教え子たちがあなたの作品:映画「陽のあたる教室」

教え子たちがあなたの作品:映画「陽のあたる教室」

きょうは音楽が好きな方ならきっと気に入る映画の紹介です。リチャード・ドレイファス主演の「陽のあたる教室」(原題: Mr.Holland’s Opus)。一生を音楽教師として過ごしたホランド先生の「作品」(Opus)は、30年の教師生活で音楽の楽しさを教えた教え子たち…という意味が、この原題には込められています(2023.8.9)

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作曲家の夢を捨てきれず

まずはあらすじから。DVDの背表紙から紹介しましょう。 

作曲家になる夢を捨てきれず、生活の為に仕方なく高校の音楽教師になったホランド。教師の経験などもちろん無い。待っていたのは音楽に対してまったく関心のない、やる気のない生徒たち。しかし、子供たちのもっている可能性に気づいた彼は、音楽の素晴らしさを彼らに教えようと決心する。その後、子供が産まれ父親になったホランドだが、最愛の息子の耳は生まれつき聞こえなかった……。 

音楽の授業が苦痛で仕方のない生徒。自身も授業が終わるとすぐに帰宅して作曲活動に専念する。そんな不幸な関係が5か月続くのですが、妻が妊娠。金を稼ぐため教師にいよいよ専念しないといけなくなったある日、ホランド先生が音楽の楽しさを生徒たちに教える喜びにはじめて気がつく場面があります。DVDの字幕から引用しましょう。 

音楽の楽しさを教える喜び

ホランド先生がイオニア音階とドリアン音階の違いを生徒たちに尋ねるが、誰も答えられない。「この5か月間に君たちに何のインパクトも与えなかったことがよくわかった」とため息をついて、よしと気を取り直して、生徒とこんなやりとりをする。 

君たちはすでにバッハのファンだ

ホランド:サリバン君、君はどんな音楽が好きだね 
生徒:(ためらう) 
ホランド:正直に 
生徒:ロックン・ロール 
ホランド:(別の生徒に)君は? 
生徒:ロックン・ロール 
(略) 
ホランド:バッハの好きな者は? 
(全員無言) 
ホランド:知らないだろうが、君たちはすでにバッハのファンだ 
(といって、ピアノで「ラバーズ・コンチェルト」を引き始める) 
ホランド:この曲は? 
生徒たち:ラバーズ・コンチェルト 
ホランド:作曲は? 
生徒:トイズ 
ホランド:違う。「ト長調のメヌエット」。作曲したのはヨハン・セバスチャン・バッハだ 
(といって、ピアノで「ト長調のメヌエット」を弾き始める) 
ホランド:バッハが作曲したのは1725年。どっちの曲もイオニア音階で書かれている。それでは今聞いた曲と、今から聞く曲に何か共通点はあるかな? 
(といって、いきなり即興でラグタイムブルースを弾き始め、早いテンポで鍵盤を連打する)

生徒たちの生き生きとした表情。心から楽しそうな笑い声。家に帰ってホランド先生はうれしそうに「大勢が手を上げて質問に答え始めた。顔色も急に生き生き。とても楽しかった」と妻に報告する。

教師の楽しさに目覚めるこの場面はとても好きです。 

「心のまま演奏するんだ」

もうひとつ、とても好きな場面があります。 

演奏会を前に、どうしてもクラリネットがうまく吹けないと悩み、奏者を辞退したいと言ってきた女子生徒。立ち去ろうとする生徒に、譜面を奏でる以外のことがあると教えるシーンです。 

キングスメンのヒットナンバー「ルイ・ルイ」(Louie,Louie)のレコードをかけながら、ホランド先生がこう言います。 

ホランド:この連中の音楽、歌はヘタクソだし、ハーモニーなんか何もない。3つの和音の繰り返しだ。だが、いい曲だ。 

そして、生徒になぜ好きなのかを尋ねる。生徒が「楽しいから?」と答えると、「その通り。音楽は楽しんで演奏するものだ。ハートで演奏する。感情を込めて、生きてる歓びを表現して人の心を動かす。音符なんか教えれば誰でも読める。その先は君がつくる」と答え、クラリネットをもう一度演奏するように言う。楽譜は見ずに「心のまま演奏するんだ」 

Play the sunset…

生徒はそれでも失敗してしまう。そこでホランド先生は、生徒とこんな会話をする。

ホランド:鏡の中の自分を見て、一番好きな部分は? 
生徒:髪です 
ホランド:なぜ? 
生徒:父がよく言うんです。”夕陽のようだ”って 
My father always says that it reminds him of a sunset.) 
ホランド:そのイメージを…(Play the sunset…

Play the sunset…とても素敵なシーンです。 

この女子生徒はラストシーンでとても大事な役回りで再登場します。 

あなたの人生の音楽なのです

「陽のあたる教室」は、さまざまな名曲がところどころに挿入されるのですが、特にジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」を、耳の聞こえない息子の前で、ホランド先生が手話を交えて歌うシーンは泣かされます。そして、最後に奏でられるホランド先生作曲の「アメリカ交響曲」……。

私たちがあなたのシンフォニーです 

あなたの作品(Opus)のメロデイーで音符 

あなたの人生の音楽なのです 

このシーンは涙なしに見られません。 

なお、エンド・ロールで流れる「コールのテーマ」(Cole’s Song)は、ジョン・レノンの息子ジュリアン・レノンが歌っている曲で、映画の冒頭でもホランド先生がピアノで弾いているバラード曲です。 「アメリカ交響曲」とともに、たいへん印象深い曲ですので、機会があればぜひ聴いてみてください。 

(しみずのぼる) 

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