内藤了氏による人気警察×怪異ミステリー『警視庁異能処理班ミカヅチ』シリーズの最新刊『開扉』が刊行されました。警視庁地下に存在する謎の扉がついに開くという、シリーズ最大の山場を迎えます。これまでの伏線や各巻のエピソードを振り返りつつ、最新刊の注目のポイントと物語の広がりについて解説します。(2026.8.13)
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目次
シリーズ全9巻のあらすじで振り返るミカヅチの歩み
『警視庁異能処理班ミカヅチ』シリーズ(講談社タイガ)は、きのう(8月12日)発売された『開扉』(かいひ)を含め、これまでに9冊出ています(あらすじはAmazonから抜粋)
Amazon – 警視庁異能処理班ミカヅチ (全9巻)
- 桜底 警視正は首無し幽霊、同僚も捜査一課も癖の強いやつばかり。彼らは人も怪異も救わない。仕事は、人知れず処理すること――。
- 呪街 彼らは、事件を解決せず救わず、ただ「処理」する。警視庁の底に棲むやつらを描く、前代未聞の警察×怪異の物語第二弾!
- 禍事 三ツ首の犬が議員を襲う事態が勃発。異能処理班の面々の生い立ちが徐々に明かされる、大人気警察×怪異ミステリー第三弾!
- 迷塚 呪い殺されたかのような不審火が頻発するなか、安田は隠蔽でも解決でもない第三の道へたどり着く。チームの絆深まる警察×怪異ミステリー第四弾!
- 黒仏 地霊により怪異が活発化を見せ、怜は自らの能力を自覚する。ミカヅチ班もまた変わらずにはいられない。警察×怪異ミステリー第五弾!
- 青屍 全身穴だらけの死体が上野で発見。原因不明。安田怜の願いに立ちふさがるは、蒼ざめた馬の騎士。
- 妖声 行方不明や死を招くその声は、刑事・極意のものとよく似ていた。同じ頃、行き倒れた山岳密教の修行僧が、怜に告げたのは思いもよらない彼の過去で――。
- 凶変 死がより身近になる街で、警察はまたひとつ決断を下す。警察×怪異ミステリー第八弾。終わりの始まりは、今。
- 開扉 東京を襲う災厄VS異能処理班 全面対決 警視庁地下に佇む扉は、一体何なのか。すべての答えが今明かされる。
最初の方の巻は、霊視能力を持つ安田玲や警視庁異能処理班の面々(首無し幽霊の折原警視正、陰陽師・土御門家の末裔の土門班長、百年に一度生まれると言われる広目天、松平家の末裔の虫使い・神鈴、捜査一課所属で異能処理班との連絡役を務める悪魔憑きの極意京介)が個々の異能を生かして、東京都内に点在する忌み地で起こる怪異を「処理」するーーというストーリーで展開します。
異能処理班のオフィスに佇む「触れてはならぬ扉」
しかし、巻が進むにつれて、異能処理班のオフィスにある謎の扉をめぐる物語となっていきます。
シリーズ1作目『桜底』で、土門班長が主人公の安田玲に次のように説明します。
「あと、今もこれからも一番大事なことを言っておきますが」
土門は突然真顔になると、警視正の後ろにある巨大な扉を指さした。
「あの扉には決して近寄らないこと。触れることも厳禁です。我々の使命のひとつが扉を守ることなので、ここが無人になることはありませんし、この部屋にいる間も決して触れてはいけません」
あれが何だというのだろう。扉の赤い落書きは呪文や魔術記号のようでもあるが、見た感じはポップな雰囲気で、触れることすら厳禁という怖さは感じない。
扉の赤い文字は普通の人間には見えず、異能者しか見えません。しかも時折姿を変え、梵字の『サ』のようになったりします。
そもそも、警視庁と警察庁の合同庁舎が梵字の『サ』を模しています。
「警視庁本部の土地に根元が眠っておるのだよ。二棟の建物が奇妙な形状をしているのにはわけがある。二つの建物は上空から見ると梵字を模していてね。形状自体が『呪』になっているのだ。それを知る者はほとんどいないがね」
「梵字は『サ』、聖観音を表している。正法明如来から人に近い菩薩に下りて、餓鬼道を化益(けやく)する大慈の存在だ」
