CDで是非買いたいビートルズの遺伝子「Power To The Pop」

CDで是非買いたいビートルズの遺伝子「Power To The Pop」

わたしは本のアンソロジーが好きなように、音楽もコンピレーションアルバムが好きです。自分の知らない音楽アーティストと”出逢える”からです。中でもビートルズの洗礼を受けたアーティストの曲を集めた「Power To The Pop」(2019年製作)と「Power To The Pop 2」(2021年製作)はいちばんのお気に入りです。この2枚(どちらも2枚組なので、数え方では4枚)はCDでの購入をおすすめします。ビートルズ愛と曲目について熱く語った70ページを超すブックレットは必読に値します(2023.8.23)

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構想30年の独自企画

この企画の成り立ちについては、1枚目のブックレットから引用しましょう。 

CDのコンパイルのきっかけとなっているのは音楽雑誌「ストレンジ・デイズ」(1997~2016年)誌上で不定期に掲載された特集”ビートルズの遺伝子”で、そこで紹介されたアルバムの収録楽曲をCDとして発売するという企画が元になっている。 

ブックレットは70ページを超す労作

最初の企画が出たのは90年代で、「構想30年という表現に嘘偽りのない代物」だそうです。

このあたりの裏話や収録曲を集める一方ならぬ苦労ぶりは、「BeatleDNAコンピへ至る長く曲がりくねった道のり…担当Dによる裏話」というブログ記事にくわしく出ています。 

2枚組で計4枚に収録されている曲は、計80曲にのぼります。とても、ここで書くわけにいかないので、収録曲は「BeatleDNA」のサイトでご確認ください。 

はじめて知る曲が満載

わたしもビートルズのファンですから、当然知っている曲もあります。1枚目なら、

オアシス / ドント・ルック・バック・イン・アンガー 

Oasis / Don’t Look Back In Anger 

2枚目なら、 

ニック・ロウ / 恋するふたり 

Nick Lowe / Cruel To Be Kind 

が入っていて、「そうそう、これは収録しないとね!」などと嬉しくなりました(「恋するふたり」は映画「恋のからさわぎ」で紹介しました) 

でも、かなりの収録曲が、初めて知るバンド名、アーティスト名、曲名だったのです。 

まさに”出逢い”に満ちた至福の音楽体験でした。 

恋にノータッチ、夏の日

収録曲をいくつか(スポティファイで探して)紹介します。曲の紹介はブックレットからの引用となるのはお許しください。 

まず「Power To The Pop」から、次の5曲を選びました。 

エリック・カルメン / 恋にノータッチ 

Eric Carmen / Never Gonna Fall In Love Again 

エリック・カルメンのヒット曲といえば、フランク・シナトラやジャリー・バッシーなど錚々たるアーティストにカヴァーされた「オール・バイ・マイセルフ」が浮かぶが、ビートルズの遺伝子を感じさせるナンバーとして、やはり「恋にノータッチ」(Never Gonna Fall In Love Again)だろう。 

 

エレクトリック・ライト・オーケストラ / 夏の日 

Electric Light Orchestra / One Summer Dream 

「ワン・サマー・ドリーム」は、ジョージ・ハリスン風なメロディが印象的なバラードの傑作で、シングル・カットはされなかったもののELOのビートレスクな隠れた名作として知られている。 

世界各地に広がる遺伝子

以下がドイツ、デンマーク、スウェーデンのアーティストです。ビートルズの遺伝子は世界各地に広まっている、というのも選曲の基準のひとつなのでしょう。 

フライハイト / キーピング・ザ・ドリーム・アライヴ 

Freiheit / Keeping The Dream Alive 

繊細なメロディと美しいコーラスでドラマティックな仕上がりとなっている。(略)シングル・カットされたこの曲は全英4位に入る彼らにとって最大のヒット曲となった。 

ティム・クリステンセン / ワンダー・オブ・ワンダーズ 

Tim Christensen / Wonder of Wonders 

メロディ・センスは間違いなくポール・マッカートニー譲りだ。アコースティックなアレンジでメロディが際立つこの「ワンダー・オブ・ワンダーズ」もそんな彼の魅力に溢れている。 

ザ・ミスティーズ / ザット・イズ・ノット・ワット・フレンズ・アー・フォー 

The Misties / That Is Not What Friends Are For 

2019年10月発売のファースト・アルバム『ドリフトウッド』に先駆けて発表された楽曲。(略)6年ほど前から制作を始めたという作品には、ビートルズ・トッド・ラングレン、バッドフィンガーといったポップの先達から受け継いだきらきらと輝く瑞々しいメロディが詰まっている。 

念願の収録を果たせたが… 

続いて、「Power To The Pop 2」からも5曲です。 

許諾が取れずに1枚目の収録を断念した曲で、2枚目のブックレットの文章を引用します。

エミット・ローズ / 恥ずかしがって 

Emitt Rhodes / You Should Be Ashamed 

第1弾で、ビートルズの遺伝子とか、ビートリッシュとか言っておきながら、なんでこの人が入っていないの!!という疑問とも怒りとも取れない声がXTCに次いで多かったのが、エミット・ローズだ。 

