最高にさわやかな気分だ…トム・ハンクス「すべてをあなたに」 

最高にさわやかな気分だ…トム・ハンクス「すべてをあなたに」 

きょう紹介するのはトム・ハンクスが監督・脚本・音楽を務めた1996年製作の映画「すべてをあなたに」(原題:That Thing You Do!)です。1960年代、ピッツバーグの田舎町の青年たちがビートルズばりにスターになっていく…という青春映画です(2004.4.26) 

【追記】YouTubeの公式(認証済み)チャンネルに関連動画がありましたので加筆修正しました(2024.5.5)

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田舎町のコンテストが発端

「すべてをあなたに」のあらすじを紹介しましょう。 

1964年、ペンシルバニア州エリー。父親が経営する電気店で働きながらジャズドラマーに憧れる青年ガイは、ある日、音楽仲間のジミーから、骨折したドラマーの代役を頼まれ、“1度きり”を条件に引き受けることに。ところが、ジミーが作ったメロウな曲“ザット・シング・ユー・ドゥ”をほんの遊び心から速いビートで演奏すると、これが大受け!  彼らは一気にスター街道を突っ走っていくーー 

地元のコンテストの演奏で、代役を引き受けたガイがアップテンポに変えた“ザット・シング・ユー・ドゥ”に会場のみんなが踊り出し、そこに居合わせたレストランの経営者に店で演奏を頼まれる。

その店で自分たちで作ったシングルレコードを販売したところ、それを買ったプロデューサーから契約を持ち掛けられる。 

「10日、いや、1週間以内にラジオで流すから」 

ラジオから流れる昂奮と感動

その約束どおり、ラジオで流れたときの彼らの喜びようったら……。ジムの恋人でバンドと常に行動を共にするフェイが、イヤホンでラジオを聴いていると、“ザット・シング・ユー・ドゥ”が流れたとたん、その場で激しく体を震わせ、叫び出す。

イヤホンをしたまま町の通りを走り出し、途中でベース・プレイヤー(なんと役名がありません)と合流してガイの働く電気店に駆け込む。

接客中のガイは慌てて店の売り物のラジオのスイッチを入れて“ザット・シング・ユー・ドゥ”が流れると、父親は苦虫をかみつぶした表情なのに、母親はからだでリズムをとっている…。そこにジムとギターのレニーも合流して、全員で輪になって踊り出すーー。 

自分たちの曲がはじめてラジオで流れたときの瞬間……。そのときの昂奮と感動は、どんなスターでも、きっと大切にしている想い出の一コマだろうと想像します。 

この映画でいちばん好きなシーンはどこかと聞かれたら、間違いなく、このラジオのシーンを挙げます(YouTubeの公式チャンネル「Movieclips」にビデオクリップがありました)

Movieclips – That Thing You Do! (2/5) Movie CLIP – Radio Debut (1996) HD

ここから、彼らのバンド「ザ・ワンダーズ」は、トム・ハンクス演じる大手レコード会社の敏腕プロデューサーに”指導”されながらスター街道を走り出すが、作曲の才能に自信を持つジムは、レコードの制作を先延ばしにされて徐々に不満を募らせていく……。 

映画に花を添えるのがリブ・タイラー演じるジムの恋人フェイです。ジムとの恋に破れ、エリーにひとり帰ろうとするフェイに声をかけるガイ……。恋愛の要素を絡めてあるあたりも青春映画の定法です。 

トム・ハンクスは、観客が映画を見終えて、こう思ってくれたらうれしいと言っています。 

”最高にさわやかな気分だ” 

「さわやか」という形容詞がピッタリな青春映画です。 

主題曲にかかわる2人

演奏しているのは出演した俳優たち。音楽経験のない俳優ばかりのため、5週間1日5時間の練習時間を確保したそうで、映画では本物のバンド並みの一体感をかもしだしています。 

