きょう紹介するのはSF映画『ガタカ』です。出生前のDNA操作で「適正者」と「不適正者」に峻別される近未来社会で、不適正者の主人公が宇宙飛行士になるまでの物語をサスペンスフルに描いています。「君は僕に夢をくれた」ーーDNAの定めた運命を不屈の意思で”書き換え”る主人公たちの生きざまに心打たれること間違いなしです(2026.3.23)
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目次
DNAで運命が決定づけられる管理社会と届かぬ宇宙への憧憬
映画『ガタカ』(原題: Gattaca)は1997年製作のアメリカ映画で、監督はアンドリュー・ニコル。あらすじを紹介しましょう。
優秀な遺伝子を掛けあわせて生まれた「適正者」が支配する近未来。自然出産で生まれた「不適正者」のヴィンセントは、宇宙飛行士になる夢を叶えるため、「適正者」に偽装して宇宙局「ガタカ」に入社する。だが上司が何者かに殺され、ヴィンセントに容疑が…。
ブルーレイ版『ガタカ』
タイトルのガタカは宇宙局の名前であるとともに、DNAの基本塩基であるグアニン(guanine)、アデニン(adenine)、チミン(thymine)、シトシン(cytosine)の頭文字の組み合わせです。遺伝子で差別される社会の象徴とも言えるでしょう。
イーサン・ホークが演じる主人公のヴィンセントは、両親が自然出産を選び、心臓に欠陥があり長くは生きられないと宣告された不適正者。それでも宇宙に憧れ、適正者しか選ばれない宇宙飛行士になろうと、適正者に”偽装”することを選ぶ。髪の毛、血液、尿…あらゆる生体サンプルを、適正者の協力者から提供してもらって……というストーリーです。
生体サンプルで”偽装”する清掃員の孤独と不屈の精神
『ガタカ』の魅力は、不適正者の烙印を押されても、宇宙飛行士への夢を諦めない主人公の不屈さにあるのは間違いありません。
でも、実社会で彼は宇宙局ガタカの清掃員。モップを手に、適正者の社員たちがガタカに出社する場面を眺めているしかない……。
イーサン・ホークが見せる、セリフを排した静かな横顔。そこには、どれほど努力しても「不適正」というレッテル一枚で夢を断絶される理不尽さと、それでも夢を捨てきれない思いがにじんでいます。
この序盤の深い孤独があるからこそ、適正者から生体サンプルを得ることで”偽装”してでも宇宙飛行士を目指すヴィンセントの生きざまに胸を打たれるのでしょう。
ジュード・ロウが熱演|遺伝子の呪縛と屈託を抱える協力者の変化
しかし、『ガタカ』を傑作たらしめているのは、ヴィンセントに自身の生体サンプルを提供する「適正者」ーージェロームの存在です。
最高の遺伝子を授かり、水泳選手として活躍しながら、事故によって脚の自由を失い選手生命を絶たれたジェローム。完璧であることが当然とされる世界で、心に深い傷を負い、自らの存在意義を見失いかけたジェロームが、夢を諦めないヴィンセントと”偽装”という共同行動を通じて生気を取り戻していく。
本作の圧巻は、抜き打ちの訪問者を欺くため、ジェロームが車椅子から降り、腕の力だけで螺旋階段を這い上がるシーンです。下半身の自由を欠いたジェロームが一段また一段と指をかけ、必死の思いで上の階に辿り着く。生きる意味を失っていたはずの彼が、DNAの選別で不適正者の烙印を押されたヴィンセントに”共振”したかのような懸命な姿が深い感動を呼び起こします。
だからこそ、ジェロームが物語の終盤でヴィンセントに伝える言葉ーー「僕は君に体を貸したが、君は僕に夢をくれた」ーーに深く感動するのだろうと思います。
ジェロームを熱演するのはジュード・ロウ。わたしのように『ガタカ』を観てファンになった人は多いはずです。
殺人事件の容疑者として追われる主人公は宇宙に飛び立てるか
念願の宇宙飛行士に選ばれ、出発が間近に迫った時に宇宙局で起こった殺人事件。現場の近くからヴィンセントのまつ毛が発見され、容疑者として追われることになったヴィンセントは、無事に宇宙に飛び立てるのか。
そして、ヴィンセントと接するうちに生気を取り戻したジェロームが最後に選択する道はーー。
このあたりはぜひ『ガタカ』を観てお確かめください。

『ガタカ』はさまざまな動画配信サービス(例えばU-NEXT)で視聴できます。
ユーチューブに予告編がありましたので、こちらも参考にしてみてください。
M・ナイマンの音楽にも注目|美しい旋律で表現する哀しみと憧憬
本作を名作へと押し上げているのが、マイケル・ナイマンによる音楽です。
電子音を排し弦楽が奏でるクラシカルな旋律は、哀しみを帯びながらも天へと昇っていくような高揚感を内包していて、冷徹な管理社会の中に残された人間の温もりを感じさせるかのようです。
音楽サブスクで「ガタカ マイケル・ナイマン」(Gattaca Michael Nyman)で探せば見つかると思います。
ナイマンの哀切溢れる旋律を聴きながら『ガタカ』の世界に浸ってみてください。
(しみずのぼる)
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