いまこそ観るべき「偏見の恐怖」…映画「トワイライトゾーン」 

いまこそ観るべき「偏見の恐怖」…映画「トワイライトゾーン」 

きょうは1983年製作のアメリカ映画「トワイライトゾーン/超次元の体験」を紹介します。スティーヴン・スピルバーグら4人の監督によるオムニバス映画ですが、特に第1話「偏見の恐怖」は、いままさにアメリカを襲う偏見の恐怖を映し出しているように思えてなりません(2025.8.27) 

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一世風靡した人気TVドラマ

いまから40年以上前の映画ですが、最近観直してみてまったく古さを感じさせないことに驚きました。 

オリジナルは1959年から64年にかけて放送された人気SFテレビドラマ「トワイライト・ゾーン」で、日本でも「ミステリー・ゾーン」のタイトルで放送されました。 

その影響はとても大きく、円谷プロの「ウルトラQ」はもろに影響を受けた作品として有名ですし、フジテレビ系列の「世にも奇妙な物語」シリーズも「トワイライト・ゾーン」を意識して製作されたと言われています。 

ですから、スティーヴン・スピルバーグら当時の有名映画監督が競演して「トワイライト・ゾーン」のオムニバス映画を作ったということで、映画公開時はとても話題になりました。わたしも1984年の日本公開時に映画館で観ました。 

1959年、金曜日の夜。ロッド・サーリングのTVシリーズ『ミステリー・ゾーン(TWILIGHT ZONE)』によって、我々は時空を超え、エイリアンとコンタクトし、かつて味わったことのない恐怖さえも体験することができた。時は流れて1983年。想像力豊かな映画監督たちによって、我々は再びトワイライトゾーンへ旅立つ。(中略)傑作エピソードが装いも新たに蘇る。これは夢か幻か?(日本版DVDの背表紙より) 

「トワイライトゾーン/超次元の体験」に収められているのは4つの短編映画です(そのほかにプロローグとエピローグ) 

  • 第1話「偏見の恐怖」(原題:TIME OUT):ジョン・ランディス監督 
  • 第2話「真夜中の遊戯」(原題:KICK THE CAN):スティーヴン・スピルバーグ監督 
  • 第3話「こどもの世界」(原題:IT’S A GOOD LIFE):ジョー・ダンテ監督 
  • 第4話「2万フィートの戦慄」(原題:NIGHTMARE AT 20,000 FEET):ジョージ・ミラー監督 

いちばんホラー色が強いのは、超能力を持つ少年に振り回される家族の恐怖を描いた第3話「こどもの世界」ですが、「いま観るべき!」と強く思うのは、ジョン・ランディス監督の第1話「偏見の恐怖」です。 

バーで悪態をつく

主人公のビル・コナーは、バーで友人2人に合流するやいなや、悪態をつき始めた。 

まったくひどい話だ
ゴールドマンに昇進をかっさらわれた
年6000ドルの昇給がフイだ

だが、コナーの悪態はそこでとまらなかった。 

あのユダヤ野郎め
金を横取りしやがる
ユダヤ人め
がめついにも程がある

他の客がふりかえって眉をひそめるほど、コナーは大声で続けた。 

この国は日に日に暮らしづらくなってきてる
その理由を教えよう
原因はユダヤ人と黒人(Black)と東洋人(Yellow)だ。

友人2人が「大げさだよ」と諫めるが、コナーは黙らない。 

おれの家主は日本の銀行だ
目と鼻の先はニガーが住んでる

隣の席の黒人客が怒りを込めた表情で忠告した。 

失礼だが不満でも? 
意見を持つのは勝手だが聞こえない所で頼む

居心地が悪そうな様子の友人2人をよそに、コナーは言い返した。 

ユダヤ人に仕事を奪われ
ニガーの話もするなと言うのか
おれはこの国を愛している!

おれはユダヤ人なんかより優秀なんだ
槍を担いだアフリカ人や東洋人よりもだ
おれはアメリカ人だ!

憎悪に激したまま席を立ち、友人2人を残してバーを出ると、目の前に見知らぬ街並みが広がっていた。 

ナチス…KKK…ベトナム戦争

コナーが迷い込んだのは、戦前のドイツ。ナチス・ドイツの将校に追われ、逃げ込んだドイツ人家庭で「ここにユダヤ人がいる!」と叫ばれる。 

2階の窓から逃げようとして路上に転落すると、次に迷い込んだのは戦前のアメリカ。松明を片手に白装束姿のKKK(クー・クラックス・クラン)が集会の最中で、「ニガーはつるし首だ」と言われて首に縄をまきつけられる。 

なんとか池に飛び込んで逃げると、今度はベトナム戦争中のベトナムに迷い込み、米軍兵士に機銃掃射される。 米軍兵士の投じた手榴弾で吹き飛ばされた先は、またも戦前のドイツーー。

コナーはドイツ軍兵士に連行されてユダヤ人の収容列車に入れられ、列車の隙間から外を覗くと、元の世界のバーから友人2人が出てくるところ。「助けてくれ。おれはここだ」と叫んでも声は届かず、収容列車が動き出す……。 

改心の結末…事故で改変

ビル・コナーを演じるのは、アメリカの人気テレビドラマ「コンバット!」で人気を博したヴィック・モロー。しかし「偏見の恐怖」の撮影中にヘリコプター事故に巻き込まれて死亡、これが遺作となりました。 

ベトナム戦争のシーンを撮影中に落下したヘリコプターのローターに巻き込まれるという悲劇的な事故により、主演のヴィック・モロー、子役の陳欣怡(ルネ・チェン)と黎丁(マイカ・レ)の3人が死亡。当該シーンは本編からカットされ、エンディングは予定から改変を余儀なくされた(当初の脚本では主人公は人種差別主義者のまま野垂れ死ぬというものだったが、あまりに悲惨で救いが無いということで、途中で改心し、ベトナム人の子供二人を助けたところで我に帰る、という結末に変更された) 

ウィキペディア – トワイライトゾーン/超次元の体験 

改変の結果は、紹介したとおり、ユダヤ人の収容列車で運ばれるという「悲惨で救いが無い」エンディングに戻ったかたちです。

いまのアメリカに合う結末は…

しかし、悲しいかな、いまのアメリカには「悲惨で救いが無い」結末の方がお似合い…という気がしてなりません。 

移民への過剰ともいえる排撃行動。「WOKE」(人種的偏見や性差、LGBTQの差別を社会問題視する風潮)への侮蔑。女性嫌悪や反フェミニズムの思想を持つ「マノスフィア」の台頭ーー。トランプ政権が誕生して以降、偏見と憎悪の風潮が増しているように思います。 

先に引用したウィキペディアには、こう書いてあります。 

テレビシリーズにも見られる「偏見に囚われた人間がトワイライト・ゾーンに落ち込む」というストーリーだが、モロー、サーリング、スピルバーグ、ランディス、ゴールドスミス、さらにワーナー・ブラザースの創業者は、いずれもロシアやヨーロッパから迫害を逃れて移住したユダヤ系移民の子孫である。 

スピルバーグやランディスらは、いまのアメリカの状況をどんなふうに思っているのでしょうか。聞いてみたい気もします。 

事故の影響もあってか、「トワイライトゾーン/超次元の体験」は長らくソフト化がされず、DVDとして発売されたのは映画公開から20年以上たった2007年のことでした。有名監督が競演するオムニバス映画にもかかわらず、長らく「幻の映画」扱いだったわけです。 

いまでは日本語版DVDも発売されていますし、有料動画配信サービスでも視聴可能です。 

ぜひ機会があったら視聴してみてください。 

(しみずのぼる) 

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