デフレの常識、インフレの非常識…住宅ローンで考える

デフレの常識、インフレの非常識…住宅ローンで考える

最近読んだ本でとても考えさせれました。自分はまだまだデフレ時代のマインド設定から抜け切れてないのかも…。インフレ時代の住宅ローンについて考えてみます(2024.6.27) 

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「50歳からのトレーダー入門」

その本は、榊原正幸氏の「50歳からのトレーダー入門」 (PHPビジネス新書)です。当面デイトレする予定はないのですが、本を紹介するネット記事を読んで、国内株の銘柄選びに役立つ記述があったので手に取った本でした。 

【本書の内容】
■第1章 これから日本で何が起きるか ―お金について初めに知っておきたい大事な話―
■第2章 誰も教えてくれない「かしこい老後対策」 ―70歳まで「美味しい人生」を送るために、50代・60代でやっておくこと―
■第3章 新NISAで成功する人、失敗する人 ―9割の投資初心者が見逃す「落とし穴」―
■第4章 初心者必見! 科学的に正しい「株式投資の必勝講座」
■第5章 負けない投資家は、投資先をこう決める ―実践編! 銘柄売買の具体的な手法―
■第6章 定年超えたら「とにかく明るいデイトレ」!
■第7章 60歳からのデイトレは頑張らない! ―「1日3時間」で5年後には億万長者に
■最終章 【超上級者編】デイトレ実践講座!

榊原氏は、東北大学と青山学院大学で会計学を教えていた方だそうです。これまでの投資歴についての記述も、大学を辞めて暇になったために始めたデイトレの記述も、とてもおもしろく読みました。 

隠された変動金利の地獄

でも、きょう紹介したいのは第1章「これから日本で何が起きるか」で、特に最初の小見出しの「住宅ローンに隠された変動金利の地獄」の部分です。 

現在住宅ローンを組んでいる方のうち、「72%」の方々が変動金利でローンを組んでいるそうです。そんな変動金利で住宅ローンを組んでいる大多数の方々に警告を発します。 

可及的速やかに、変動金利を固定金利に借り換えましょう。 

う~ん、固定金利は相当不利じゃない? 

最初はそう思って読みだしたのですが、具体的な記述を読んで「!」と思いました。 

以下で、借入額が「5000万円」で、借入期間が「30年」の元利均等返済方式の住宅ローンについて、数値例を用いて解説していきます(1000円未満の端数は四捨五入します)


(1)金利が「1%」の場合
毎月の支払額は「16万1000円」です。この場合、元金返済額は「11万9000円」で、金利は「4万2000円」という内訳です。


(2)金利が「1%」から「3%」に上がった場合
金利が「1%」から「3%」に上がった場合、毎月支払うべき金額は「21万1000円」に跳ね上がります。毎月の支払額が5万円も増えてしまうのです。しかもその内訳は、元金返済額が「8万6000円」で、金利が「12万5000円」です(借入残高を5000万円として計算)。


しかし金利は上がっても、たとえば半年間は、毎月の支払額は金利が上がる前の「16万1000円」のまま変わりません。その舞台裏でひそかに元金返済額が激減しています。
なぜなら金利が「3%」に上がった場合、毎月の支払額の「16万1000円」のうち、「12万5000円」は金利に充当されるからです。そのため、元金支払額は「3万6000円」に激減してしまうのです。

わたしが「!」と思ったのはゴシック部分。元金返済額が激減するというところです。 これでは、毎月きちんと返済していても、いっこうに元金の返済が終わりません。

そうか! これは確かに相当なリスクだなあ… 

短プラ上げる金融機関も

著者の榊原氏も、住宅ローン金利が5%を超えることは「国債の利払いもとんでもないことになっているはずなので、そんなことは起こらないかもしれません」と書いています。ですから、いきなり変動金利が上昇すると言っているわけではありません。

しかし、日銀のマイナス金利政策解除を受けて、短期プライムレートを引き上げる金融機関も出てきています。 

住信SBIネット銀行は(4月)17日、短期融資の基準となる短期プライムレート(短プラ)を0.1%引き上げて年1.775%にすると発表した。5月1日から適用する。短プラは変動型住宅ローン金利の基準で、同行で借りたローン金利は上がる可能性が高い。 

