トランプ大統領の一貫性のない関税政策にアメリカ経済が翻弄されています。米S&P500種株価指数も下落、「トランプ不況」リスクが公然とささやかれ出しました。わたしも2020年から積み立ててきた米国株、全世界株のインデックス型投資信託の積立設定を解除、保有する投信もすべて売却手続きを取っています(2025.3.11)
〈PR〉


目次
3年8か月で30%超の含み益
その前に、積立投資信託に関する考えを述べておきます。
信託報酬率の低いインデックス型投資信託、特にS&P500連動の米国株と、オルカンと呼ばれる全世界株の投資信託は長期に積み立てて複利効果を狙うのに最適な投資信託だと思います。
わたし自身、2020年から旧つみたてNISAで
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
を中心に積立投資信託を行ってきました。23年8月には「おすすめの投資信託「5選」はこれだ!」の見出しで記事にして、その時点で30%を超える含み益を稼ぎ出していることを書いています。該当部分を再掲します。
そもそも証券口座を開設したのが2018年という、ほんとうの投資初心者です。18年と19年は「NISA」でおっかなびっくり国内銘柄を買いながら、投資の世界に足を踏み入れました。そして、20年からNISA口座は「つみたてNISA」に一本化して、国内銘柄の購入は特定口座で本格的に始めた……という経歴です。ですから、たった3年8か月の経験で、「なにが5選か!」と言いたくなると思いますが、まずはこの3年8か月の成績をグラフでみてください。積み立てた総額が141万円あまりで、それが時価評価額で184万円あまりになっています。評価益は42万円超、利回りで言うと30%を超えています。たった3年8か月で3割も資産を増やしたのか!と思われるでしょう。そうなんです。
おすすめの投資信託「5選」はこれだ!

記事中で投資信託別の含み益がわかる図も載せています。

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の時価評価額が63万5976円。45万7222円の投資額に対して含み益額が17万8754円ですから、含み益率は39.09%です。 eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の時価評価額が57万4730円。44万3555円の投資額に対して含み益額が13万1175円ですから含み益率は29.57%です。
わずか3年8か月で資産を30~40%近く増やしたのですから、この2つの投資信託のパフォーマンスがいかに優れているかがわかります。
24年も10%超の利回り
24年の新NISAに合わせて、信託報酬率がeMAXIS Slimよりも低い
- 楽天・S&P500インデックス・ファンド(楽天S&P500)
- 楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド(楽天オルカン)
に積立設定を変えました。こちらも昨年11月に全売却した際に記事にしています。特定口座で積み立てていた別の投資信託を含めて84万円の投資額が92万円超で売却できた、と出てきます。
84万円が合計92万5413円になったわけですから、これによる実現益は8万5413円となります。特定口座であれば、ここから約2割、約1万7000円ほどの源泉徴収がありますが、NISAですから実現益はそっくりそのまま受け取ることができます。
利回りの計算式は、利回り(%)=収益(分配金+売却損益)÷運用年数÷投資金額×100ですから、あてはめれば10.168%です。
NISAではじめて売却しました…10%超の実現益をそっくり受け取れます
1年で10%超の利回りですから、これもパフォーマンスは申し分ありません。

若ければ積立継続一択だが…
もし、わたしが20歳・30歳代だったら、長期に積み立てればそれだけ複利効果が効きますから、積立投資信託を継続するのが最良の選択だろうと今でも思います。
ですが、哀しいかな、わたしは現在60歳代です。トランプ不況のあおりを受けて投資信託分がマイナスにへこむ中、しかもトランプ政権が向こう4年近く続くことがわかっている中で、このまま米国株や米国株の依存度が高い全世界株のインデックス型投資信託を積み立て続けていいのだろうか…と思いました。
米国株は割高…円高リスクも
折しも、米国株・全世界株のインデックス型投資信託への疑問を投げかける本を読んだばかりです。先に記事でも紹介した個人投資家ヘムさんの新刊本「「増配」株投資 年1,075万円もらう資産3.7億円の投資家が教える!」(KADOKAWA刊)です。


