女性たちの「自分らしく自由に生きたい」に共振…「エミリア・ペレス」 

女性たちの「自分らしく自由に生きたい」に共振…「エミリア・ペレス」 

話題の映画「エミリア・ペレス」を観ました。妻が新聞の映画評を読んで「観たい」と言い出したのがきっかけ。つまり、事前の知識がほぼゼロの状態で観ました。とても感動しましたし、深く考えさせられる映画でした(2025.4.14) 

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麻薬王が「女性になりたい」

妻の説明は、ただこれだけでした。 

麻薬王が「女性になりたい」と言い出す映画だって… 

これだけの事前情報だったので、映画が始まって俳優たちが唄い出した時は「え?これってミュージカルなの?」と驚きました。 

そして”麻薬王”の登場にまたビックリ。だって、どう見ても暴力臭をフンプンとさせるマッチョな男だったから……。 

映画のあらすじを公式サイトから明かしましょう。 

優秀な才能をボスに利用され、不遇の日々を送っていた弁護士のリタに、驚くべき依頼が舞い込む。メキシコ全土を恐怖に陥れていた麻薬カルテルのリーダー、マニタスが「女性としての新たな人生を用意してほしい」というのだ。 

https://gaga.ne.jp/emiliaperez/

この「依頼」というのもすごいのです。街頭で袋を頭にかぶせられて拉致されて麻薬カルテルのアジトに連れていかれて、マッチョな男から誰にも知られることなく「女性になりたい」と切り出されるーー。 

「依頼」を引き受けたリタは、バンコクや香港など世界各地を回り、テルアビブでようやくマニタスの希望を満たす医師をみつけます。 

映画の雰囲気を知ってもらうため、ここで流れる曲を聴いてみてください。男性の声が医師、女性の声が弁護士のリタです。 

「家族を取り戻したい

マニタスは妻と子供2人を捨てて性転換手術を受け、マニタスは抗争に巻き込まれて死亡したと伝えられ、新たな人生ーーエミリア・ペレスとして第2の人生をスタートさせるのですが、4年後、リタは再びエミリアから依頼されます。「家族を取り戻したい」とーー。 

リタの助けを得てエミリアはメキシコに戻り、マニタスのまたいとこを名乗って妻と子供2人と過ごし始めます。さらに、かつてマニタスとして手を染めた殺人への悔恨から、リタの協力を得て犯罪で行方不明になった人たちの捜索を行うNGO組織を立ち上げますが、徐々にほころびが表面化するーーというストーリーです。 

予告編をごらんください。 

『エミリア・ペレス』本予告 3月28日(金)全国公開

いかがですか。すごくおもしろそうでしょう? 

母親であり、かつて父親だった

実際、とてもおもしろく、かつ深く感動しました。特にマニタス/エミリアを演じたカルラ・ソフィア・ガスコンの迫真の演技に魅了されました。 

パンフレットにはこう書いてあります。 

私の地声はマニタスとエミリアの中間ぐらいだけど、声をつくるのが大好きなんです。 

こんなくだりも出てきます。 

私自身も母親であり、かつては父親でした。 

スペインで生まれ、2009年にメキシコに移住したガスコンは、2016年にトランスジェンダー女性であることを公表、2018年に性別適合手術を受けたそうです。まさにはまり役と言えるでしょう。 

カンヌ女優賞を4人で受賞

映画について、パンフレットに次のように出てきます。 

2024年のカンヌ国際映画祭は異例の事態に沸いた。通常一人の女優に与えられる女優賞が、本作に出演した4人に送られたのだ。審査員長を務めた『バービー』(23)のグレタ・ガーウィグ監督は、「4人はそれぞれ秀でていたが、一緒になると超越していた」 

男性優位社会で才能を搾取され手柄を横取りされてきたリタ、男性の肉体から解放され本当の自分を取り戻したいと願ったエミリア、麻薬王と恐れられたマッチョな夫に逆らえず子育てにすべてを捧げてきたジェシー、夫のDVに心身共に傷つけられたエピフォニア。閉じ込められた場所でもがきながら、何とか自らの手で扉をこじ開け、勇気を出して飛び立とうとする女性たちの姿が、自分らしく自由に生きたいと願うすべての人の心に深く大きく共鳴する。 

なんの先入観も持たずに観たため、彼女たちの「自分らしく自由に生きたい」と願う気持ちにとても共振しました。 

アカデミー賞(歌曲賞)を受賞した「El Mal」をお聞きください。テーブルに立って歌っているのがアカデミー賞(助演女優賞)を受賞したリタ役のゾーイ・サルダナです。 

『エミリア・ペレス』本編映像【El Mal】

SNSで炎上、オスカー逃す

「エミリア・ペレス」は、ガスコンの過去の発言がSNSで炎上するなど、作品以外のところで批判を集め、アカデミー賞受賞を逃したことなど話題は尽きません。 

ただ「主演女優の差別ツイートで大炎上! それでも映画『エミリア・ペレス』が面白い理由」という映画評は、次のように書いています。 

それぞれの役者が素晴らしい存在感を見せるが、強烈なインパクトを残すのはエミリア・ペレスを演じるカルラ・ソフィア・ガスコンである。自身も役柄と同じトランスジェンダーの女性で、一時はアカデミー賞主演女優賞の有力候補とまで言われていた。だがその後、人種や宗教に関する差別的なツイートを過去に連発していたことが明らかになり大炎上。オスカー受賞の夢も泡と消えてしまったのだ。 

そんな残念なスキャンダルに見舞われたものの、この作品がすこぶる面白いという事実は変わらない。数奇な運命に翻弄されながらも、自らの道を突き進もうとする、挑戦的な女たちの行く末をぜひ見届けてもらいたい。 

ENGINE – 主演女優の差別ツイートで大炎上! それでも映画『エミリア・ペレス』が面白い理由

この作品がすこぶる面白いという事実は変わらないーー。わたしも同じ感想を抱きます。

多くの人に「エミリア・ペレス」は観てほしい、そう思います。 

(しみずのぼる) 

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