「累進還元」という聞き慣れない用語を掲げる企業があります。認可保育園や介護福祉施設を運営するQLSホールディングス(7075)です。東証改革を意識して個人投資家を増やしたい企業側にとって、配当よりも優待のほうが効果が期待でき、かつ「累進」を謳って安心感を与える…という巧い戦略と言えそうです。(2026.8.25)
- QLSホールディングス(7075)は配当と優待を維持・増額する「累進還元」を導入。
- 優待は損金算入による節税効果や、個人投資家へ還元を集中できるメリットがある。
- 上場維持基準のクリアを見据え、デジタルギフト優待を活用した株主獲得を狙う。
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目次
減配なしで注目を集める「累進配当」と関連指数の特徴
高配当株投資でよく聞く用語が「累進配当」です。わたしもずいぶん前の記事(2024年1月)で紹介しています。
アドバイスしているのは投資系ユーチューバーのぽんちょ氏。
「累進配当とは、配当金額を減らさず、利益成長に合わせて増加させることを目標としている企業の配当金のこと。近年は日経平均よりも、日経累進高配当数指数のリターンのほうが高いというデータも出てきています」
ぽんちょ氏が言及している「日経累進高配当数指数」は23年6月に新しく設定されたばかりの指数で、「実績ベースで累進配当を10年以上続ける企業のうち、予想ベースの配当利回りが高い順に30銘柄で構成」しています。
成長投資枠で累進配当株はいかがですか
この記事のように指数までありますから、「減配しない」と宣言する累進配当は、高配当株投資を志向する個人投資家を惹きつけるマジックワードのひとつと言ってよいでしょう。
でも、きょう紹介するQLSホールディングスは、累進配当ではなく「累進還元」を掲げているのです。
QLSホールディングス(証券コード:7075)
ヤフーファイナンスより
企業情報:認可保育園運営が柱。訪問介護、グループホーム型福祉施設等の介護・福祉と人材派遣も展開
配当利回り:1.27%
株主優待:後述
権利確定:9月末、3月末
QLSホールディングスが導入した「累進還元」の方針
QLSホールディングスが「累進還元」を配当方針に掲げたのは今年3月のことです。プレスリリースから引用します。
当社は、株主への利益還元を経営施策のひとつと認識しており、経営環境や業績の状況、財務体質を勘案しつつ、累進還元(累進配当及び累進優待)(※)を行うことを基本方針とします。ただし、M&A等の大きな投資機会発生の際は、この限りではございません。
2024年3月17日適時開示情報 – 配当方針の変更及び累進還元(累進配当及び累進優待)の導入に関するお知らせ
※1株当たり配当金及び優待品金額の前期実績に対して、維持又は増額を行うものです。
ゴシック部分が今年3月に新たに加わった配当方針部分です。
そして今月5日には、優待品金額の拡充を発表しました。同社の株主優待はデジタルギフトですが、金額を30%も増額したのです。新たな優待内容は以下のとおりです。
| 優待区分 | 基準日 | 継続保有期間 | 保有株式数 | 優待品 |
| 中間優待 | 9月30日 | 半年間 | 500株以上 1,000株未満 | デジタルギフト 6,500円分 |
| 中間優待 | 9月30日 | 半年間 | 1,000株以上 | デジタルギフト 13,000円分 |
| 期末優待 | 3月31日 | 半年間 | 500株以上 1,000株未満 | デジタルギフト 6,500円分 |
| 期末優待 | 3月31日 | 半年間 | 1,000株以上 | デジタルギフト 13,000円分 |
9月末までに1000株保有すれば、半年後の来年3月末の権利確定、つまり来年6月頃には1万3000円分のデジタルギフトが得られ、保有し続ければ年2回ずっと貰い続けることができます。
しかも「累進還元」を謳っているので、優待改悪のリスクは限りなく小さいと思って差し支えないでしょう。
そう思って優待商品の30%増額を発表した直後から買い始め、妻名義は1000株揃え、わたし名義も600株まで来ました。9月末までに残り400株買い増す予定です。
妻名義は10日かけて1000株ホルダーに
わたし名義は残り400株買い増す方針
優待を活用した還元方針が企業にもたらす税務上のメリット
配当ではなく株主優待を「累進」にするのは、企業側にとって主に3つのメリットが考えられます。
第1は税務上のメリットです。配当は「税引後利益」から支払うため節税になりませんが、デジタルギフトのような金券優待は「広告宣伝費」として損金(経費)に算入できます。
- 配当: 100万円支払っても、会社の税金は減らない。
- 金券優待: 100万円分を配ると、経費が100万円増えるため、法人税等(実効税率約30%と仮定)が約30万円安くなる。
実質的な現金の流出額で比較すると、優待の方が税金分だけ会社に現金が残りやすくなります。
限られた予算で効率よく個人投資家を増やす優待の効果
第2は個人投資家を増やす効果です。
QLSホールディングスのようなグロース企業にとって、株主還元にかける予算は限られています。ところが、配当は「1株あたり〇円」と決めるため、100株持つ個人投資家にも、10万株持つ機関投資家(大株主)にも、同じ比率で支払わなければなりません。株主還元に充てる予算のほとんどが大株主に吸収されてしまい、個人株主を増やす効果は薄れます。
QLSホールディングスの株主優待は、500株と1000株で設定しているので、大株主(10万株保有)に対しても1000株ホルダーと同じ内容の優待で済みます。結果として、限りある株主還元の予算を個人投資家により集中して振り向けることができます。
上場維持基準クリアに向けた「累進還元」モデルの可能性
第3は、そしてこれが最大の理由かもしれませんが、東証の「上場維持基準」をクリアする効果が期待できます。
グロース市場の上場を維持するためには、「株主数150人以上」「流通株式時価総額」などの基準をクリアし続けなければなりません。知名度の低いグロース企業にとって、手っ取り早く個人株主数を増やして上場廃止リスクを避けるための「ブースター」として、全国どこでも使えるデジタルギフトは個人投資家を惹きつける最良の手立て、というわけです。
このように理屈まで分析して考えると、QLSホールディングスのように「累進還元」という名の下、実際は配当ではなく株主優待を充実させる企業が増えてきそうな予感がします。
QLSホールディングスの株価は、優待拡充の発表から値上がりしています。
QLSホールディングスの1か月チャート(ヤフーファイナンスより)
わたし名義で残り400株。久々に一銘柄の株価を毎日注視しています。
(しみずのぼる)
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