(略) 

前回はダメだったが、こちらも今回は我々の願いが届いたのか、ようやく楽曲の使用許諾が下りて、「ユー・シュッド・ビー・アシェイムド」(恥ずかしがって)を収録することができた。エミット、ありがとう!!と手紙を書こうと思ったら、なんと、2020年7月19日に突然の訃報が飛び込んできた。本当に驚いた。”あなたのおかげで素晴らしいアルバムが上がりました”と、エミットに伝えたかった。 

次も第1弾で許諾が取れずに収録が見送られた曲です。 

パニック!アット・ザ・ディスコ / シー・ハッド・ザ・ワールド 

Panic! At The Disco / She Had the World 

彼らのことを最初からパンク・バンドだと思っていた中高年のリスナーには無視され、また、パンクやエモ好きの若いファンには彼らの音楽性は理解されなかった… 

今回収録された「シー・ハッド・ザ・ワールド」は紅茶が飲みたくなるような英国的な1曲で、ストリングス・アレンジがバロック・ポップ的な雰囲気を漂わせた曲調… 

2世の楽曲も粒ぞろい

2枚目は、ビートルズ2世ーーポールの息子、ジョンの息子2人ーーのナンバーが3曲選ばれています。でも、親の七光りでも何でもなく、いい曲が揃っています。

ジェイムズ・マッカートニー / シンキング・アバウト・ロックン・ロール 

James McCartney / Thinking About Rock And Roll 

本曲収録の「Me」は、ジェイムズのファースト・ソロ・アルバムで、父親ポールの作品も手がけているデヴィッド・カーンがプロデュースを務め、またポール自身もピアノ、ギター、ドラム、口笛(?)で参加しているようだ。 

ジュリアン・レノン / ソルトウォーター 

Julian Lennon / Saltwater 

クレジットされていないもののジョージ・ハリスンがギターで参加している。アルバムは全英42位、全米ではチャートインしなかったが、本作からシングル・カットされた「ソルトウォーター」は、全英6位、全豪のチャートでは4週連続でナンバー1になるなどヒットとなった。 

ザ・クレイプール・レノン・デリリウム / ブラッド・アンド・ロケッツ 

The Claypool Lennon Derillium/ Blood and Rockets : Movement I, Saga of Jack Parsons/Movement II, Too the Moon 

ザ・クレイプール・レノン・デリリウムは、ショーン・レノンとレス・クレイプールによるプロジェクトで、サイケデりック&プログレッシブ・ロックを合体させた音楽性を持つユニットとして知られている。 

(略) 

ショーンの弾くメロトロンは「ストロベリー・フィールズ」や「フライング」を思い起こさせる。やはりモノホンの遺伝子は格が違う!? 

なお、以前の記事(教え子たちがあなたの作品:「陽のあたる教室」 )で紹介した「コールのテーマ」を歌っているのがジュリアンで、ジョン・レノンが「ビューティフル・ボーイ」と歌ったのがショーンです。 

再び漏れた「ステイシーズ・ママ」 

最後に、許諾が取れずに収録がかなわなかった曲を2つ紹介します。 

ファウンテンズ・オブ・ウェイン / ステイシーズ・ママ

Fountains Of Wayne / Stacy’s Mam

収録したかった曲でそれが叶わなかった曲はまだまだある。ファウンテンズ・オブ・ウェインの「ステイシーズ・ママ」、パニック・アット・ザ・ディスコの紅茶が飲みたくなる「シー・ハッド・ザ・ワールド」、JETの名曲「ルック・ホワット・ユーヴ・ドーン」…… 

「シー・ハッド…」と「ルック・ホワット…」は第2弾に収録されましたが、ファウンテンズ・オブ・ウェインは別のナンバーが選曲され、「ステイシーズ・ママ」は入りませんでした。でも、このブックレットを読んで存在を知り、いまではわたしのお気に入りの一曲です。 

フリック / ワン・ハンドレッド・デイズ

Flick / One Hundred Days

「ワン・ハンドレッド・デイズ」は、彼らのEPに収録されている曲で、メロトロンが「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を彷彿とさせるポップ・サイケな楽曲だ。レーベルはソニーなので使用許諾が出るだろうと思っていたら、今回もNGだった。もしも『パワー・トゥ・ザ・ポップ』の第3弾が可能であれば、その時は絶対に収録したい。 

ほかにも、とてもポップな曲が粒ぞろいです。 

ぶ厚いブックレットが読めるCDを購入するのがおすすめですが、スポティファイ、アップル・ミュージック、アマゾン・ミュージックで検索してでもいいので、ぜひ聴いてみてください。 

(しみずのぼる) 

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