貯金ならぬ「貯株」のすすめ:高配当株投資の入門書

貯金ならぬ「貯株」のすすめ:高配当株投資の入門書

資産8億円の元消防士「かんち」さんの新刊本「ほったらかしで年間2000万円入ってくる超★高配当株投資入門」(ダイヤモンド社刊)を読みました。資産規模も年間配当額も到底及ばないですが、資産の増やし方は「自分もそう!」という部分が多く、とても納得感の行く本でした(2024.5.31) 

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資産8億円、年間配当2000万円

最初に「はじめのごあいさつ」から抜粋しましょう。 

私は消防士時代に株式投資を始めて、49歳で早期退職。それから専業投資家に転身し、62歳となったいまでは、資産8億円、保有株から得られる配当金は年2000万円を超えています。
(略)
2024年から新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まったことで、これまで株に興味なかった多くの人が、ようやく重い腰を上げて株式投資をするようにもなりました。
そんな投資初心者の人たちにとっても、わたしの「高配当株投資」は、シンプルでわかりやすく、とても実践しやすいと思います。
また、自分が働かなくても得られる不労所得の「配当金」とともに、割引券や優待券、お米や地方の特産品までプレゼントしてもらえる「株主優待」もありますから、投資に理解のない家族がいたとしても、みんなで楽しみながら実践できるでしょう。

つまり、本書の中身は「高配当株投資」と「優待株投資」が中心となります。わたしが6年前に投資を始めて以来、もっぱら注力しているのがこの2つですし、記事にも縷々書いてきていることですから、書いてある内容は肯けるところが非常に多かったです。 

でも、8億円というのはすごいなあ。年間配当2000万円も驚きだなあ 

というのが率直な感想です。我が家の金融資産はまだ1億円台、年間配当も300万円台ですから、かんちさんの領域にはどんなに頑張ってもたどりつけそうにありません。 

でも、かんちさんが消防士を49歳で早期退職したのは2011年で、その時の資産は1億8000万円余りだったそうです。13年で資産が4.3倍に増えた計算です。 

その間、投資スタイルは変えていないそうですから、自分も同じスタイルを続けていれば、13年後は資産が4億円台、年間配当も1000万円台は決して夢ではない…ということになります。 

相当勇気をもらった本でした。今までのスタイルでいいから、時間を味方にコツコツ頑張ろう!という気持ちになれました。 

下がったところで買う

詳細は本書をお読みいただくとして、かんちさんのスタイルーー「高配当株の探し方5つのステップ」は以下のとおりです。 

  1. 「配当利回り3.5%以上」の銘柄を抽出 
  2. 「増収増益・増配」の銘柄だけを絞り込む 
  3. 「PER×PBR=15倍超」の割高銘柄を除外する 
  4. 一時的な要因で株価が上がった銘柄を除外する 
  5. 厳選した銘柄を株価が下がったところで買う 

かんちさんの本を読んでいて、かんちさんが一番大事にしているのは5番目の「下がったところで買う」だろうな…と思いました。 

どんなにいい銘柄でも、高値で掴むのはしたくないものです。わたしも1~4のようなステップ で「この銘柄が欲しい」と思って、ヤフーファイナンスのポートフォリオに登録して値動きをチェックするようになっても、最低1か月チャートの最安値で価格を登録して、それを下回るまで我慢するようにしています(どうしても欲しい!という銘柄の時は、1週間チャートの最安値で設定します) 

ステージごとにアドバイス

万人に役立ちそうだな…と思えた章が「10万円から始める『自分年金』資産1億円への道」です。これも見出しだけ抜き出してみましょう。 

  • ステージ1:資産10万~100万円【まずは投資より節約するほうが効果的】 
  • ステージ2:資産100万~1000万円【一気に増やそうとせず、あくまで分散投資】 
  • ステージ3:資産1000万~3000万円【配当金だけで毎年1銘柄増やす】 
  • ステージ4:資産3000万~5000万円【年120万円の配当金を再投資】 
  • ステージ5:資産5000~1億円【FIREするなら資産2億円を目指す】 

これも、とても肯ける内容です。ステージ1ならこんなふうに書いています。 

このステージでいちばん大切なのは、意外に思われるかもしれませんが、投資より「節約」です。

種銭10万円を1銘柄に集中投資したとして、その株が運よくテンバガー(10倍株)に育ったところで100万円にしかなりません。しかし、種銭100万円であれば、同じ条件でも1000万円になります。

