モキュメンタリー・ホラーの傑作「近畿地方のある場所について」の実写映画が、8月から全国公開されます。背筋氏の原作小説に震え慄き、碓井ツカサ氏のコミカライズも楽しみにする身としては、今から楽しみです(2025.6.11)
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モキュメンタリー・ホラーの傑作
モキュメンタリーはモック(疑似)とドキュメンタリーを合わせた造語で、フィクションをドキュメンタリーの手法を用いて表現したものです。
背筋(せすじ)氏が小説投稿サイト「カクヨム」に連載、その後書籍化された「近畿地方のある場所について」(KADOKAWA刊)は、モキュメンタリー・ホラーの代表作と言われています。「このホラーがすごい!2024年版」(宝島社刊)から引用します。
2023年1月に「消息を絶った友人について情報を提供してほしい」という呼びかけがカクヨミ及びTwitter(現X)に投稿された。その投稿には、友人が調べていたという、ある地域で起きたさまざまな怪奇現象についての記述の抜粋も転載されており……。リアルタイムで更新される情報、繋がっていく怪異、見え隠れする真相が話題を集め、一大ムーブメントを起こした作品。同年8月に書籍化
「近畿地方…」で作家デビューするまで「読み専・観る専」(=ホラー小説を読むだけ、ホラー映画を観るだけ)だったという背筋氏は、「このホラー…」巻頭の鼎談で、モキュメンタリーについて次のように話しています。
私にとってはホラーの中のひとつの枠組みですかね。喩(たと)えるならプロレスのリングみたいなもの。その上で戦うレスラーを見ても、観客は本気でやり合っているとは思わないわけですよね。でも場外乱闘で流血している姿を見たりすると、「もしかしてマジなのかな」と一パーセントくらい感じたりする。そういう「もしかして」を楽しむためのひとつの仕掛けが、モキュメンタリーなんじゃないでしょうか。
近畿地方の●●●●●
カクヨムでは「近畿地方…」の第1話「某月刊誌別冊 2017年7月発行掲載 短編「おかしな書き込み」」を読むことができます。

『お山にきませんか。かきもあります』
この無気味な書き込みで幕を開ける「近畿地方…」は、行方不明になった雑誌編集者が休刊した雑誌のボツ原稿や取材テープ、読者の手紙などから、近畿地方の●●●●●の周辺に怪異が集中していることを探り当て、その資料が徐々に開示されていくスタイルで進みます。
2023年8月に書籍化された単行本には、巻末に行方不明の女児を探すチラシなどが含まれ、まさにモキュメンタリーという体裁。翌24年7月には碓井ツカサ氏によるコミカライズも出版されています。


8月8日から全国公開
そして、いよいよ!この8月8日から実写映画版が全国公開されます。
怖そうでうね~。赤楚衛二さん演じる小沢は原作では行方不明になった雑誌編集者の名前で、菅野美穂さん演じる瀬野は小沢に協力して関係者へのインタビューを手伝うライターなのかな?と思いましたが、原作とは登場人物が微妙に異なるようです。
文庫とコミック2巻も発売
映画公開を前に「近畿地方…」は文庫版が7月25日に出版されます。著者の背筋氏はX上で「単行本とは内容が異なります。登場人物が変わります」と告知しています。
さらに碓井ツカサ氏によるコミカライズも待望の第2巻が7月26日に出版されます。

この夏は「近畿地方のある場所について」で思い切り怖がろう…
「作品の舞台となった場所」
さて、最後にモキュメンタリーについてふたたび。
モキュメンタリーはフェイク・ドキュメンタリーとも言われますから、あくまでフェイク、あくまでモックです。著者の背筋氏もそう言っています。
ところが「このホラー…」の中で、「近畿地方…」の編集者が単行本の装丁について次のように言っているのです。
まず装丁につきましてですが、作品の舞台となった場所で撮影した写真を加工したものとなっています。

え?え?作品の舞台となった場所ってことは、●●●●●は実在する場所なの?
モックを疑った方は、コミカライズ版等に載っている地図を頼りに●●●●●を探してみてはいかがでしょうか(「お山」に誘われても知りませんが…)
(しみずのぼる)
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