ゴールデンスランバーは「帰るべき故郷」のお話

ゴールデンスランバーは「帰るべき故郷」のお話

きょうは大好きな小説で、映画、そして音楽である「ゴールデンスランバー」について書きます。「ゴールデンスランバー」は、2008年に新潮社から刊行された伊坂幸太郎の小説で、その年の山本周五郎賞と本屋大賞をダブル受賞し、さらに2009年版「このミステリーがすごい!」第1位に輝いた超ベストセラー小説です。2010年には中村義洋監督により映画化され、これまた大ヒットしました。あらすじを一言で表現すれば、「帰るべき故郷」のお話です(2023.7.9) 

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「アビー・ロード」の楽曲

ゴールデンスランバーとは、小説のカバーに語源(?)が三つ書かれています。 

(1)golden 1、黄金の、金の 2、最高の、素晴らしい 

     slumber 1、眠る、うとうとする 2、眠り。特に、まどろみ、うたた寝を指す 

(2)イギリス、エリザベス朝の劇作家、トマス・デッカーの手になる子守唄「GoldenSlumbers Kiss Your Eyes」にある、印象的なフレーズ。「マザー・グース」にも収録されている。 

(3)THE BEATLESのアルバム「ABBEY ROAD」(1969年発売)に収録されている楽曲タイトル。(中略)ポール・マッカートニーが、父親の家に遊びに行った際、「マザー・グース」に載っている上記(2)の童謡を見つけ、そこから生まれたと言われている。 

「お前、オズワルドにされるぞ」

小説の本文からも引用しましょう。大学時代の友人・森田に突然呼び出された青柳が、森田から「お前、(ケネディ暗殺犯に仕立てられた)オズワルドにされるぞ」と言われるシーンがあって、そのあと次のように続きます。 

「逃げよう」青柳雅春はすぐに言う。「やばいじゃないか」「おまえは逃げろ」「森田も逃げろよ」「どこに?」森田森吾はふざけている様子もないようで、真剣な目で言った。「昔、ビートルズの話をしている時、アビイ・ロードのメドレーについてみんなで語ったよな」「何の話だ」「アビイ・ロードのメドレーだよ」 ビートルズの十一番目のアルバムが、「アビイ・ロード」だ。実際にはその後に、「レット・イット・ビー」というアルバムが出て、それが最後の作品となるが、録音自体は、「アビイ・ロード」のほうが後で、つまり、ビートルズが最後に録ったのが、「アビイ・ロード」となる。すでに分裂状態だったバンドを、ポール・マッカートニーがどうにか取りまとめたという。アルバムの後半の八曲はそれぞれ別々に録音された曲を、ポール・マッカートニーがつなげ、壮大なメドレーに仕上げている。メドレーの最後が、「ジ・エンド」という曲名であるのが潔い、と森田森吾はよく言った。 

「あの中の曲、「ゴールデン・スランバー」をさ、さっきおまえが寝てる間、ずっと口ずさんでいたんだ」「子守唄だからか?」直訳すれば、黄金のまどろみ、となるのかもしれないが、歌詞の内容はほとんど子守唄だった。ポール・マッカートニーの搾り出す声で、高らかに歌われるその曲は、不思議な迫力に満ちている。「出だし、覚えてるか?」と森田は言った後で、冒頭部分を口ずさんだ。「Once there was a way to get homeward」「昔は故郷へ続く道があった、そういう意味合いだっけ?」「学生の頃、おまえたちと遊んでいた時のことを反射的に、思い出したよ」「学生時代?」「帰るべき故郷、って言われるとさ。思い浮かぶのは、あの時の俺たちなんだよ」 

暗殺事件に巻き込まれ旧友と邂逅

「ゴールデンスランバー」は、首相暗殺犯に仕立てられた青柳が、事件に巻き込まれたことにより、学生時代の友人たちと”邂逅”し、友人たちの手によって逃亡を助けられるお話です。でも、単なるスリルとサスペンスのストーリーだったら、これほど絶賛されることはなかったでしょう。優れた青春小説・青春映画。それが「ゴールデンスランバー」の最大の魅力なのだと言えるでしょう。 

ビートルズの原曲は、森田森吾が「潔い」といった「ジ・エンド」までメドレー形式で続きます。

 

潔いと評した「ジ・エンド」

「ジ・エンド」の最後の方、エレキギターの掛け合いが始まります。順番にジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、(本来はベースの)ポール・マッカートニーの3人が交互に競うように弾いています。

世界中を熱狂させ、音楽史に残るビートルズの最後にふさわしい、万感迫る演奏です。「ゴールデンスランバー」と合わせて、ぜひ聴いてみてください。 

(しみずのぼる)

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