ただ、主題曲“ザット・シング・ユー・ドゥ”を実際に歌っているのは、マイク・ヴァイオラ。恥ずかしながら知らない歌手でしたが、 

90年代初頭、Candy Buchersのヴォーカリストとしてデビュー。その後ライアン・アダムズらのコラボレーターとしても活躍しつつ、ソロとしてポップ・チューンの名品を奏で続ける職人 

どこか70年代のポップスを想起させるノスタルジックなメロディと甘い歌声、そして時代のハイプを知り尽くした緻密なプロダクション、独特のオルタナティブフレイバーなど、いたるところに仕掛けが張り巡らされたそのサウンドは、ポップマニアを満足させる。 

アップル・ミュージック「はじめてのマイク・ヴァイオラ」より

という方です(最近のお気に入りプレイリストのひとつです) 

主題曲“ザット・シング・ユー・ドゥ”の作者は、アダム・シュレジンジャー。わたしが最近特にお気に入りにしているバンド「ファウンテインズ・オブ・ウェイン」の創設者のひとりです。 

クリス・コリングウッドとアダム・シュレジンジャーを中心に、1996年に結成。同年リリースされたデビュー・アルバム『Fountains of Wayne』によって、1990年代パワーポップの代表的バンドの一つになった。内向的な思春期に寄り添うようなナイーブな情感とタイムレスなメロディセンスには定評があり、2003年の『Welcome Interstate Maneger』はとりわけ高い評価を得てヒットを記録。「Stacy’s Mam」や「Mexican Wine」といったポップアンセムも生み出した。 

アップルミュージック「はじめてのファウンテインズ・オブ・ウェイン」より
You
Doing that thing you do
Breaking my heart into a million pieces
Like you always do
And you
Don’t mean to be cruel
You never even knew about the heartache
I’ve been going through

Well, I try and try to forget you, girl
But it’s just so hard to do
Every time you do that thing you do
I know all the games you play
And I’m gonna find a way to let you know that
You’ll be mine someday

‘Cause we
Could be happy, can’t you see?
If you’d only let me be the one to hold you
And keep you here with me

‘Cause I try and try to forget you, girl
But it’s just so hard to do
Every time you do that thing you do

I don’t ask a lot, girl (I don’t ask a lot, girl)
But I know one thing’s for sure (know one thing’s for sure)
It’s the love I haven’t got, girl
And I just can’t take it anymore

‘Cause we
Could be happy, can’t you see?
If you’d only let me be the one to hold you
And keep you here with me
‘Cause it hurts me so just to see you go
Around with someone new

And if I know you, you’re doing that thing
Every day just doing that thing
I can’t take you doing that thing you do

「Power to The Pop 2」にも収録

主題曲“ザット・シング・ユー・ドゥ”は、以前に紹介した「Power to The Pop 2」にも収録されています。 

シュレジンジャーとヴァイオラという、どちらもビートルズのDNAを受け継ぐアーティスト二人が揃ったナンバーがポップにならないわけがない。この曲は実際にも、架空のバンド、ザ・ワンダーズ名義でシングル発売され、映画程の大成功とはならなかったものの、ビルボード・チャートの41位にランクインするスマッシュ・ヒットとなった。また、翌97年の第69回アカデミー賞で主題歌賞にもノミネートされた。アダム・シュレジンジャーらしいポップでキャッチーなメロディを持ったこの曲のファンは多く、ザ・ナックやイン・シンクなど、同曲をカバーしているアーティストは少なくない。 

「Power to The Pop 2」ライナーノーツより 

スポティファイのサンプル音源を気に入ったら、ぜひお気に入りプレイリストに入れてみてください。なお、上記で紹介したアップル・ミュージックの「はじめてのマイク・ヴァイオラ」「はじめてのファウンテインズ・オブ・ウェイン」にも、“ザット・シング・ユー・ドゥ”は収められています。 

(しみずのぼる) 

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