18歳の君へ~実践的「お金」の話をしよう【第4回】
連載「18歳の君へ~実践的「お金」の話をしよう」は、18歳の大学1年生の姪っ子に叔父さんの立場から「お金」の話をしていきます。第4回のきょうは「情報に騙されないようにしよう」です(連載の狙いはこちらをごらんください) (2023.12.9)
〈PR〉
日本人スタッフがきめ細かいサポートをいたします、安心な留学をするなら【カナダジャーナル】目次
NTT株の値動きは?
前回の宿題ーー「業界地図」をみて「気になる企業」を10社選ぶほうは難しかったようだね。途中でヘルプを求めるメールが来たぐらいだから。
そちらは後回しにして、もうひとつの宿題ーーNTT株の方を見てみようか。
NTT株は1株173.2円の株価で100株を購入できたそうだね。Yahoo!ファイナンスで1週間の値動きをグラフで見てみよう。
これが1週間と1か月の値動きだ。この1週間で一番の高値が173.6円、一番の安値が170.5円、1か月単位でみると高値が175.4円、安値が169.7円。〇〇ちゃんは100株を17320円で買って、現在は17050円だから、買った時より下がっている。いまの評価損は270円だ。
こんなふうに株価は上下するものなんだ。「株価はそういうもの」と割り切って一喜一憂しないことだ。
増配と減配
それに、NTT株を100株保有していると、1年間の配当金は5円×100=500円になる。270円程度の評価損なら1年で回収できてしまうし、持ち続ける限り毎年500円前後の配当金が入ってくる。
ちなみに、来年、1株あたりの配当金を6円にしたら600円だ。これを「増配」という。逆に1株4円にしたら400円。こちらは「減配」という。できるだけ配当金は増やしてくれる企業に投資したいよね。
NTTの配当金の推移は下記の図だ。NTTは今年7月に1:25の比率で株式分割したから分割以前の配当金の推移となるけど、 過去3年は増配が続いているよ。
右肩上がりの企業を選ぶ
増配しそうな企業を選ぶポイントは、業績が右肩上がりの企業の銘柄を買うことだ。
業績の伸びている企業は、それだけ配当金に回す余裕ができるから、売上高や営業利益が右肩上がりの企業を選ぶといい。売上高が増えるのが「増収」、減るのが「減収」。営業利益や経常利益、最終利益が増えることを「増益」、減ることを「減益」という。だから、業績欄をみて増収増益の企業を探すといい。
NTTの場合を見てみよう。
売り上げ規模が10兆円を超えているから変化がないように見えるかもしれないけれど、ジワジワと増収しているのがわかるし、営業利益は右肩上がりに増えている。
業績のいい優良企業なら、株価は右肩上がりになっていく。NTT株の過去1年のチャートと過去5年のチャートを見てみよう。
どうだい? だから、この1週間の値動きで一喜一憂しないこと。優良な企業を選んで銘柄を買っていくことが大事なんだ。
株主優待もチェック
もうひとつ、NTTの場合は100株以上保有すると「株主優待」があるんだ。2年以上3年未満のタイミングでdポイントが1500ポイント贈呈され、5年以上6年未満のタイミングで3000ポイント贈呈される。
配当金の多さに着目して高配当株や増配株を買ってもいいし、株主優待に惹かれて株主優待株を買ってもいい。
でも、〇〇ちゃんは若いんだし、就活を控えて日本企業に対する見方を養いたい時期でもあるから、将来の成長性に着目して銘柄選びをすることを勧めたいね。
詐欺に遭わないには…
叔父さんは「習うより慣れろ」の精神が大切だと思っているから、投資信託も国内株も理由は後回しにして、この商品・銘柄を買いなさいと言ったけれど、本来は事前に情報を集めてよくよく調べてから商品・銘柄選びをすべきものだ。やみくもに買うのはやめたほうがいい。
ということは、情報をどうやって取得するかが大切になる。きょうは少し寄り道して情報の取得方法について考えてみよう。
前回「ポンジ・スキーム」のことを書いたね。大事なところだから「お金の大学」から引用しよう。
よ~~し、生活防衛資金も貯めたし、早速投資だ~~~! ふむふむ、これは利回りが月利50%か。100万円投資したら来月には150万円になるってことだよね。投資ってこんなに儲かるんだからすごい! よし、早速入金入き……
やめんかーー! そりゃ詐欺や!!
