夢が犯されていく:映画「パプリカ」

夢が犯されていく:映画「パプリカ」

きょうから2回に分けて筒井康隆氏原作の「パプリカ」を紹介します。誇大妄想患者の夢があふれでて現実を侵食していく様は圧巻です。1回目は、無気味な夢と現実の混淆を見事に映像化した、今敏監督の映画「パプリカ」と平沢進氏のオリジナルサウンドトラックです(2024.3.14)

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夢と現実の混淆

今回この記事を書く目的で筒井氏の原作を再読。萩原玲二氏の漫画版も読み、それから今監督の「パプリカ」を久しぶりに鑑賞しました。 

精神医療研究所が開発した、他人の夢を共有できる画期的テクノロジーDCミニが盗まれた。 それを機に研究員たちは次々に奇怪な夢を見るようになり、精神を冒されていく。謎の解明に挑む美人セラピスト千葉敦子は、極秘のセラピーを行うため、性格も容姿もまったく別人の夢探偵パプリカに姿を変え、クライアントの夢の中へと入り込む。 しかし、狂ったイメージに汚染された夢の中では、おぞましい罠がパプリカを待ち受けていた…。 

今敏監督(1963年ー2010年)の遺作となる「パプリカ」は、映画の尺という制約もあり、原作とはかなり異なる部分があります。原作は「夢探偵」の要素が多いのに対して、映画は原作の中盤から展開していく「夢と現実の混淆」により比重が多い印象です。 

島所長のセリフに注目

個人的に「うまいなあ」と思ったのは、精神医療研究所からDCミニが盗難に遭ったと知り、DCミニの開発は「科学の暴走」と決めつける乾理事長を前にして、島所長がこれに抗弁しつつも、徐々に口にする単語がおかしくなっていく部分です。 

DCミニは精神治療の新地平をもたらす太陽の王子様です 

横にいる主人公の千葉敦子が、「王子様」のところでちらりと島所長を見やります。次からの島所長のせりふは、 

必ずしも泥棒が悪いとはお地蔵さんも言わなかった

パプリカのビキニよりDCミニの回収にこぎだすことが幸せの秩序です 

カエルたちの笛や太鼓に合わせて回収中の不燃ごみが噴き出してくるさまは圧巻で… 

というように、徐々に狂ったような言葉が噴き出してきて、急に走り出して研究所のガラスを突き破って地上に落下します。 

島所長が脳内で見ていたのは、カエルが太鼓を叩いて先導するパレード。重度の誇大妄想患者の夢を、島所長は何者かに「識閾下(しきいきか)投射」されていた。 

島所長:あのパレードはどこに向かっていたんだろう 

千葉敦子:行けば二度と戻れない彼方でしょうね 

平沢進氏の「パレード

カエルが先導するパレードのシーンに流れるのが平沢進氏の「パレード」です。 

映画「千年女優」やアニメ「妄想代理人」でタッグを組んだことのある平沢氏が先に曲を作り、それに合わせて映像を組み立てたそうですが、確かに、この「パレード」は曲と映像がぴったりとマッチしています。

残念ながら、ユーチューブの公式チャンネルにもスポティファイにも「パレード」がないので、ユーチューブで非公式の動画をごらんいただくしかありませんが、これは必見です。

「千年女優」

かつて一世を風靡した大女優、 藤原千代子。 30年前忽然と銀幕から姿を消し、人里離れた山荘でひっそりと暮らしていた彼女の元に、時を越えて古びた小さな鍵が届けられた。 

あたかもその鍵が記憶の扉を開いたかのように、千代子が語り始めたその物語は、彼女が生きてきた70数年という現実の流れから溢れだし、”映画”という幻想の海流を通って、遙か戦国の昔から、見果てぬ未来の彼方まで広がって行く。 

閉ざされた想い出に隠された千代子の秘密とは? 鍵が開いた空白の時は何を意味するのか? 錯綜した記憶の彼方にこそ千代子の真実が浮かび上がる。 

「妄想代理人」

東京武蔵野で発生した通り魔事件。被害者である月子の不明瞭な供述から、周囲は本人の自作自演によるものと疑う。だが、第二の被害者が出て事態は一変。存在するはずがないと思われていた犯人は“少年バット”として事件を取り巻く人たちを次々と襲っていく。“少年バット”とは一体何者なのか? そして次なる標的は? 

「パプリカ」のオープニングとエンディングに流れる「白虎野の娘」「媒介野」「白虎野」)は、平沢進氏の公式サイトでフリー音源としてダウンロードできます。とてもいい曲なので、ぜひ聴いてみてください。 

ダウンロードの際には、マウスを右クリックし「別名で保存」かそれに類するものを選択し、保存してください。
susumuhirasawa.com

映像のための音楽

おすすめのCDは「映像のための音楽~平沢進サウンドトラックの世界」「パプリカ」のオリジナルサウンドトラック盤です。 

映像のための音楽~平沢進サウンドトラックの世界
「パプリカ」オリジナルサウンドトラック盤

前者は「千年女優」のエンディング曲(ロタティオン(LOTUS-2))や「妄想代理人」のオープニング曲(夢の島思念公園)も収録されています。ただ「パレード」は後者で聞くしかないので、わたしは両方とも持っています(とても好きな曲なので…) 

「パプリカ」をユーチューブで探したところ、公式チャンネルで英語版の予告編を公開していました。音楽は(権利の関係でしょうか)平沢氏の曲ではありませんし説明も英語ですが、映像を見るだけでも「パプリカ」の魅力は十分伝わります。 

Sony Pictures Entertainment – PAPRIKA [2007] – Official Trailer (HD)

「パプリカ」はネットフリックスやユーネクストでも配信されています。ぜひ「夢が犯されていく」(映画公開時のキャッチコピー)感覚を味わってみてください。 

(しみずのぼる) 

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