壊れていた家族が絆を取り戻す…映画「シャンプー台のむこうに」

壊れていた家族が絆を取り戻す…映画「シャンプー台のむこうに」

きょう紹介するのはイギリス映画「シャンプー台のむこうに」(原題:Blow Dry、2001年製作)です。美容師が腕と技を競うヘアドレッサー選手権を舞台に、壊れていた家族が絆を取り戻すストーリーです。笑えて泣けて、とても心豊かになるおすすめの映画です(2024.5.28) 

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ヘアドレッサー選手権が舞台

DVDの背表紙からあらすじを紹介しましょう。 

かつて全英一の美容師だった父と2人で理髪店を営む息子と、10年前から交流を持つ事がなかった母。地元開催の全英ヘアドレッサー選手権出場は家族の絆を取り戻す最後のチャンスだった。その願いを背に受けて、初のコンテストに挑戦する息子のブライアンだが…。 

父のフィルと母のシェリーが絶縁することになった10年前の出来事。それは、選手権でフィルの3連覇がかかる決勝前夜、モデルを務めるサンドラがシェリーと駆け落ちしてしまったことだった。 

以来、ヨークシャーの田舎町キースリーで、フィルと息子のブライアンは小さな理髪店を営み、シェリーとサンドラは同じ町でヘアサロンを経営。シェリーがブライアンに声をかけても、「父さんが嫌がるから」とシェリーと距離を置く状態だった。 

そんな壊れた家族を動かすきっかけが2つあります。1つが地元キースリーでのヘアドレッサー選手権の開催ですが、もう1つは、シェリーが癌に侵され、すでに治療の施しようがないと医師から宣告されたことです。 

シェリーは死ぬ前にもう一度家族の絆を取り戻そうと、フィルとブライアン、サンドラに選手権出場を持ち掛けるが、誰も動こうとしない。フィルの理髪店を訪ねて「昔のように出ましょう」と声をかけても、フィルには「昔は10年前に終わった」と言われ、サンドラにも「フィルは私の髪より喉を切りたいはずよ」と言われてしまう。 

そんな彼らを動かしたのは、フィルの最大のライバル、レイモンドがブライアンに対して放った一言だった。 

偉大な父も 今じゃ腰砕け 

店に帰って選手権に出る準備をするブライアンに「ママに説得されたか」とフィルが言うと、ブライアンはこう返した。 

違うよ 
レイだよ 
侮辱されて平気?

バラバラだったフィル、シェリー、サンドラ、ブライアンが4日間続く選手権を通して、徐々にひとつになっていく……。 

どうですか。とてもおもしろそうでしょう? 

4日間にわたり腕と技を競う

選手権そのものは実際にあるもので、4日間、このような部門で美容師が腕と技を競うそうです。 

  • 1日目 女性ヘアブロー部門 
  • 2日目 男性フリースタイル 
  • 3日目 ナイト・ヘア部門 
  • 4日目 トータル・ルック部門 

ブライアンとサンドラで臨んだ1日目こそメタメタでしたが、市民ボランティアのモデルの髪をカットして競う男性フリースタイルでブライアンが大健闘して4位につけます。 

3日目はシェリーが登場。誰にモデルを頼むかと思えば、重度の白内障で盲目の老女。18世紀バロック時代に流行した髪形に変身した老女の神々しさと言ったら……。フィルが思わずシェリーに駆け寄り、「すごいよ。美しい」と声を掛けると、シェリーは慈愛に満ちた表情でフィルに語り掛ける。

目標は優勝じゃないのよ
私たち4人が家族に……

この一言が、自分は選手権に出ないと頑なだったフィルの心を溶かし、愛する妻を奪ったサンドラのもとへモデルを頼みにいかせるのです。 

フィルとサンドラが登場する4日目。サンドラの美しさにもう脱帽です(ぜひ映画でごらんください) 

ラストシーンは、フィルがみんなに「帰ろう(Home)」と声をかけ、シェリーが「ええ、我が家へ(Home)」と返して会場を後にします。 

ユーチューブに予告編がありました。 

Rotten Tomatoes Classic Trailers – Blow Dry (2001) Official Trailer – Josh Hartnett, Rachael Leigh Cook Movie HD

予告編をみてもわかる通り、ブライアン演じるジョシュ・ハートネットと、レイモンドの娘クリスティーナ演じるレイチェル・リー・クックを前面に出しています。DVDのキャッチフレーズも「ジョシュ・ハートネット主演のハートフルコメディ!!」です。 

アラン・リックマンが好演

でも、やはりこの映画で光っているのは、フィルを演じる名優アラン・リックマンです。 

〈ハリー・ポッター〉シリーズのスネイプ役で有名ですが、とても抑えた演技なのに目が離せません。 

考えてみれば難しい役柄ですよね。10年前に駆け落ちされた妻や、妻を奪った恋敵を相手に、ぬぐえぬ内心の怒りもあるでしょうし、それでも変わらぬ愛情、同志愛もある。そんな微妙な気持ちのひだを見事に演じています。 

トータル・ルック部門を終えたサンドラに向ける「きれいだ(Beautiful)」も、そして最後の「帰ろう(Home)」も、朴訥とした一言なのに、とても慈愛にあふれていて惹きつけられます。 

プレスリーのエンドロール

もうひとつ、この映画は音楽も凝っています。選曲が光っているのです。 

3日目のナイト・ヘア部門で老女をバロック調に仕立てるところで流れるのはビル・ウィザーズの「ラブリー・デイ」(以前「夜に聞くと心地良いビル・ウィザーズ&ジョー・コッカー」で取り上げました)、4日目のトータル・ルック部門ではサンタ・エスメラルダ「悲しき願い」、そしてエンド・ロールに流れるのがエルビス・プレスリー「君を信じたい」 

特に「君を信じたい」は、フィルとシェリーが「帰ろう」「我が家へ」と会場を後にする場面にかぶせるように流れるのですが、選手権のMCを自ら務めたキースリー市長(役者はウォーレン・クラーク)がプレスリーの真似して歌っている横にエンドロールが流れる…という趣向。

 

今度こそ彼女はここにいる This time the girl is gonna stay 

今度こそ僕とここにいる This time the girl is gonna stay 

いつまでもいてくれる For more than just a day 

最後の最後まで、心がほっこり温かくなる映画です。おすすめです。 

(しみずのぼる) 

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