怨霊と神舞で対決する少女の活躍…内藤了「火之神の奉り」 

怨霊と神舞で対決する少女の活躍…内藤了「火之神の奉り」 

きょうは内藤了氏の最新刊「火之神の奉り」を紹介します。女子高生が神舞を通じて怨霊と対決する伝奇小説で、新しいシリーズもののスタートに胸躍ります(2025.8.28) 

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シリーズもの”量産”作家

内藤了氏は、2014年のデビュー作「ON」に始まる「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズが有名で、サイコスリラーからホラーまで多くのシリーズもの小説を量産しています。わたしは「よろず建物因縁帳」シリーズからはまって、いまは「警視庁異能処理班ミカヅチ」シリーズを新刊が出るたび買い求めています。 

その内藤氏の最新刊が「火之神の奉り」(U-NEXT千夜文庫刊)です。 

ヨリワラってなに?

主人公の神代江姫(こうき)は、生まれながらにして神の器となる素質を持つ16歳の女子高生。江姫を守る眷属で水の化身・銀竜は次のように説明します。 

「……ヨリワラって……なに……?」
「童に憑くと書いて憑童と読ませる。無垢で清浄な魂を持つがゆえに、捧げ物や、器にもなる子供のことです」

「憑童は、衆生の祈りをその身に宿して天魔の障礎を退ける力を持って、未曾有の災禍の前に生まれてきます」

そんな江姫に山犬姿の怨霊が近づき、江姫がこれから通う高校で災厄が起こることを幻視させた。その高校は戦国時代の怨霊や善光寺地震(1847年)の犠牲者が眠る土地に建っていた。 

「ヤツはあなたに懸想した。特別な器であるあなたが欲しいのです」 

災厄を防ぐ文化祭の祭り

災厄を防ぐには、高校の文化祭で行われる「火之神の祭り」で荒神として舞い、鬼を破らなければならない。銀竜は、祭りに除災の意図を込めたのは「豊葦原瑞穂神社の神官たちです。もともとは山岳密教の修行僧が集う院坊でした」と説明した。 

「『火之神の祭り』では荒神と鬼が戦いますが、予め勝敗は決まっていません。荒神が勝てば一年間の平穏を得て、鬼が勝てば姫を獲られる」 

「火之神の祭りは神事を模しただけの出し物ですが、舞うのが『ただの人』ならともかく、あなたが舞えば本物の鬼が降りてくる。邪鬼は『飢え』です。『襲って喰らう』のが本性で、それがあなたを狙うのですよ」 

「憑童が完全に鬼に憑かれたら、私にできることはない。あなたは邪鬼に成り下がり、躊躇わずに人を殺して生き血を啜り、肉を喰らうでしょう」 

それでも江姫は勇気を振り絞って火之神の祭りの荒神役に名乗り出るーー。 

神舞を授ける随神門の二神

江姫に神舞を伝授するのは、豊葦原瑞穂神社の随神門を守る二神です。 

「吾は櫛石窓神。太刀大臣と呼んでくれ」
「吾は豊石窓神。矢大臣と呼ばれている」

二神は江姫の夢の中に現れる。 

「神舞って、舞じゃなかったの? 昨夜は森で一晩中、戦う練習をさせられたんだよ。九字の切り方から祓いの仕方まで、ガッツリみっちり仕込まれた。あれはなに? 私が神舞の所作を覚えるまで毎晩夢に出てくると言っていた」 

「勇猛果敢な戦いの神です。声しか聞こえなかったのは、あなたにまだ力がないから。訓練は必ず護りとなるでしょう」 

とはいえ、神舞の舞台となるのは高校の文化祭です。高校生たちの軽いノリ(「いよっ、ダースベイダー!」の掛け声とか)も挿まれ、そのコントラストがいいアクセントになっています。 

銀竜や随神門の二神の助けを得ながら、様々な罠をはって陥れようとする怨霊を相手に、江姫は最後まで火之神の祭りで神舞をやり遂げることができるかーーというストーリーです。 

モデルは戸隠神社

内藤氏の地元は長野ですから、ここで出てくる「豊葦原瑞穂神社」は戸隠神社がモデルかな?と思って調べると、やはり随神門の二神の名前が同じでした。 

随神門
宝永七年(1710)の建立で、三間一戸の入母屋造り、正面の柱は四本だが後ろに八本の控柱がある八脚門で、屋根は茅葺きです。
戸隠神社の中で最も古い建造物と云われています。
左右に随身像を備えた随神門は神域に邪気・邪悪なものが入るのを防ぐ門で、お寺の仁王門と同じ働きをします。
(略)
戸隠では左右の像を「櫛石窓神(くしいわまどのかみ)」「豊石窓神(とよいわまどのかみ)」と称しています。

https://www.togakushi-jinja.jp/seiryuden/bottom/togakushiwoaruku/memo/zuijinmon.html

8月創刊の千代文庫

内藤氏の「火之神の奉り」は、有料動画配信サービス「U-NEXT」がこの8月に創刊したばかりの「千代文庫」の一冊です。

U-NEXTは、エンターテイメント小説で人気の白川紺子さん、内藤了さんの小説を、8月20日(水)より全国の書店にて発売いたします。本書は同日創刊のU-NEXT初…
www.unext.co.jp

千夜文庫は「大人を寝不足にさせるエンターテイメント小説レーベル」と銘打っていますが、内藤氏の「火之神の奉り」は宣伝文句に偽りなしで存分に楽しめた一冊でした。 しかも、末尾には、 

〈次巻:吸魂の剣へ〉 

の文字が!

内藤氏のことだから、これも当然シリーズものだろうと思って読みましたが、今から次巻がとても楽しみです。 

(しみずのぼる) 

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