グリンダが登場して次のように歌います。
The Wicked’s lives are lonely
Goodness knows
The Wicked die alone
It just shows, when you’re wicked
You’re left only on your own誰にも
愛されぬまま
ひとり 消えてゆくの
それがあの子の 悲しき運命
そこから、グリンダとエルファバがシズ大学で相部屋となり、最初は反発しながらも徐々に惹かれ合っていく…という「ウィキッド」の物語世界の幕が開けます。
Dancing Through Life
グリンダとエルファバが共に惹かれるウィンキー国の王子フィエロが登場するのは、「Dancing Through Life」(四季版は「人生を踊り明かせ」)からです。
Dancing through life, skimming the surface
Gliding where turf is smooth
Life’s more painless for the brainless
Why think too hard when it’s so soothing?踊ろう みんな一緒
それが人生だ
踊れば 心は
明るく 晴れ晴れと
脳みそ ため込んで
嬉しがるのはバカ
人生 踊り明かそうよ
何も考えず
I’m Not That Girl
こんな脳なしなキャラクターで登場し、すぐにグリンダのボーイフレンドとなるフィエロに、エルファバが心惹かれます。その恋心を唄うのが「I’m Not That Girl」(四季版は「私じゃない」)
Hands touch, eyes meet
Sudden silence, sudden heat
Hearts leap in a giddy whirl
He could be that boy
But I’m not that girl何故なの
手と手が触れる
ただそれだけで
心痛む 胸の奥Don’t wish, don’t start
Wishing only wounds the heart
I wasn’t born for the rose and the pearl
There’s a girl I know
He loves her so
I’m not that girlフィエロ あなたの
瞳の中には
私はいないの
ただひとり 見つめてる
グリンダ
Thank Goodness
けれどフィエロは、動物を助けることに一途なエルファバに惹かれていきます。エルファバが「悪い魔女」の烙印を押されてエメラルド・シティから追放され、グリンダは待ち望んだフィエロと婚約しますが、フィエロの心がエルファバにあることを思い、せつなく唄うのが第2幕の冒頭の「Thank Goodness」(四季版は「魔女が迫る~この幸せ」)です。
But I couldn’t be happier
Simply couldn’t be happier
Well, not “simply”
‘Cause getting your dreams
It’s strange, but it seems
A little, well, complicatedでも 幸せには……そうよ
変わりはないわ
だけど……
幸せを掴んでも
虚しい 何故なの?There’s a kind of a sort of cost
There’s a couple of things get lost
There are bridges you cross
You didn’t know you crossed
Until you’ve crossed夢叶ったの……そう
求め続けた……はず
これほどの幸せは 他にはないわ
For Good
そして、エルファバとグリンダが永遠の別れを前にふたりで唄う「For Good」(四季版は「あなたを忘れない」)
Who can say if I’ve been changed for the better?
But because I knew you
Because I knew you
I have been changed for goodあなたは私の中で
永遠に輝き続ける
いつまでも
いつまでも
忘れない
あなたを ずっと
「For Good」は以前にも記事で触れました。歌詞のヒントとなったエピソードはこちらをごらんください。

第1幕のフィナーレとなる「Defying Gravity」(四季版は「自由を求めて」)が最も知られた曲ですが、それ以外もここで紹介したとおり心に残る名曲ばかり。嘘偽りなく「捨て曲なし」です。
映画を観る前に、サントラ盤を聴き込んで、「ウィキッド」の物語世界に思いを馳せてみてください。幸せな気分になれること請け合いです(あ~、早く映画を観たい!)
(しみずのぼる)
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