きょう紹介するのはいくえみ綾さんの連載中の漫画「1日2回」です。変わったタイトルですが、「過去を追思し、現在を生きる大人たちの物語」です(2024.07.12)
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いくえみ綾さんについては、伊坂幸太郎氏の小説「アイネクライネナハトムジーク」の漫画版を読んだのが最初で、以来、いろいろと手を出しています。
「おやすみなさいカラスまた来てね。」という変わったタイトルの漫画も、新刊が出るたびに(楽天koboで)購入して楽しみにしていたのですが、2022年発売の7巻で終了。バトンをつぐ形で読み始めたのが「1日2回」です。
あらすじを紹介します(「1日2回」2巻の巻頭から)
園田(旧姓・吉田)れみ(39)は、高校の同級生の忠(ただし)と結婚したが、4年で死別。母・りら、中学2年生の娘・るりの3人暮らし。ある日、隣の家に住んでいたおさななじみの鍵谷季(とき)(39)が男性不妊の発覚が原因で離婚し、婿養子から戻ってきた。ふたりは小さいころから一緒に過ごしてきたがそれぞれ別の人と結婚し、今はどちらもひとり。1日2回ほど、ふと頭をかすめる恋人でもない、でも唯一の関係。ずっとそばにいたのに、本心は知らない。過去を追思し、現在を生きる大人たちの物語。
このあらすじのとおりですが、季が不妊症で出戻りして、かつて幼なじみだったれみとの恋愛ストーリーが動き出す……というほど単純じゃないのです。
高校時代の追想がはさまれ…
読み始めてすぐの頃は、ふたりが距離を縮めていくのだろうと思いきや、なかなかそうはなりません。
むしろ高校時代、忠と季は大の親友で、れみを含めて3人で過ごした高校時代の追想が何度もはさまれ、死別した忠からすぐに季に気持ちが移るはずがなく、そんな微妙な距離感がずっと続くストーリーです。
「1日2回」という不思議なタイトルの説明は、あらすじに出てくる「1日2回ほど、ふと頭をかすめる」れみと季の関係性を表すような書かれ方をしていますが、第1話の最後にはこんなふうに出てきます。
思春期の頃
彼女を連れ込んだ季の部屋を
窓越しに眺めカーテンを引いた
イラつくことにイラついた理由はひとつ
「わからない不安」
変わってゆくことへの不安
茫漠とした未来への不安
思春期なんてそんなものだいつも抱えてたそんな思いも
大人になると時折胸に浮かんでは消える
それぐらいで回数にして1日2回ほど
こちらの表現がしっくり来ます。
安定に沸き起こる変化
アラフォーとなった今、母と娘との3人暮らし、仕事も順調で、安定している日々。そんな主人公れみの前に、幼稚園から高校まで常にそばにいたおさななじみの季が出戻ってきたーー。
大人になったふたりだからこそ、思春期に似た変化への不安が浮かぶのは「1日2回」程度。安定したところに沸き起こる変化への不安だからこそ、ふたりの恋愛は遅々として進まないのだなあ……ということが、とても丁寧に描かれています。
主人公のれみが、小学生だった娘(るり)の前でたった一度涙を流した場面が出てきます。
土地持ちの娘の婿養子となった季の結婚式で、忠やれみも写った高校時代の写真が結婚式場に映るのを観て一筋の涙が流れる……。るりが涙した理由を訊ねると、れみはこう言います。
かなしいとか
さみしいとかじゃなくて
そういう負の感情ではなくて時は過ぎてゆくんだなあっていう
あたりまえのことがね
もう戻らないなあって
ぜんぶ愛しいなあって
まさに「過去を追思し、現在を生きる大人たちの物語」なのです。
れみと距離を置く季
4巻では、れみは職場の部下に想いを寄せられ、季も子持ちの美人の女性と一緒に映画を観にいったりして、「え~、れみと季の恋愛ものがたりじゃないの?!」とヤキモキさせられますが、最新刊(5巻)でさらに意外な展開に!
季が急にれみと距離を置くようになり、明らかに避けている。しかし、れみは理由が思い当たらない。そして、
ごめんね、れみちゃん
俺 もうれみちゃんに関わらないで生きていくよ
今まで仲よくしてくれてありがとう
とまで言われてしまう。
それでも、れみはどうしても理由が思い浮かばない。仕事場でも眉間にしわを寄せてると指摘され、数日後に他の同級生と飲む機会があっても、考えるのは季のことばかり。
だめだ 酔えん
私 何をした?
何か悪いこと言った?
季に?
何かした?
もしくは
何をしなかった?
季に?
いつ? 何を? なんで?
何があった?
そして、ついに直接理由を聞きにいきます。
ごめん 季
私 あなたに何かしたんだね
……わからなくて
ごめん…
れみの真剣な問いに、季が明かす理由とは……。あ~、ネタバレはやめましょう。
いよいよ、れみと季のものがたりが動き出す……のか?
第6巻は2025年夏ごろ発売予定だそうです。
あと1年も先か~
れみと季のものがたりを、首を長く長くして待ちたいと思います。
(しみずのぼる)
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