きょうはホラー・ミステリーの海外ドラマ「グースバンプス」(2023年)と「グースバンプス バニシング」(2025年)を紹介します。原作は児童向けですが、ドラマは高校生たちの悩みーー親子・友人関係や恋愛の葛藤ーーが織り交ぜられ、ホラー・ミステリーとして大人でも存分に楽しめます(2025.6.1)
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原作は小学生向けだが…
日本語にすると「鳥肌」を意味する「グースバンプス」(Goosebumps)は、「児童文学のスティーヴン・キング」の異名を持つアメリカの児童文学作家R・L・スタインの人気シリーズです。本の紹介文にも「幽霊・怪物・異世界など、鳥肌もののこわーい世界へご案内」と書いてありますが、読者層は小学生低学年あたりの児童向けホラーです。
ディズニープラスのオリジナル・ドラマ「グースバンプス」(全10話)は2023年に配信されました。
- 写真を撮ったらサヨウナラ:イサイアは呪われたカメラの恐ろしい予言が現実になるのを防ぐために奔走する
- 呪われた仮面:仮面のおかげで本音を話す勇気を得たイザベラだが、仮面が彼女の人生をコントロールし始める
- 悲運の鳩時計:ジェームズは鳩時計に頭をぶつけ、タイムループに巻き込まれる
- 芋虫を食べろ:予想外の形で出会ったペットの芋虫を飼い始めてから、ルーカスは痛みを感じなくなったことに気づく
- 心して読め:マーゴットはもらったスクラップブックを通して、ビドル・ハウスの恐ろしい秘密を知ることになる
- 動くマネキンの夜:過去の物語が、彼らが今体験している恐ろしい状況を解明するヒントとなる
- 身の毛をよだたせろ:奇妙な現実に囚われたティーンエイジャーたちは、協力して元の世界に戻ろうとする
- 脅してもムダ:ティーンエイジャーたちはノラを古い友人から救うため、山小屋へ向かう
- 動くマネキンの夜:パート2:ティーンエイジャーたちは週末、旅行に行く。ブラットさんは物語の完璧な結末を模索する
- ホラーランドへようこそ:ポート・ロレンスに帰ってきたティーンエイジャーたちは、町に新たな危険が迫っていることに気づく
出てくる怪異自体は原作に意外と忠実です。未来の災厄を写すカメラ、過去にタイムリープさせる鳩時計、怪異のもととなる腹話術人形…といった具合です。



悩みを抱える高校生たち
でも、ストーリーはまったく児童向けではありません。せいぜいティーンエイジャー向けで、大人でも十分鑑賞に値します。
怪異に巻き込まれる高校生たちは、誰もが問題を抱えています。 好きな子に打ち明けられないイサイア、クラスメートに無視されているイザベラ、ゲイゆえに小さな町で出会いに恵まれないジェームズ、死んだ父親を尊敬するあまり危険で無謀な行動を繰り返すルーカス、両親の別居にひとり悩むマーゴット……。 彼らが怪異に巻き込まれ、死にそうな思いをしながら、いつしか行動を共にして怪異のもとーー腹話術人形に取り憑かれた少年の亡霊に立ち向かっていく……というストーリーです。
それだけではありません。少年少女たちが怪異の謎を解き明かす過程で、30年前の少年の死に自分たちの親がかかわっていたことを知ることになります。 1話ずつはホラーテイストでも、基本は亡霊となった少年の死の真相に迫る謎解きミステリーとなっているのです。

ある小さな町に住む5人の高校生が、30年前のハロルド・ビドルという少年の謎の死について調査し始める。真相に迫るにつれ、自分たちの両親の過去の秘密も明らかになっていく…。
日本語の字幕がついていませんが、予告編のユーチューブ動画をごらんください。
配信されたばかりのシーズン2
「グースバンプス バニシング」(全8話)は今年配信されたばかりです。
- 地下室に入るな(前編):家族の悲劇と長きにわたり眠り続けてきた脅威との関連性が解き明かされる
- 地下室に入るな(後編):トレイが地下の研究室に侵入し、予期せぬ恐怖を解き放つ
- 呪われた車:アレックスが盗んだ車には意思が宿っていた
- 怪物の血:完璧な印象を守りたいシーシーは、厄介な状況に陥る
- 怪物と叫んだ少年:CJがアンソニーの家で恐ろしいものに遭遇するが、誰にも信じてもらえない
- 隣の少女:30年前の失踪事件と親たちに関する新しい証拠が見つかる
- 悪夢のキャンプへようこそ:何十年も真実を隠してきた謎の人物の正体が明かされる
- 侵略者たち:若者たちが自分たちと地元、そして世界を救うために団結する
前作の好評を受けて製作されたシーズン2という位置づけですが、前作(シーズン1)とのストーリーのつながりはありません(シーズン1の教師役、シーズン2の父親役はどちらもデヴィッド・シュワイマーが演じていますが…)

双子のデヴィンとシーシーは、離婚した父親で科学者のアンソニーとブルックリンのグレーブセンドで夏を過ごすことになった。2人は新しくできた友人たちと力を合わせ、長年潜んでいた危険な存在から町を救おうと奮闘する。
双子にも、双子に協力する少年少女にも、それぞれに問題を抱えているのは前作同様です。
例えば、ひとりの少女(アレックス)は放火のぬれぎぬを着せられて少年院から出所したばかり。母親は刑事で、娘の言うことを信じてくれない。そんな母娘が怪異を通じて心を通わせていく…というサイドストーリーが挿まれていて、前作以上に親子の葛藤を前面に打ち出しているように受け止めました。
日本のホラーや韓国ホラー、台湾ホラーあたりだと、登場人物が怪異に巻き込まれて次々と死んでいくのが”お決まり”だったりしますが、「グースバンプス」の2作は、原作が児童向けのためか、登場人物たちで死ぬ人が出てこないので、そういう意味では安心して観ていられるドラマです。それでも十分ハラハラドキドキします。
ただひとつだけ。これは原作に忠実だから…というしか言いようがないのですが、気持ち悪い場面は出てきます。ミミズ状の芋虫が鼻の穴から入ってしまい、芋虫に心まで支配される回(シーズン1の第4話)なんて、観ていて「うええ、気持ちわるい…」と思ってしまいました。
スライム状のドロドロに体中がまみれるシーンもよく出てきます。 これはR・L・スタインの小説の特徴のひとつでもあります。R・L・スタイン原作の小説をもとにしたエミリー・オスメント主演のアメリカ映画「R.L.Stine’s Haunting Hour」(日本では未公開)でも、登場人物たちがスライム状のドロドロにのまれる場面がありました。 気持ち悪い場面で鳥肌を立たせよう…という原作者の趣味嗜好ではないか、と疑っています。


「グースバンプス」かあ。あれって児童向けだよな…
と早合点して見逃すのはあまりにもったいないでしょう。シーズン3の製作が今から楽しみです。
(しみずのぼる)
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