ただし扉の役目そのものは、異能班の人たちもよくはわかっていません。
シリーズ3作目の『禍事』で、主人公の安田が「扉の奥にあるのは何ですか?」と訊ねる場面があり、土門たちが陰陽師の末裔・土御門家では『扉』、松平家では『道』と呼ばれてきたと説明した後、こう続きます。
「扉や道はどこにつながっているんですか?」
「それがわからないのです」
と、土門が答え、
「まだ開けたことがないからな」
と、広目は笑い、
「開け方を知っている人もいないのよ」
と、神鈴が続けた。
「あれが開いたら最後だと、前に広目さんは言ってましたね。でも、じゃあ、何があるのかわからないけど護っているってことですか」
「そうですが、もう少し正確に言いますと、そのときが来るまで徒(いたずら)に開けることがないよう護っているというわけです」
扉の謎がシリーズを貫く主ストーリーとなっていく…という仕掛けです。
明かされる扉の正体と奈落に溜まり続ける「魄」の謎
この扉の謎が明るみになるのが、シリーズ7作目『妖声』と8作目『凶変』です。
『妖声』で、山岳密教の修行僧・慈堅が、扉を守る者を古来から「甕雷(ミカヅチ)」と呼び、甕雷を守る護法善神の一人、持国天(じこくてん)の役目を担うのが自分だと明かしたうえで、扉のことを次のように説明します。
「奈落の怪異、つまり魄(はく)が噴き出た直近が、大正十二年(一九二三)の関東大震災だ。八年後に警視庁をここに置き、再び溜まり始めた魄を抑えた。その後も溜まり続けて滾(たぎ)る魄を抑えるために、呪をかけた建物を新たに建造したのが五十四年後、それからさらに四十数年が経ち、もはや奈落は満杯だ」
「魄」(はく)の説明もあります。
魂(こん)と魄(はく)とを合わせて魂魄と呼ぶが、二つは似て非なるもの。
魂は陽の気を持ち、死後にこの世を離れて飛び立つことができるけれども、陰である魄はその人が死んだ場所にドロリと溜まっているという。
続く『凶変』では、扉の開き方を誤れば災禍は果てしないものになり、怪異はそれを狙っている…ということが明かされ、そして、きのう発売されたシリーズ9作目『開扉』ーータイトルのとおり、いよいよ扉が開く場面となるわけです。
『開扉』の結末と2027年初旬に予定される最終巻へ
主人公の安田玲は扉を正しく開くことができるのか。扉の正しい開閉に欠かせないもう一人の重要な役割の担い手・極意京介は、悪魔になり果ててもなお、その使命をまっとうすることができるのかーー。
これはもう、読んでのお楽しみとしか言いようがありません。
なお、扉が開く場面が最終巻だと思っていたら、ここは読みが外れて、次が最終巻だそうです。
『開扉』のエピローグにこう出てきます。
扉が開いて災禍に臨んだそのあとに、悪魔どもは『凶聞の吹き回し』を起こす。人々を不安に陥れて罪なき人に敵意を向けさせ、暗黒の種を蒔く。
それがもう始まっているのだ。
「まだ終わりじゃなかった」
玲は言った。
「むしろ始まりだったのね」
不吉で長い影を見て神鈴も言った。
異能処理班の悪魔との戦いが描かれるであろう最終巻の発売は「2027年初旬」だそうです。『開扉』最終ページに、簡単な内容紹介が載っています。
扉は眠りについた。
それでも人の世は巡る。
災厄も幸せも、再び。
楽しみに待とうではありませんか!
ところで、『警視庁異能処理班ミカヅチ』シリーズについては、過去2回記事にしています。心優しい主人公の魅力、悪魔に魂を売った極意京介の役割、そして、異能処理班の前に姿を現す悪魔などのことを記事にまとめています。
『ミカヅチ』シリーズに興味を抱かれたら、是非お目通しいただければ幸いです。
(しみずのぼる)
📖あわせて読みたい:内藤了『警視庁異能処理班ミカヅチ』シリーズの過去記事はこちら👉
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