通勤途中の電車の乗り換えなどで、前の人って歩くのが遅いなあと思って追い越しざまに様子をみると、大抵はスマートフォンを覗き込んでいる光景に出くわします。歩きスマホの危険性がこれほど言われているのに…。なぜなんでしょう(2925.3.25)
〈PR〉


イグ・ノーベル賞の実験結果
歩きスマホが人の通行にどんな影響を与えるのか。実際に、東大の構内で、大学生27人ずつの二つの集団が、幅3メートル、長さ10メートルの通路をすれ違って歩く様子を観察して「イグ・ノーベル賞」を受賞した研究者がいます。京都工芸繊維大学の助教・村上久さんです。
通常は自然に歩行者の列ができ、スムーズにすれ違うことができるのに、片方の集団の3人にスマホで足し算をしながら歩かせると、全体の歩行速度が遅くなり、列の乱れが生まれたそう。スマホに注意が向いてしまうと、本人も周りの人も互いにどちらへ向かうのか予測できず、衝突の危険性が高まることがわかったそうです。
これは百聞は一見に如かずです。実際の実験映像を見ることができるので、下記ユーチューブ動画をごらんください(通常の歩行パターンは1分3秒から、歩きスマホの歩行パターンは1分53秒から始まります)
人は、歩いているときも、衝突を回避すべく、知らず知らずのうちに相手に合わせて自分の行動を取っているのに、スマホ画面を見ながらだと、自然とそれができなくなってしまうのだそうです。
スマホ依存度と相関関係
10代20代の6割超が歩きスマホを行っているという調査もありました。NTTドコモのモバイル社会研究所が2023年に実施した調査です。
大都市ほどその割合は高く、「スマホが常に身の回りに無いと困る」人ほど歩きスマホをしているそうです。
これは、恥ずかしながら私も少しだけ思い当たることがあります。
私もスマホの無料ゲームは大好きで、暇つぶしに詰め将棋やパズルゲームをしながら、電車やバスに乗っていることが多いのです。無料ゲームと言いながら、ゲームをずっと続けたくて、アイテムを購入するため課金をしてしまったこともあります(100円単位ですが…)
そういう状態が高じていくと、歩きながらも気になるゲームをしてしまう、スマホ画面を思わず見てしまうーーということも、私も決してゼロではないな…と、この調査結果を見て反省しました。
事故がもっとも多いのは50代
でも、歩きスマホには危険もつきものです。「ころぶ」「ぶつかる」「落ちる」などで、東京消防庁管内では令和2年から令和6年までの過去5年間で歩きながら、または自転車に乗りながら、スマホ画面を見たり操作したりしていたことがきっかけで起きた事故で、計143人が救急搬送されています。
年代別でみると50代がもっとも多くなっています。先ほど紹介したモバイル社会研究所の調査結果では10代20代が歩きスマホの割合は多いのに……。
おそらくですが、若い人はぶつかっても反射神経がいいから事故に至らず、中年になってもそれまでと同じ習慣で歩きスマホを続けていると…ということなのかなと想像します。
自転車スマホは違法になったが…
東京消防庁のサイトはスマホ絡みで救急搬送された具体的ケースも紹介しています。
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/lfe/nichijo/mobile.html
- スマートフォンを見ながら歩道を歩行中、縁石に気づかずに躓き転倒し、腰を受傷した【30歳代 中等症】
- スマートフォンを使用しながら歩いていたところ、電柱に気づかずに前額部をぶつけて受傷した【40歳代 軽症】
- スマートフォンを見ながら駅のホーム上を歩行していたところ、踏み外して軌道敷に転落し、腰部を受傷した【10歳代 中等症】
自分で階段を踏み外してケガをしてしまうくらいならまだ自業自得ですが、前から歩いてくる人が白杖や車いすを使っている人ということもあるでしょう。そういう交通弱者の人達を巻き添えにしてしまったら大ごとです。
歩きスマホをしている人たちを象徴する言葉に「スマホ・ゾンビ」という表現もあるそうです。急な電話や連絡をチェックするときは、歩きながらではなく、いったん立ち止まって。顔をあげて、周囲をよく観察することから始めるしかないのかもしれません。
道路交通法の改正によって、自転車に乗りながらのスマホ操作は違法になり、摘発の対象になりました。でも、歩きながらまでを罰する法律は今のところありません。
自分が被害者にも加害者にもならないこと。そのためには、慣れた歩道でも細心の注意を払って、歩きたいものですね。
スマホからのデトックス(一切触らない時間を設ける)もかねて。
(ruru)
〈PR〉

