新NISA効果? 株式分割が増えています

新NISA効果? 株式分割が増えています

上期決算の発表が一段落して、業績好調から増配した企業もあれば、業績不振から減配した企業もあって、悲喜こもごもという感じですね。その中で株式分割を行うと発表した企業が目につきます。私の保有する個別株(妻名義を含む)でも、数えてみると8銘柄もありました。やはり新NISA効果なのでしょうか(2023.11.15) 

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驚いたNTTの25分割

株式分割で今年いちばん驚いたのは「NTT」です。23年7月に25分割したため、100株でも2万円弱で買えるお手頃価格になりました。 

株式分割は、企業側のメリットとして、買いやすくなる分、多くの人に買ってもらえるようになり、株式の流動性を高められるーーと言われます。 

東証も望ましい投資単位として「50万円未満」という水準を明示しています。 

東証では、個人投資家が投資しやすい環境を整備するために、望ましい投資単位として50万円未満という水準を明示しています。 

また、上場内国株券の発行者に対して、望ましい投資単位の水準以上(50万円以上)で株式が売買されている場合には、事業年度経過後3か月以内に、50万円未満の水準へ移行するための、当該発行者の投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示するよう義務付けています。 

参考URL:https://www.jpx.co.jp/equities/listing/company-split/index.html

でも、NTTはもともと100株単位でも50万円未満でしたし、たんに東証の基準だけ意識するなら2分割でも十分良かったわけですから、いきなり25分割したのは、やはり多くの個人投資家に買ってもらいたい…という明確な意図がうかがえました。 

新NISAを意識している?

実は今回、株式分割すると公表した銘柄にも、東証の基準は関係ないな、という企業が散見されます。 

わたしが保有する銘柄で言えば、「JAC Recruitment」は12月末で4分割すると表明しましたが、現在の株価は2601円(11月15日終値=以下同じ)です。 

「ヤマハ発動機」の株価も3764円と東証の基準以下ですが、12月末で3分割します。 

「大同特殊鋼」は6216円なので、東証の基準を超えているのは確かですが、12月末で5分割します。東証の基準だけが理由なら、いきなり5分割は不要ですから、やはり多くの個人投資家を呼び込みたい、という意図がうかがえます。 

上記で紹介した3銘柄の株価(11月15日終値)と配当利回り(11月15日現在)、企業概要(ヤフー・ファイナンスより)は以下のとおりです。 

JAC Recruitment(2124)

  • 株価:2601円
  • 配当利回り:3.46%
  • 企業概要:人材紹介中堅。幹部級の高額案件に強い。アジア中心に海外展開。田崎・JACグループの一角

ヤマハ発動機(7272)

  • 株価:3764円
  • 配当利回り:3.85%
  • 企業概要:楽器のヤマハ発祥。2輪で世界大手。稼ぎ頭はマリン、産業ロボットも強化。トヨタと提携

大同特殊鋼(5471)

  • 株価:6216円
  • 配当利回り:3.70%
  • 企業概要:特殊鋼専業で世界最大級。日産、ホンダ等自動車向け主力。高給鋼を拡大中。日本製鉄と親密

24年1月の新NISAでは、成長投資枠で個別銘柄も購入できます。NISAは損益通算ができないため、じっくり選んで長期保有しよう…という買い方を考えている人が多いはず。ということは、企業からすれば多くの個人投資家に安定株主になってもらえるチャンスだとも言えます。 

そんな思惑から、12月末のタイミングで株式分割する企業が相次いでいるのだろうか…と想像します。 

発表直後は株価が上昇

また、株式分割を行うと発表した直後は、株価が上昇するのが常です。先ほど紹介した3銘柄も軒並み上がりました。 

JAC Recruitment(2124)
ヤマハ発動機(7272)
大同特殊鋼(5471)

株式アナリストの鈴木一之氏は「【日本株】軒並みラッシュが続く株式分割、その背景と狙い目は」という記事で、投資家の間で「大幅な株式分割を行う企業は、成長株として評価し得る」という認識がいつの間にか浸透したからではないかーーと推測しています。 

なぜ理屈の上では上昇しないはずなのに、実際には分割発表直後に株価は大きく値上がりすることがあるのでしょうか。 

これは経験則からによるものだと考えられます。すなわち、「過去に偉大な上昇を成し遂げた成長企業は、ほとんどすべて大幅な株式分割を行っている」という市場参加者の経験があるからではないか、と思います。 

株式分割を実施することによって、個人投資家にも手がけやすい水準まで株価が下がり、市場での流動性が増して投資家層に厚みが増します。それによってさらなる投資資金を呼び込むことができ、しっかりと増資も実施して、企業として利益成長と株価の上昇をダブルで勝ち取ることに成功したのです。 

その結果として投資家の間では、「大幅な株式分割を行う企業は、成長株として評価し得る」という認識がいつの間にか浸透していったのではないでしょうか。株式分割を発表するだけで未来への成長期待がぐっと増し、それにつれて株価も勢いよく上昇するのではないかと考えられます。理屈として正しくはないのかもしれませんが、当たらずとも遠からずで、どうもそのように思えてなりません。 

【日本株】軒並みラッシュが続く株式分割、その背景と狙い目は

いずれにしても、企業の側も新NISAを意識して動いているように見えますし、個人投資家もそれに呼応して反応しているようです。市況が活発なのはよいことです。 

(いしばしわたる) 

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