テレビ東京で放送され、リアルな恐怖からSNSを震撼させた傑作モキュメンタリー・ホラー『イシナガキクエを探しています』が書籍化されました。番組はフィクションでありながら、緻密に作り込まれたディテールが多くの考察を呼び、謎を残したまま幕を閉じました。本書は放送や配信では明かされなかった「第5章」を収録。書籍版の見どころやオリジナル版との違いをレビューします。(2025.8.3)
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モキュメンタリーホラーとしての枠組み
最初に『イシナガキクエを探しています』の予告編動画をごらんください。
見るからに怖いですね~。正面写真の顔部分の歪みは、呪いのビデオを見た『リング』を思い起させます。
『イシナガキクエを探しています』は、テレビ東京の深夜番組「TXQ FICTION」枠で2024年に放送されました。
あえて「FICTION」と銘打っていますし、番組の冒頭と終わりに必ず「この番組はフィクションです」とテロップが流れますが、それでも、

放送中に案内される問い合わせ窓口の電話番号が実在するなどリアリティを追求した結果、ネット上では番組内容が事実だと誤認する人や考察する人、「不気味」「怖い」などの声が続出し、一時Xでは日本トレンド1位になる騒ぎになりました。

モキュメンタリーについてはこちらをごらんください
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オリジナル版が残した数々の謎と余韻
放送は約30分の番組で計3回、そして4話目が配信限定で公開されたものの、放送・配信自体は多くの謎を残したままで終わります。
謎を謎のまま終わらせるホラーは、個人的にはそのほうが好きだったりするので、わたし個人は計4話のオリジナル版(放送・配信版)で十分過ぎるほどツボにハマったのですが、書籍版は、

放送の舞台裏を知った人物による視点で描かれた書き下ろしの内容とともに、未公開の音声や資料を収録。さらに物語の最後には「イシナガキクエ」に関する特別な映像も用意しております。
と書かれています。これでは読まないわけにいきません。さっそく電子書籍で購入しました。

長年にわたり「イシナガキクエ」という女性を探してきた米原実次は、テレビ東京に協力を依頼するも2024年2月に死亡。彼の遺志を継いで公開捜査番組が放送された。全3回放送されたこの番組は、深夜帯にも関わらず大きな反響を呼び、番組に届いた情報は8,000件に及んだ。一方でこの番組は、多くの疑問を残しながらも、非常に中途半端な状態で最終回を迎えることになったため、視聴者の間では大きな物議を醸すこととなった。あの終わり方ではそれも致し方ないとはいえるが、少なくとも番組のスタッフたちは、本当にこれで良いのかと、逡巡し、葛藤していたことを知ってほしい。若くして逝った妹の遺志は継いでやりたかった。私はそのために筆をとったのだから。
リアリティを演出する緻密な設定と伏線
本書は
- プロローグ
- 第1章
- 第2章
- 第3章
- 第4章
- 第5章
- エピローグ
という構成で、第1章から第4章がオリジナルの放送・配信版の構成を踏襲しています。
それでも文章となると、放送では表現しきれなかったディテールを書き込むことが可能です。
例えば、イシナガキクエを50年以上探す米原実次が唯一持っていたキクエの不鮮明な正面写真をAIを用いた画像補正で復元するくだりを紹介しましょう。
オリジナル版では、復元した写真がすぐに映し出されますが、書籍版は次のように書いています。
ところが専門家が最新のAI技術を用いて作業しても、なぜかすべて崩れた顔になり、簡単な補正すらうまくいかなかった。本来であれば、55年経った現在(77歳)の顔をAIで作成するつもりだったのだが、失踪当時(22歳)の顔すら作成することができなかった。
そこで番組スタッフは、報道部と付き合いのある似顔絵専門の画家に、写真の画像と米原さんの語る人相風体を連絡し、イシナガキクエの似顔絵作成を依頼したが、納期を過ぎても完成品が届かない。
画家からは、「どうしても絵が完成しません」というメールと共に、書きかけの似顔絵の写真が送られてきた。
この文章の後、大量の似顔絵が映った写真やAI補正に失敗した画像が挿入されます。その不気味なことといったら…
このように放送・配信版を踏襲する章も、微に入り細に入り文章で補って読者を怖がらせてくれます。
書籍版限定で明かされる未公開の第5章
オリジナル版にない第5章(とエピローグ)は、さすがに明かさないでおきましょう。
ちなみに、この書籍はQRコードで動画や音声にアクセスできるようになっています。その大半は放送・配信されたものでしたが、いちばんラストのQRコード(6分3秒の動画)はまったく新規に撮影されたものでした……。

イシナガキクエにご注意ください
同制作スタッフによる関連おすすめホラー
放送・配信を楽しんだ方でも十分楽しめます。ただ、個人的には放送・配信のオリジナル版を観てから読んだほうがより楽しめるように思います。
なお、テレビ東京は『イシナガキクエを探しています』の好評を受けて、同様のモキュメンタリー番組『飯沼一家に謝罪します』と『魔法少女山田』を製作・公開しています。
『イシナガキクエを探しています』を含めて、無料視聴ならTVerやYoutube、有料動画サブスクなら(テレビ東京が資本参加する)U-NEXTで視聴できるかどうか探してみてください。
(しみずのぼる)
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