うつは「心の風邪」じゃない:田中圭一「うつヌケ」 

うつは「心の風邪」じゃない:田中圭一「うつヌケ」 

きょうは漫画の紹介ではありますが、ライフの記事として書きます。田中圭一氏の「うつヌケ」(角川書店)です。副題が「うつトンネルを抜けた人たち」。作者も、この漫画の編集者も、うつに苦しみ、それを脱した経験をお持ちです。同じようにうつに悩み、それぞれの方法で寛解まで持っていった体験談を取材して紹介しています(2023.9.12)

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17人の実体験を取材

本書は出版された当時(2017年)かなり評判になりました。わたしも雑誌の書評で読んで購入。読後に友人知人に読め読めとすすめた一冊です。 

本書のスタンスは、「ボクらは医者じゃないから断定的なことは言えない」ということをキチンと踏まえたうえで、 

でも、17名もの人を取材してぼんやりと見えてきた

ことを書いてある点だろうと思います。 

だから、ある人は心療内科の医師の処方に従って寛解した人も登場しますし、薬が効かずに苦しむ人も出てきます。決めつけないで、あるがまま書いてあるスタンスにまず惹かれました。 

「こんな有名な人までうつで苦しんでいたなんて」という驚きもありました(以前の記事で紹介した「くるぐる使い」大槻ケンヂさんも登場します) 

うつは心のガン

山本直樹氏の漫画で映画にもなった「僕らはみんな生きている」の原作者である脚本家の一色伸幸氏も、かなり長い間うつに苦しんでいたそうです。 

「うつは心の風邪」とよく言われますが、一色氏は「うつは心のガンだ」と言い切り、「風邪」と受け止めると周囲が判断を誤ると指摘します。 

うつが風邪のようなものだと認識されてしまうと 

「風邪で休む? ふざけるな!? はってでも出てこい!!」 

でもガンならば 

「なにやってんだ!? すぐに入院しろ!!」 

となるでしょう、と説いています。 

別の方では、ある日無意識に首を吊っていたというエピソードが出てきます。 

この方は妻の理解や息子との趣味の共有で徐々に最悪期を脱したそうですが、確かに「風邪」という受け止めは、周囲の判断を誤らせてしまうかもしれません。 

「うつと無縁」と思っている方にも、ぜひ読んでほしいと思うゆえんです。 

本書はKADOKAWAのホームページで、第1話をためし読みできます。

「ペンと箸」もおすすめ

田中圭一氏の漫画では、もうひとつ「ペンと箸」(小学館)もおすすめです。 

著名な漫画家の子供たちに取材し、漫画家の好物を紹介しつつ、家庭ではどんな親だったのかを紹介しています。 

田中圭一「ペンと箸」

中でも、1970年代に少年ジャンプで連載され、アニメにもなった「ド根性ガエル」の作者、吉沢やすみさんの回は泣かせます。

そんな大ヒット作を生んだ父ですけど 

その次が続かなくて 

とても苦しんだみたいです。 

そのうちに、

ペンを持つと手が震えるようになり 

そのうち吐き気もとまらなくなって 

というように、まさに「うつヌケ」に登場する方々ーー人気絶頂期に不安だらけだったと告白する大槻ケンヂさんや、雑誌を大ヒットさせながら後が続かず心療内科通いを続けた「うつヌケ」の編集者の折晴子さんーーと重なる症状に見舞われます。 

その後 清掃会社で働きだしたものの… 

しばらくして父は突然 

失踪してしまいました 

吉沢さんが「うつヌケ」できた経緯や、いまはお孫さんと幸せな暮らしをしている場面(ラストのひとコマ)は、ぜひ「ペンと箸」を手に取ってご確認ください。 泣けること請け合いです。

(しみずのぼる) 

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