ヘブシ!! さ、詐欺……??
投資をするならまずは「相場を知る」のが不可欠やで。相場を知らないで投資を始めると、ほぼ100%騙されるからな。
ということで、以下、目安になるとして、
世界中の株全てに投資した場合の平均利回りを紹介するで。「年5~7%」と言われとる。100万円投資したら、1年で105万~107万円になる。ってことや。
本当の自由を手に入れるお金の大学(著者:両@リベ大学長、朝日新聞出社)より
このあと「ポンジ・スキーム」の説明をして、
要するに投資でも何でもないただの詐欺や。こんな謳い文句と一緒に紹介されることが多いで。
本当の自由を手に入れるお金の大学(著者:両@リベ大学長、朝日新聞出社)より
- 元本保証
- 確実に儲かる
- ローリスクハイリターン
- あの芸能人も投資
最近は芸能人ではなく経済評論家やエコノミストのフェイク動画も出回っているそうだから、本当に気を付けないとね。
SNSで「投資に興味がある」なんてつぶやくのは厳禁だ。そんなことをしたら怪しい投資勧誘の広告を引き寄せてしまうだけだ。
でも、どうすれば正しい情報を得られる?
ひとつの情報を鵜呑みにしない
叔父さんは、ひとつの情報を鵜呑みにしないで、複数の情報をあたることを勧めたい。
本だって1冊だけ読んでわかったつもりになるのではなく、最低でも2~3冊は読んでみるべきだし、雑誌も複数比較して読むようにしたいところだ。
若い人たちは「SNSのほうが情報のスピードは圧倒的に早い」と言うだろう。それ自体は否定しない。でも、さっきも書いたとおり、SNSの情報は玉石混交だ。
フェイク情報も投資詐欺の引っ掛け情報も紛れ込んでいる。そう考えると、本や雑誌で知識を習得することを優先したほうがいい。「急がば回れ」の精神だよ。
「業界地図」の活用術
さて、それでは、前回の宿題の話に入ろう。
業界地図をよく読んで、どんな日本企業が将来有望か、自分なりに考えてみること。そして「気になる会社」というポートフォリオを作って、日本の上場企業から10社選んでみること。
この宿題に対して、〇〇ちゃんは「1週間では時間が足りません。業界地図の見方をもう少し教えてください」とヘルプのメールを書いてきた。
だから、どこに注目して「業界地図」を活用したらいいか、叔父さんの注目するポイントを教えよう。
業界天気予報をチェック
「業界地図」は最初の方のページを使って「注目業界」の特集をしている。そのページの右下をみてごらん。天気予報のマークがあるだろう? これで晴れマークのところは先行きが明るいし、雨マークは暗いというわけだ。これは一つ注目しておくポイントだ。
いくつか見てみようか。
AI(23年度後半:快晴、24年度:快晴)
生成AIは金融やヘルスケアなどあらゆる分野のビジネスに影響を与え、関連市場は拡大が見込まれる
万博・統合型リゾート(IR)(23年度後半:晴れ、24年度:晴れ)
万博もIRもまずはゼネコンなど建設・設備関連が潤う構図。IRは開業後、ホテル・イベント等の受容が見込めるが、現時点で予測は難しい
DX(23年度後半:快晴、24年度:快晴)
対面の商慣習が強かった業界でもDXが進行、AI普及が拍車をかける。課題の人材不足をどう乗り越えるか
こんなふうに注目業界を選んで予測している。後ろの方は業界別になるけど、業界天気予報を見ながら、晴れマークのところを探してみるといい。
2つ目の注目ポイントは、それぞれの業界の1位・2位の企業を見てみよう。
やっぱり業界トップの企業はパワフルだよ。でも、安定している分、売上高や利益が横ばいかもしれない。むしろ、業界2位でも成長性では上回る企業もあるかもしれない。だから、業界の1位と2位の企業の業績はチェックしてごらん。
3つ目の注目ポイントは、その市場が世界に開かれているなら、「世界首位級」と書いてある企業も注目してみよう。
銀行や保険、通信などの業界は国内1位・2位でいいけれど、機械や化学といった業種だと「世界首位級」の文字がある企業は将来性が期待できる。
海外比率の高さも注目
4つ目の注目ポイントは、売上高に占める海外比率が高い企業も注目するといい。