私はテンバガーになる株を発掘したいわけではないので、これは単なるたとえですが、投資は「いくら入金できるか」が、とても大事なのです。

このくだりを読んで思い出したのが、原田ひ香さんの小説「三千円の使いかた」(中公文庫)です。 

本の中で「8×12は魔法の数字」というフレーズが出てくるのですが、これは原田さんが大妻女子大の学生だった時に先生のひとりが言った言葉で、「新入社員になったら毎月8万円貯金しなさい。12か月で96万円。ボーナスから4万円まわせば、1年で100万円貯められます」と言われたそうです。原田さんがえらいのは、入社1年目でこれを実践して、2年目に証券口座を開設したことです。 

節約の大切さは、30歳でFIREを実現した穂高唯希さん(「本気でFIREをめざす人のための資産形成入門」(実務教育出版)の著者)も言っています。穂高さんは、米国株で資産を増やす一方で、支出コントロールを徹底して、同書の中で自らの実践法を明かしています。 

株価に一喜一憂しなくなる

ステージ5のところにも「その通り」と思ったくだりがあります。 

資産3000万円まで築けた人は、たぶん資産が5000万円、1億円へと増えるスピードは「思ったより早い」「1000万円まではあんなに時間がかかったのに」と感じるはずです。 

私の体感では、資産3000万円を築くまでの倍くらいの速度で、資産1億円を達成しました。 

先述したとおり、わたしの現状はステージ5を超えたあたりですが、わたしの体感でもまったく一緒です。資産が増えるスピードは倍速という印象です。 

続くこんなくだりもまったく同感です。 

(資産1億円になると)日経平均株価が1%も上下動すれば、それに合わせて1日で資産評価額が100万円上下してしまうのです。 

ときには連日100万円以上の含み損が続くことも起こり得ます。会社員として普通に働いていて月100万円稼ごうと思うと大変ですが、1億円を投資に回していると、そんなことも珍しくないのです。 

このステージになると、含み損が1日100万円膨らんだとしても動じない精神的なタフさも必要になります。とはいえ、このステージに至るまで、株価変動を見続けているでしょうから、その精神力は自然と身につくはずです。 

わたしの資産も、きのうの株安・債券安(金利高)・円安のトリプル安のような日だと、評価益が1日で100万円以上目減りします。

でも、年間配当額はぜんぜん減らないですし、今期決算が好調だった企業で増配が相次ぎ、むしろ増えていることを思えば、株価の上下に一喜一憂しないようになってきます。 かんちさんの言うとおり、確かに動じなくなりました。 

含蓄のあるフレーズ満載

投資スタイルや資産を増やすステップも納得感のある内容でしたが、文章に時折はさまれる フレーズが非常によくて、何度も「そうそう!」と思いました。わたしの心に残った文章を以下にいくつか紹介します。 

個人投資家のみなさんには、ぜひ「貯株」を強く意識していただきたいです。 

現金を貯めるのではなく「株」を貯める、頻繁に株を売買するのではなく、あくまで貯金のように貯株するというススメです。 

個人投資家は”海に漂うクラゲ”のようなもの。波が高くなれば自分もその波と一緒に浮上しますし、波が落ち着けば自分も落ち着きます。 

その波にあらがっても、ただ体力を消費するだけです。株価の上下動にいちいち一喜一憂していては、とてもメンタルは持ちません。 

市場の流れに逆らわないことが、メンタルが強くない人でも投資を続けて資産を形成する1つの秘訣です。 

私は、高配当株投資は農業に似ていると考えています。最初に小さな芽が出て、大きく育つまでには時間がかかるけれども、手をかけた分、しっかりと育ってくれる。そして大きく育ってくれたら、たくさんの果実がなる。 

いったん田んぼや畑を買ったら、その田畑自体の値段は気にしませんよね。気にするのは、「どういう作物が実るか」でしょう。株も、いったん買った銘柄の株価はさほど気にすることなく、どういう買い方をすれば、もっと効率よく優待や配当を受け取れるのかといった、”果実”のほうに目を向ければいいと思います。 

含蓄のあるフレーズが満載です。おすすめです。 

(いしばしわたる) 

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