きょう紹介するのはピンク・フロイドのCD「原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)」です。サブスクで音楽が聴ける時代、何をいまさらお皿なんて…と思うでしょうが、1971年来日時の貴重映像を収めたブルーレイ付です(2025.3.29)
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プログレッシブ・ロックの代表格
ピンク・フロイドが1970年に発表したアルバム「原子心母」(Atom Heart Mother)のロック史的意味合いは「200CD プログレッシヴ・ロック」(立風書房)から引用しましょう。
発表直後初の全英アルバム・チャート一位を獲得し、一般的な人気と評価を決定づけたアルバムだが、日本においては、この作品の登場によって〈プログレッシヴ・ロック〉という呼称はロック・ファンの中で一般化し、こうした流れにある音楽への人々の関心を大いに駆り立てる役割を果たした。また、ピンク・フロイド自体に対する人気や評価も、当時五十万枚近く売り上げたことからもわかるように、このアルバム以後、日本ではうなぎ上りになり、プログレッシヴ・ロックの代表格としての地位を確立していった。
「200CD プログレッシヴ・ロック」(立風書房)より
アルバム「原子心母」は、むかしのA面に表題曲ーー23分42秒の大作が収められ、B面にシンプルなメロディが魅力の小曲と実験音楽風のナンバーが収められていますが、やはりアルバムを代表するのは表題曲です。
もともとはデイヴ・ギルモアが幻想的な西部劇のテーマをイメージして作った短い映画的響きを持つ旋律に、メンバーたちがヴァリエーションを加えていった曲であった。しかし次第に収拾がつかなくなり、彼らの友人であった実験的音楽家のロン・ギーシンにテープを渡し協力を求める。ギーシンは、チェロ奏者、十人の管楽器奏者、二十人の合唱団を起用し、ピンク・フロイドのテープと新たに録音した管楽器演奏類やコーラス・パート、そして様々なサウンド・エフェクト類等をオーバーダビング及び編集して、リック・ライトと共に六つのパートから成る壮大で想像力を喚起させる組曲を作り上げた。
「200CD プログレッシヴ・ロック」(立風書房)より
「箱根アフロディーテ」ライブ映像
「原子心母」は管弦付コーラス付の大曲ですが、ライブではメンバー4人だけで演奏される機会もありました。 そんな”Naked 原子心母”が記録されているのが、2021年に発売された「原子心母(箱根アフロディーテ50周年記念盤)」に収められた付属ブルーレイなのです。

歴史的新発見!奇跡の発掘!今鮮やかに甦る幻の「箱根アフロディーテ」映像収録!
ピンク・フロイドの初来日公演『箱根アフロディーテ』から50周年記念! 奇跡の日本独自企画――『原子心母』の7インチ紙ジャケにCDと、遂に新発見! 50年前のオリジナル・フィルムからの映像をBDに収録した2枚組。日本独自の映像・音源を収録したものとしては「ピンク・フロイド史上初の日本独自企画」が実現!●1971年8月6日、7日に開催された日本初の野外ロックフェス「箱根アフロディーテ」50周年記念
●今まで「謎」に包まれていた1971年箱根アフロディーテでの「原子心母」の16mmオリジナル・フィルムを遂に新発見! 今鮮やかに甦る幻のピンク・フロイドの初来日公演『箱根アフロディーテ』映像!
●最新技術を駆使し16mmフィルムからデジタル化 、3年の月日を経てレストア&リマスター(音源も「箱根アフロディーテ」ライヴ音源使用)
●更にこちらも新たに発見したB-roll的な「Scott & Watts」もボーナス映像として収録! 箱根アフロディーテ設営時映像が見れるのも史上初!
付属ブルーレイ映像は、ピンク・フロイドの4人が空港を降り立つ映像から、箱根に機材を運ぶトラックの映像まで記録されています。
もちろん演奏を収めたプロショット映像も鮮明です。当時のライブ音源をバックに、箱根鉄道が鉄橋を渡るシーンや芦ノ湖の遊覧船の映像が挿入されます。
公式ライブ盤があれば最高
残念なのは、映像は「原子心母」の演奏の一部だけというところでしょうか。
箱根アフロディーテでは、ピンク・フロイドは「原子心母」以外にも「ユージン、斧に気をつけろ」「エコーズ」「太陽讃歌」といった初期フロイドの代表曲も演奏してます。
当日の演奏を全曲収めたブートレグ(海賊版)も出ています。

日本語で「ではご紹介しましょう、ピンク・フロイド!」と紹介された後もずっとサウンドチェックが続いて(メンバーが「ワン、トゥー」を繰り返す)、どこからが曲の始まりかわからない不思議な始まり方をしています(メンバーが「オーケー、ヒア・ウイ・ゴー」と言った後も変な音が続いたり…)
貴重な記録だと思うので、主催したニッポン放送には音源が残されているでしょうから、公式ライブ盤「ピンク・フロイド・アット・箱根アフロディーテ」を出してほしいな……と、ないものねだりをしたくなります。
ポンペイ遺跡ライブが劇場公開
ピンク・フロイドのライブ映像は比較的多く記録されていますが、日本人なら「箱根アフロディーテ」は必見でしょう。
では、世界の人なら?と言うと、個人的な意見ですが、ポンペイの遺跡で演奏した「ピンク・フロイド・アット・ポンペイ」ではないでしょうか。
その「アット・ポンペイ」が4月に劇場公開されることになり、予告篇がユーチューブに公開されています。
本作はエイドリアン・メイベン監督による1972年公開の映画『ピンク・フロイド・アット・ポンペイ』を新たに修復して、4Kデジタルリマスターしたものとなっている。
1971年10月にイタリアのポンペイ遺跡の世界遺産である古代ローマ「円形闘技場」でのピンク・フロイドの無観客ライヴ・パフォーマンスは、ポンペイ遺跡で行われた史上初のコンサートとなっている。
ピンク・フロイドの修復ディレクター、ラナ・トプハムは『ピンク・フロイド・アット・ポンペイ』について次のように続けている。「1994年以来『ピンク・フロイド・アット・ポンペイ』の行方がわからなくなってた未編集状態のフィルムを探し続けてきたので、1972年のオリジナルの35mm撮影のネガを最近発見できたのはとてつもなくスペシャルな出来事でした。新たに修復されたヴァージョンは、最初の90分のカットと、60分に渡るソース・エディットと組み合わせ、その後間もなく撮影された、アビイ・ロード・スタジオでのドキュメンタリー映像も加えて編集しました」
ピンク・フロイド、『ピンク・フロイド・アット・ポンペイ』の日本での劇場上映が決定

おおお、これは観たいぞ!
「アット・ポンペイ」のライブ音源は、アップル・ミュージックやスポティファイで視聴することが可能です。
劇場上映の具体的な場所やスケジュールは下記記事をごらんください。

「アット・ポンペイ」を観に行く前に、ひさしぶりに「原子心母」やポンペイで演奏した「エコーズ」などを収めた「おせっかい」(Meddle 1971年)、「狂気」(The Dark Side of The Moon 1973年)といった名アルバム群に浸ってみようと思います。
(しみずのぼる)
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