同書の該当部分はプレジデント・オンラインでも「「オルカン、S&P500」だけでは危険すぎる…資産3.7億円を築いた脱サラ投資家が「新NISA」で選ぶ”最強の投資先”」という記事で読むことができるので、そちらから引用しましょう。
インデックス投資で過去10年くらいの成績を見ると米国株が圧倒的に好成績でした。現在、広く読まれている投資本やSNS等を見るとS&P500への積み立て投資が「投資の最適解」のように言われています。しかし、私はこの考えは非常に危険だと思います。米国株のここ10年の躍進は、その大部分がGAFAM(グーグル、アマゾン、メタ、アップル、マイクロソフト)といった巨大IT企業のイノベーションに支えられていた一面があります。
このイノベーションが今後も起き続けるという前提に立たないと説明できないほど米国株は現在、割高になっているように思えます。日本株と比較しても、かなり割高な水準です。
そのうえ、米国株投資では為替リスクも見逃せません。今の為替水準は購買力平価やマネタリーベースから見ても円安すぎる水準です。今後の為替レートを予想するのは難しいですが、円高リスクを無視することはできません。松井証券のレポートによると、2024年10月中下旬のS&P500のPERは24倍です。一般的にフェアバリューと呼ばれているPER15倍に水準が訂正されると株価は約37.5%下落します。
「「オルカン、S&P500」だけでは危険すぎる…資産3.7億円を築いた脱サラ投資家が「新NISA」で選ぶ”最強の投資先”」
米国株は確かに割高ですし、トランプ大統領の政策の混乱からドル売り・円買いが進んで円高傾向が生じているのは確かです。
ボーナスステージ終了
篠田尚子氏(楽天証券経済研究所 副所長 兼 ファンドアナリスト)も「S&P500やオールカントリーの「ボーナスステージ」はついに終了か? 新NISA2年目に訪れた試練への対処法」という記事で、オルカンとS&P500の”変調”を指摘しています。
米国を中心に株式市場が右肩上がりで上昇を続け、年率十数パーセント、あるいは、数十パーセントのリターンを得ることが当たり前となっていた中、頭をすぐに切り替えるのは難しいかもしれない。しかし、足元5年以内に投資を始めた人は、「ボーナスステージ」がいよいよ終わりつつあることを認識した方が良いだろう。
2025年に入ってからは様相が少し変わってきた。トランプ大統領による関税政策への不安感から米国の景況感が下振れしていることに加え、日本の投資家には円高進行も重石となっている。年初来のリターンを確認すると、ドル建てはかろうじてゼロ近辺を維持しているが、円建てのインデックスファンドは、円高進行に引っ張られる形でマイナス圏に沈み、「向かい風」に苦しんでいる。
「S&P500やオールカントリーの「ボーナスステージ」はついに終了か? 新NISA2年目に訪れた試練への対処法」
篠田さんもトランプ政策の混乱とそれによる円高進行を”変調”の要因に挙げています。 今までのようにはいかない…というのは確かなようです。
チャート図で確認しよう
今年に入ってからの下落ぶりはチャート図(3か月)でも確認できます。


しかし、長期のチャート図(5年)でみれば、24年夏の下落もすぐに復調したように、今年に入ってからの下落は一時的なものかもしれませんし、長期で見れば経済成長とともに右肩上がりになるのは間違いないでしょう。


トランプ政権への疑問
にもかかわらず、わたしが積立設定を停止し、保有する投信を含み損を抱えていても売却しようと思ったのは、トランプ大統領や側近のイーロン・マスク氏への忌避感情が強いからかもしれません。

自分が打ち出す関税は正しくて、カナダが報復関税に出ると激しくののしるのは天にツバするような愚かな行いに見えますし、カナダの首相を「知事」呼ばわりするのも聞くに堪えない暴言です。ロシアの侵略に苦しむウクライナへの対応もひどいと思いますし、ウクライナ支援の必要性を訴えるポーランド外相に対してマスク氏が「黙れ、チビ」とX上で呟いたという記事などを読むと、「この人たちはどうかしている」という思いが禁じ得ません。
アメリカの政策上の混乱と、それが惹き起こす全世界的な混乱と疲弊は、まだまだ続きそうな予感がします。 しかもトランプ大統領は仮にも民主的な手続きで選ばれた大統領ですから、今後4年間は翻弄される可能性は捨てきれません。
そんな不安な気持ちで米国株や米国株中心の投資信託を積み立てるぐらいなら、日本国内の高配当銘柄や増配が期待できる銘柄、株主優待が魅力的な銘柄を選んで買い付けする費用に充当したほうがマシ…と思うに至りました。
含み益の減少は気にしない
もちろん米国経済の混乱は日本にも無縁ではありません。
11日の日経平均株価は一時3万6000円台ーー昨年9月以来の株価水準まで落ち込みました。後場で少し持ち直したものの、わたしも含み益は1日で130万円以上減少しました。
それでも「含み益の上下動は一喜一憂しない」と心に決めています。それよりも大事なのは年間配当金の水準を維持することです。
以下、画像1は3月10日、画像2は3月11日の「配当管理」アプリの画面です。


赤枠の総資産評価額を比較すればわかる通り、この1日で含み益は132万5090円減少しています。
しかし、年間の配当金額は403万0427円で変わりません。20.315%の税金を差し引かれても、年間329万1133円の配当金を得ることができます。
若い人なら積立投資信託は継続したほうがいいですし、トランプ政権による混乱に関する気持ちもかなりパーソナルな感情をはさんでいるので、万人にあてはまる話ではありません。
それでも、2020年から続けてきた積立投資信託をはじめて停止するので、これまで記事で書いてきたことと異なる対応をすることもあって記事にした次第です。
(いしばしわたる)
〈PR〉

