笑って泣けて心ほっこり:清家雪子「まじめな時間」 

笑って泣けて心ほっこり:清家雪子「まじめな時間」 

きょう紹介するのは漫画です。清家雪子さんの「まじめな時間」(アフタヌーンKC)。笑えて、泣けて、心あたたまるーー三拍子そろったお気に入りの漫画です。たった2冊というのもお財布にやさしいので、ぜひ手にとってみてください(2023.8.21)

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キミ死んじゃったんだよ

「まじめな時間」は、主人公の高校生、植村一紗が事故に遭って血を流して倒れている自分を見つける場面から始まります。そう、主人公は死者の霊なのです。 

あーあー高校生かぁ 

かわいそうにな 

キミ死んじゃったんだよ 

空中から声をかける中年男。酒井と名乗る男も死者の霊。怨霊と化した妻への罪悪感でこの世に長くとどまっているため、死者のガイド役を務めています。 

そばには呆然と座っている小太りの男。車を運転中に過労死し、その事故で一紗を死なせてしまった大久保もまた死者の霊……。 

ということで、登場人物は、あの世に行くまでの間、しばらく現世に漂流する死者たちです。 

カラオケで弔う…これはなくない?

もちろん、遺された家族をはじめ生者も出てきますから、泣ける要素があるのは当然ですが、1巻目はコミカルな場面が少なくありません。葬儀で号泣していた女子のクラスメートたちが 

これからどうする? 

私一人無理 泣いちゃうよ 

じゃーさー カラオケ行こうよ 

ありそうな光景ですが、カラオケルームにただよう一紗が思わずつぶやくように 

にしたって これはなくない?

と言いたくなりますよね。 

霊感少女の蘭子を頼る一紗

1巻目は、「友達以上恋人未満」と思っていた光晴が、実は別のクラスの岡部蘭子に片思いをしていたことを知って、一紗が邪霊さながらに蘭子につきまとい、怨の念を送る展開が続きます。 

蘭子は霊感が強いため、一紗の念にも反応して、ますます図に乗る一紗……。そんなコメディタッチで展開しながら、遺された家族の描写がはさまれます。たとえば、弟君がみそ汁を飲む場面。 

…味 変じゃない? 

目で何もいうなと語る父親。妻の泰子が席をはずすと、 

父さんも母さんも共に暮らす親兄弟を亡くした経験がないんだ 

それが突然子供を亡くした 

美味い飯を作れなくもなるだろ 

涙を流すこともなく、無表情のまま、ただ生活する泰子が、とうとう倒れてしまう。新潟から泰子の母親が駆けつけるも、死者の霊にはなにもできない。

一紗は自分の存在を唯一感知できる蘭子に助けを求めようとする(ここまでが1巻の内容です) 

思いをつなぐキーホルダー

泰子が気にしているのが、事故のときにスクールバックから取れて下水溝に落ちた手製のキーホルダーと知る。引きこもりのまま死者となった怨霊(玉男)の力も借りて、仲間たちが総出でぬいぐるみを蘭子に届け、ついに泰子のもとに届く。 

こうやって要約してしまうと何ともあじけなくなってしまいますが、一紗の家にあがった蘭子が「もしよかったら植村さんのこと教えてくれませんか。どんな子だったのか…」と声をかけ、一紗のアルバムをひもときながら泰子が語る場面になります(もうこのあたりから涙をこらえるのがつらいです) 

アルバムの一紗をみて、蘭子が一紗の服をほめると、泰子が話し出します。 

そうなの? あなた私と趣味合うんだわ 

一紗とは全然合わなかったの 

これ私の手作りで…着せられて嫌そうな顔してるでしょ 

内心ダッサーイって思ってたのよ 

私も懲りずに…色々作るんだけど 

口でははっきりとは言わないの 

ありがとうって受け取るんだけど 

すぐに押し入れにしまい込んで 

全然使ってくれなくってね 

優しいんだかなんなんだか… 

このキーホルダー 

これだけは鞄に付けてくれたの 

これだけは気に入ってくれたの 

あの子に伝えられなかった

そこから堰を切ったように、泰子はアルバムに映る一紗のことを語り出す。一紗が死んだ日から流すことができなかった涙をあふれさせながら……。 

まだまだあるの 

たくさんあるの 

あの子のいいところ 

なのに私 

私はそう思ってるって 

あなたを誇りに思ってるって 

全然あの子に伝えられなかった… 

泰子が立ち直るところまでが「まじめな時間」のハイライトです。その後も物語はすこしだけ続きますが、引用はここまでにしましょう。 

ラストシーンが怨霊の玉男で終わるところまで、笑って、泣けて、最後にほっこりさせるハートウォーミングな漫画です。おすすめです。 

(しみずのぼる) 

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