映画『バッファロー’66』が描く、不器用な男と天使の孤独な純愛

映画『バッファロー’66』が描く、不器用な男と天使の孤独な純愛

ヴィンセント・ギャロが監督・脚本・音楽・主演のすべてを務め、90年代のミニシアターブームを牽引した名作映画『バッファロー’66』。刑期を終えたばかりの不器用で身勝手な男と、彼に拉致されながらも優しく寄り添うヒロインが織りなす、奇妙で切ない恋愛模様を描いた作品です。本記事では、本作の見どころや独特の映像美、劇中を彩る名シーンの魅力について詳しくレビューします。(2025.3.5) 

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ヴィンセント・ギャロが魅せる多才な才能

1998年に公開された『バッファロー’66』は、「俳優であり、ミュージシャンであり、画家でありモデルでもあった」(ブルーレイ背表紙より)ヴィンセント・ギャロの初の映画監督作品で、監督・脚本・音楽・主演の4役をひとりで担当しています。 

ウィキペディアを見ると、俳優としては最近でも多くの映画に出演しているようですが、監督としては『バッファロー’66』のあとは2作撮っただけ。音楽アルバムも、わたしが知る限りでは『When』(2001年)1枚のはずです。 

『When』はお世辞にも聴きやすいアルバムではありません。手元の『200CD プログレッシヴ・ロック』(2001年、立風書房刊)には「ダウナーなテクノといった趣きで、メロトロンへの偏愛が良く表れている。ヴォーカル曲は『アイランド』期のクリムゾンみたい」と紹介されています。 

公開25周年を経たリバイバル上映の反響

そんなマイナーな(失礼!)ヴィンセント・ギャロの半自伝的映画『バッファロー’66』は、それなのにすごく愛されている映画のように思います。 

公開翌年の1999年に日本でも「最悪の俺に、とびっきりの天使がやってきた」のキャッチコピーで封切上映されたそうですが、なんと2023年にもリバイバル上映されているのです。 

リバイバル上映時の予告編をごらんください。 

【予告編】『バッファロー’66』2023年11月10日(金)より全国53館にてリバイバル上映!

刑務所を出て故郷の街バッファローに帰ろうとしていたビリー(ヴィンセント・ギャロ)は、何も事情を知らない両親に電話をかけ、”これから婚約者を連れていく”と大見栄を切ってしまう。偶然通りかかった少女レイラ(クリスティーナ・リッチ)を拉致し恋人のフリをするよう脅し両親と無事対面。一方レイラは次第にビリーの孤独な素顔を知り優しく接しようとするが、彼にはやり残した事があったーー。(ブルーレイ背表紙より) 

このあらすじを読むだけでも、どうしようもない男ですよね。出所してすぐ女性を拉致するのもどうかと思いますし、しかも拉致されたのにビリーに優しく接するレイラのことを何度も邪険にするのですから、最初の方は観ていてイライラします。 

独特な世界観が生む観客の評価と好悪の差

ですから『バッファロー’66』は、正直に言えば、好悪が分かれる映画でしょう。 

わたしの手元にある『みんなのシネマレビュー』(2003年、クラブハウス刊)では、レビュー数評価ランキング500位中66位と意外と高評価ですが、コメントをみると好悪がすごくはっきりしています。まず「好」を紹介すると、 

女の子なら、というか、母性本能を持ち合わせている人ならば、レイラの気持ちは分かるとおもいます。愛情に飢え、愛情を求めている人がいれば、自然に愛情を注いでしまう気持ち、私には分かります。だから、この映画は、確かに足りない部分もあるけど、感動しました(Claire、7点) 

おしゃれ映画と思って観たのですが…むしろ人間味がすごく表現されてると思いました。ギャロがどんどんかわいく、クリちゃんはなんてステキないい女(中身も)と思いました。おおげさではない愛をさりげなく感じる映画でした(yuki☆、8点) 

一方、好悪の「悪」のほうを紹介すると、 

何事も吹っ切ることが出来ない小心者でガキで童貞のチンピラが、どんな愚か者でも包み込んでくれる「母胎」の様な女に出会い、ずっと自分の殻に閉じ籠ったまま生きている安心を得るという堕落の物語(sayzin、5点) 

といった具合です。どのコメントも、この映画の特徴を的確に表しているなと思います。 

わたしは?というと、最初はイライラしながら観つつも、後半は徐々にビリーの孤独に”感応”していき、ラストの過去の妄執(復讐)にこだわるか、レイラの純愛をとるか…というシーンまで、とても惹かれるストーリーでした(そうでなければ紹介しませんよね?) 

クリスティーナ・リッチが踊る名シーン

『バッファロー’66』と言えば、映画のシーンに選ばれる音楽が非常に有名です。

特に、自身のアルバム『When』もプログレ関係の本で紹介されるように、プログレッシブ・ロックから3曲も挿入されます。 

いちばん有名なのが、キング・クリムゾンの「ムーンチャイルド」です。 

ボーリング場で、ビリーに邪険に扱われたレイラが、寂しくタップを踏むのがこれ。レイラの孤独感がひしひしと伝わる。ここで観客は、レイラもビリーと同類だと分かるのだ。 

サントラ盤のライナーノーツより

このシーンはユーチューブ動画をつけておきます。 

‘Layla Tap Dances’ Scene | Buffalo 66

プログレからは他に2曲ーーイエスの「ハート・オブ・ザ・サンライズ」と「スウィートネス」が流れます。 

どんな場面かと言えば、過去の妄執(復讐)にこだわるか、レイラの純愛をとるか…というシーンなので(ネタバレを避けるため)紹介は控えますが、場面にピッタリな選曲にギャロのセンスのよさを感じます。 

二人の距離が縮まるベッドシーンの映像美

もう1曲はジャズから。スタン・ゲッツの「アイ・リメンバー・ホエン」。先に紹介した予告編にも一部でてきますが、 どういう場面で流れるかと言うと、

モーテルで一緒にフロに入ったビリーとレイラが、ベッドの上に横たわる。カメラはこの2人を真上からとらえ、白画面へのフェイド・インとフェイド・アウトでつなぐ。ギャロの映像センスがいかんなく発揮された名シーンだ。こういう場面にスタン・ゲッツの曲を流すなんて、本当にいいセンスだ。 

サントラ盤のライナーノーツより 

こうやって紹介文にまとめると、やっぱりお洒落なセンスが光る純愛映画だなあ…と改めて思います。

偏愛する人がいて、リバイバル上映したくなる気持ちがとてもよくわかります。 

(しみずのぼる) 

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