日銀が3月にマイナス金利政策を解除してから短プラの引き上げが表面化するのは初めて。預金金利の引き上げに伴う調達コストの上昇を反映したとしている。 

日本経済新聞24年4月17日「住信SBI、短プラ上げ 変動型住宅ローン金利に上昇圧力」 

住宅ローンの変動金利は、短期プライムレートに連動するので、変動金利が「低いまま」という時代は終焉を迎えつつあるのは間違いないでしょう。 

【追記】この記事を書いた直後、auじぶん銀行が変動金利の引き上げを発表しました。くわしくは日経記事(住宅ローン、変動型も金利上げ auじぶん銀行が7月から)をごらんください(2024.6.30)

超低金利は「返済しない」が得

わたしは今年2月に住宅ローンを完済するまで、数えてみたら過去5回、住宅ローンを利用していました(自宅で2度、セカンドハウスローンで3度) 

5回ともすべて変動金利を利用しています。我が家はダブルインカムなので、ボーナス時に夫婦のボーナスを繰上償還の原資に充てるスタイルでやってきました。 

でも、5度目の住宅ローンの時は、あえて繰上償還はしませんでした。理由は超低金利のため、繰上償還に充てる原資は自身で資産運用したほうが得だったからです。 

たまたま妻が60歳定年時に無料のFP相談を受けることができて、その時にもFPさんからこう言われました。 

○○さん(=わたしのこと)の考え方は正しいです。お伺いしていると3%以上の資産運用ができているので、それなら0.5%台で銀行が貸してくれている住宅ローンはそのまま借りておいて、手元の資金は毎年3%以上で資産運用したほうがいいに決まってます。 

わたしの知人が中古マンションを購入した際も、0.4%台の変動金利だったため、不動産販売会社の人から「頭金はなるべく少なくした方がいい」と言われたそうです。 

いわば、これがデフレ時代の住宅ローンの”常識”だったのは間違いありません。 

金利4%時代の住宅ローン

わたしは、変動金利はそんなに簡単に上げられないだろうと今も思っています。住信SBIネット銀行が短期プライムレートを引き上げた記事を読んだ時も、「そうは言っても変動金利の見直しは半年に1度だろうし、いきなり上げたら中小企業がバタバタ倒産するから、上げるにしても相当慎重にならざるを得ないだろう」と思って読みました。 

しかし、金利の上げ幅は微々たるものでも、「舞台裏でひそかに元金返済額が激減」することは、確かに想定しておく必要があるでしょう。 

というのも、榊原氏の著書を読んで「!」と思ったのは、我が家の最初の住宅ローン(平成6年、1994年)のことを思い出したからです。 

この記事を書くため、棚の奥から当時の不動産売買契約書を引っ張り出してきました。 

契約書に金利の記載がないので、ネットで調べたら、ある金融機関は1994年当時、変動金利4.4%、固定金利5.82%と書いているので、変動金利が4%台だったと思って眺めてください。 

最初の画像は、頭金(一時金)として2000万円を用意し、4670万円を35年ローンで組んだと出てきます。返済元本4670万円に対して、返済利息が4824万円超ということで、この表をみた時にクラクラしたのを思い出します。 

次の画像は、毎月の返済予定額が書いてあるページです。 

驚くべきことに、最初の62か月、5年以上にわたって返済するのは利息だけ。元本は一切減らないという返済表です。しかも、ローン6年目からようやく元本の返済が始まるけれども、それでも利息の返済額が元本の倍以上を占めています。 

これが変動金利4%台の住宅ローンです。 

当時は、これをみて「ボーナスで繰上償還をして、ローンの返済元本をどんどん減らしていこうね!」と妻と誓い合ったものです。

そして、最初のボーナスで100万円を繰上償還(期間短縮方式)したところ、なんと最初の利息だけ返済する5年がぜんぶなくなって、借入期間がいきなり30年以下に短縮されました。 

榊原氏の著書を読んで最初の住宅ローンのことを思い出し、

 インフレ時代の住宅ローンは、繰上償還こそ最大限活用すべき手法ではないか! 

と思いました。わたしはすでに住宅ローンは完済し終えています。でも、もし残っていたとしたら、榊原氏のアドバイス(固定金利への借り換え)ではなく、ふたたび繰上償還を再開しただろうと思います。 

これは万人にあてはまるアドバイスではないかもしれません。ボーナスもローン返済に充てていれば、繰上償還も容易ではないでしょうから、あくまでケースバイケースです。

でも、少なくとも、デフレ時代の”常識”は通用しなくなる時代が近づいているのは確かでしょう。 

住宅ローン以外にも言えることかもしれませんが、 

デフレ時代の”常識”は、インフレ時代の”非常識” 

というマインドを意識的に持ちつつ、資産防衛に努めようと思った次第です。 

(いしばしわたる) 

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