日本はどうしても少子高齢化の影響で市場は成熟してしまっている。海外市場で売り上げを伸ばしていくことが日本企業の生き残る道だと考えれば、売上高の海外比率が高い企業は成長性が見込めるということだ。
5つ目は注目ポイントではなく情報取得・管理の方法になるけど、とにかく目にとまった企業はどんどんYahoo!ファイナンスのポートフォリオに登録することだ。
そうすれば、企業の業績の棒グラフも見ることができるし、売上高の規模感や、増収増益なのか減収減益なのか、株価のチャートはどうか、市場から評価されているかどうか、といった情報が一目瞭然だ。
IRページをチェック
さらに言えば、気になった会社はホームページのIR情報をみてごらん。これは投資家向けの情報が載せてあるところだ。企業の中期経営計画といった資料も開示されているから、それに目を通せば、その企業がこれから何に力を入れようとしているのか書いてある。
実は、この調べ方は就活で必ずやることなんだよ。業界研究と企業研究は就職活動の基本中の基本だ。
「パーフェクト活用術」にも、情報をどうやって取得するか、その大切さがいちばん最初のページに書いてある。
これから就活を始めるみなさんは、就職情報のほとんどが企業から広告料を受け取る宣伝記事だということに気づいているだろうか?
ためしに、〇〇ナビのようなサイトで会社の紹介ページをみてみよう。ベタな宣伝文句はないし、一見普通の記事のようにみえる。
でも、マイナス情報は絶対にない。課題や問題提起という程度でもだ。「苦境を乗り越えていまの繫栄がある」といった、現在のプラス情報を強調するような表現でさえも、マイナス情報はNGワードとして企業側から厳しく排除される。
『就職四季報』パーフェクト活用術(著者:「就職四季報」編集部、東洋経済新報社) より
就活の場合は、晴れマークでなくても「こんな業界で働いてみたいな」と思えば、そこから調べるのが道理だと思う。それでも、その業界での順位や企業の規模感、業績の推移などは絶対に調べておくに越したことはないし、ホームページのIR情報や中期経営計画を読んでいれば、エントリーシートの志望動機を書くことにもつながる。
就活もマネー情報も同じだ。いまは情報が不足して困るのではなく、情報が溢れかえって困る時代なんだ。
だから、まずは「業界地図」を使って、自分なりに気になる会社を調べてごらん。調べること自体が、〇〇ちゃんの血となり肉となる。
でも、気になる会社を10社選ぶのは確かに大変かもしれないから、すこし時間を与えよう。 2週間ぐらい余裕があれば大丈夫かな?
雑誌を読む習慣を
その間に雑誌を読む習慣をつけてみよう。「楽天マガジン」を使ってみるといい。初月無料だからスマホにアプリをインストールしてごらん。
楽天マガジンについてはこちら
おすすめは「週刊東洋経済」や「週刊ダイヤモンド」といった経済誌、「ダイヤモンド・ザイ」「日経マネー」といったマネー系情報誌だ。
それと、きょうこれまでの文章は印刷してお母さんにも読んでもらうこと。
〇〇ちゃんのような「お父さんはサラリーマン、お母さんは専業主婦」という家庭の場合、お母さんは投資に及び腰だったりする。「投資は怖い」「ギャンブルみたい」って思いこんでいる。
でも、本当はお父さんやお母さんこそ、豊かな老後を手にしたいなら資産運用の知識が必要になるし、〇〇ちゃんはまだ資金的に余裕もないから、お母さんを味方に惹きつけておくと何かと便利だ。次回はお母さんにも役立つ情報も紹介しよう。
(いしばしわたる)
連載「18歳の君へ~実践的「お金」の話をしよう」の各回記事はこちらから
【第1回】クレカ・銀行・証券の開設手続きをしよう
【第2回】インデックス型投信を積み立てよう
【第3回】国内銘柄を指値注文してみよう
【第4回】情報に騙されないようにしよう
【第5回】新NISAの仕組みを知っておこう
【第6回】単元未満株を買ってみよう
【最終回】新NISAを資産運用や就活に役立てよう
* *
連載「18歳の君へ」の狙いをお伝えします
〈PR〉
スキマ時間で楽しくポイントGET|マクロミル