国民年金保険料は親に払ってもらいなさい

国民年金保険料は親に払ってもらいなさい

わたしは以前の記事(年金は何に備えるものか知っていますか)で、「親元から離れて大学に通っているような学生なら、大学在学中の支払いこそ親を頼って払っておけばいいのに」と書きました。きょうはその理由を解き明かしましょう。国税庁のホームページからの引用など、すこし難しい内容になりますが、お得感はハンパないですから、ぜひ最後までお付き合いください(2023.6.30)

〈PR〉

資格不要で稼ぐなら「クラウドワークス」

保険料は年額19万8240円

まず、国民年金保険料についておさらいしましょう。20歳から60歳まで保険料を納める義務があるため、20歳になると保険料納付の通知書が郵送されてきます。 

国民年金保険料(2023年)は月額1万6520円です。1年間に納付する額は19万8240円となります。結構な金額ですよね。 

特に、親元から離れて大学の近くのアパート・マンションで一人暮らしをしている学生さんなら、どんなにアルバイトをしていても月収数万円でしょうから、納付通知書を見て「とても払えない!」と思ってしまうのは十分想像できます。 

親にも節税メリットがある

冒頭に「親を頼って払いなさい」と書きましたね。なぜ、親を頼るのか。それは、親にとっても節税というメリットがあるからです。 

ここから、少し難しくなります。お得な情報ですから我慢してくださいね。 

所得税の税率は所得の多寡で決められています。例えば、会社勤めのお父さんの年収が600万円なら、所得税の税率は20%。800万円なら23%。1000万円なら33%です(くわしくは国税庁のホームページなどに所得税の早見表が掲載されています) 

社会保険料は控除の対象

所得とは、収入から費用や控除を差し引いたものですが、社会保険料は控除の対象です。ですから、例えば年収が900万円で費用や控除もなければ所得税は33%ですが、社会保険料を差し引けば800万円台になり、税率は23%になります。会社員の場合、あらかじめ源泉徴収されているので、社会保険料などの控除をきちんと確定申告すれば、収めた税金が還付されます。 

この控除の対象に国民年金保険料も当然含まれます。 

「生計を一にする」の定義

ここで迷うのが、親元から離れて一人暮らししている子供の国民年金保険料も控除の対象になるのか、という点だろうと思います。 

正解は「対象になる」です。ここで専門用語が出てしまいますが、「生計を一にする」者は控除の対象に含めることができて、「生計を一にする」対象に親元から離れて住む子供も含まれることが、国税庁のホームページに明確に書かれているのです。

Q1 

「生計を一にする」というためには同居が要件とされますか。 

A1 

「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。例えば、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。 

なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

参考URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm

ですから、お父さんにとっても、収めた税金が還付されるというメリットがあるわけです。 

会社勤めの場合、源泉徴収されているため確定申告しないで済む人が圧倒的に多いでしょう。マンションを買って住宅ローン減税を利用する場合以外は、「確定申告はめんどくさい」と思って敬遠する会社員がほとんどではないでしょうか。 

老親の補聴器も控除できる

でも、控除のしくみを知っていれば、収めた税金は返ってきます。 

例えば、医療費控除。配偶者や子どもだけでなく、同居している老親の分も含めれば、年間10万円を軽く突破するはずです。同居している老親は「生計を一にする」対象ですから、当然含めることができます。 

老親が難聴だったとします。医師(「補聴器相談医」の認定医)に紹介状を書いてもらってから補聴器を購入すれば、医療費控除の対象に含めることができます。両耳合わせて数十万円もする補聴器を医療費控除に含めることができれば、還付される金額もかなりにのぼるでしょう。 

話がそれました。国民年金保険料に戻しましょう。 

過去の分も一括で控除対象

もし、あなたが1浪して大学に入って、現在4年生だったとしたら、国民年金保険料は3年分。つまり、約60万円にのぼります。 

国税庁のホームページをみると、過去の分も一括して払っても全期間分が控除の対象になります。

Q1 

 生計を一にしている子供の国民年金保険料を過去3年分まとめて支払いましたが、その支払った全額を私の本年分の社会保険料控除の対象としてよいでしょうか。 

A1 

 本年中に支払ったものであれば、過去の年分のものであっても本年分の社会保険料控除の対象になります。

参考URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1130_qa.htm

所得税率20%なら12万円還付

もし親の所得税率が20%なら、60万円の20%ですから、12万円が還付されます。所得税の税率が30%なら、18万円が還付されます。 

いかがですか。「親に払ってもらいなさい」と言った意味がわかっていただけましたか。 

源泉徴収制度に慣らされて確定申告のうま味を知らない会社員が多いので、こんなふうに切り出せば、きっと身を乗り出して耳を傾けてくれるはずです。 

「ボクの国民年金保険料は、お父さんが払えば税金が〇〇万円も戻ってくるよ。おじいちゃんの補聴器も、最新のものに変えてあげようよ。税金がたくさん戻ってくるからさ」 

ぜひ試してみてください。 

(いしばしわたる)