「Dr.HOUSE」愛すべき破天荒さの行きつく先は

「Dr.HOUSE」愛すべき破天荒さの行きつく先は

アメリカの医療ドラマ「Dr.HOUSE」をNetfrixで観始めたら止まらなくなってしまいました。無頼漢を絵に描いたような主人公ハウス。古いドラマなのに、毎回、登場人物たちとの会話でクスっと笑える要素があるためです(2024.4.3)

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天才医師だけど性格は最悪

「Dr.HOUSE」は、2004年から2012年までアメリカ合衆国のFOX系列で放送されたテレビドラマです。ヒュー・ローリー演じるハウスは天才医師だけど、性格は最悪。相手が患者だろうと、同僚だろうと、平気で疑い、傷つけます。差別的な発言もします。誤診で右足の筋肉を失い、慢性的な足の痛みが彼を偏屈にしている面もあるのでしょう。

患者の病気の原因を探る「診断科」のリーダーとして、部下たちを率いて、ホワイトボードに考えられる限りの病名を列挙。院内を杖をついて歩き回り、診断の合間には、鎮痛剤のバイコディンをまるで菓子のように食べまくります。

超ロングランの理由は

このドラマ、1話完結型なのに、なんとシーズン8まで作られました。全177話。気の遠くなるようなロングランです。日本では、2006年からケーブルテレビの「FOXチャンネル」で放送があったというので、毎回ではないけれど、なんとなくわたしは見ていました。でも、改めて集中して観ると、とてつもなく面白い。

毎回、患者が突然の病に倒れてしまうところから話は始まります。病の原因は、どこにあるのか。ハウスのチームは探偵さながら自宅に押し入ることもあります。患者や家族に事前に伝えると、証拠を隠されてしまうためだそうですが、捜査権はないだろうし、かなりやばそうなんですが……。

薬物中毒、汚染、その家庭の秘密などが次々と暴かれていきます。でも、それだけではない、患者の数だけ人間ドラマがあり、会話の中からヒントを得て、一見難病に思えていた病気の真の原因がわかることもあるのです。

チームを構成する、若き女性医師、イケメン医師など、性別も国籍も人種も違う面々に、ハウスは毒舌を吐きながらも、それぞれの持っている個性を見抜きながら、接していきます。

わたしはアメリカの医療ドラマで「グレイズ・アナトミー」という作品にハマったこともありました。職場で繰り広げられる恋愛を軸にした成長物語でした。でも、作品のレベルとして「Dr.HOUSE」のほうが上だと思います。単に恋愛を描くのではなく、孤独を抱えた主人公ハウスがどうやって生きていくのか。その行く末にハラハラドキドキしながら見てしまうのです。

父の葬儀をすっぽかしたいハウス

例えば、シーズン5の第4話では、父親の葬儀に出席しようとしないハウスを、親友のウィルソンが一服盛って、強引に車で実家まで連れて行きます。生前から父親とは仲が良くなく、葬儀に出たくないと考えていたハウス。でも、彼の母親は葬儀で弔辞を述べてもらいたいと願い、ウィルソンに頼んだのです。

ハウスはパーキングエリアに車を停めさせて、ウィルソンの手を杖で叩いて車のキーを排水溝に落とさせてしまいます。このくらいの抵抗があることを想定していたウィルソンは車の中に懐中電灯など、ありとあらゆる道具を積んでいて、難局を切り抜けることに。再びドライブが始まってからも、ハウスの抵抗は続きます。

今度は、杖でアクセルを押し、パトカーを追い越しスピード違反で捕まってしまい、おまけに過去の軽犯罪を理由に、足止めされることになります。でも、一切事情を聞こうとしなかった田舎の警察官が、「父親の葬儀があるのに、彼はすっぽかそうとしているんだ」とウィルソンが説明すると、俄然、興味を示します。

そして、「お母さんがいるなら、話は別だ」「君たちは行くべきだ」と手のひらを返したように態度を変え、ハウスたちを送り出すのです。この二人の珍道中の回「子供は親を選べない」は、すごく印象的です。ハウスが父の葬儀で話した言葉もはっきり覚えているくらいです。

まるで「カッコーの巣の上で」

薬物依存症で精神科病棟に入院したハウス。シーズン6の1話と2話は精神科病棟での生活が描かれます。担当のノーラン医師に反発するハウスは、薬を飲んだと見せかけるなど、病院のスタッフを困らせます。少しずつ症状が緩和され、周囲の患者たちとも交流していくハウス。毎週見舞いに来る患者の家族を騙して、車を盗んで、患者と一緒に外出し、自由を味わいます。

でも、ハイになったその患者の行動を止めることができず……。自分でも重大な結果に苦しみます。精神科病棟のなかで、奇跡は起こせるのか、この1話と2話を見終わったとき、わたしは映画「カッコーの巣の上で」を思い出しました。

どんな境遇に置かれても、ハウスの人間観察は鋭いのです。院内で開かれたクリスマスのお楽しみ会のシーンも最高でした。治療する側もされる側も一緒に楽しんでいる姿がまぶしかったです。

映画「カッコーの巣の上で」 ジャック・ニコルソン主演。1975年度アカデミー賞 主要5部門を独占した不朽の名作。ケン・キージー原作のベストセラーを映像化

けっして良き隣人ではないハウスですが、ウィルソンとの友情はどうなっていくのか。その破天荒さと孤独がどこに行きつくのか。視聴者をどんな世界に引っ張っていくのか……。

すでに放映を終わったドラマですが、全編をもう一度見直すのが楽しみです。

(ruru)

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