きょうの日本経済新聞に大変興味深い記事が載っていました。配当性向に関する記事で、配当性向が100%越えの企業が17社もありました。高配当株の落とし穴として、この記事は必見と思います(2024.3.4)
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配当性向とは何ぞや?
最初に「配当性向とは何ぞや?」です。
配当性向とは「企業が当期純利益の中からどれだけの割合を株主に配当として支払っているか」を示すものです。1000億円の売り上げの企業の当期純利益が100億円だったら、そのうち株主への配当に回す総額が30億円なら配当性向30%となります。
企業にとって大事なのは、売上高も大事ですし、本業の儲けを示す営業利益も大事ですが、利益が最後にいくら残ったかがわかる当期純利益もとても大事です。
当期純利益の使い道として、企業がさらに成長するために設備投資に回したり、将来予想される大規模支出に備えて内部留保に回したりして、残った中から配当に回されます。
最近は株主還元策を重視するトレンドなので配当性向は以前より上昇傾向にありますが、それでも配当性向が高過ぎればよい、というわけでは決してありません。
配当性向20~50%が適正
松井証券の「配当性向とは?計算式や目安、高すぎるとどうなるかを解説」という記事も、次のように書いています。
配当性向は一般的に20〜50%程度に収まっていれば、一定の利益を株主に還元しつつ、将来の成長のための内部留保を確保できる可能性が高くなるため、健全な水準といえるでしょう。
日本取引所グループの「2023年度決算短信集計結果」によると、東証プライム・スタンダード・グロース市場に上場する企業の配当性向は平均34.17%とされています。
松井証券 – 配当性向とは?計算式や目安、高すぎるとどうなるかを解説
配当性向が高過ぎることのリスクも指摘しています。
配当性向が高すぎる場合、企業の財務状況に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に100%を超える場合、配当金が純利益を上回り、企業の持続可能性が懸念されます。
配当性向が100%を超える場合、企業は純利益を超える配当金を支払っていることを意味します。これは、企業が業績悪化にもかかわらず、過去の配当水準を維持しようとする場合などに起こります。業績の低迷が公表されると株価の急落を招く可能性があるため、投資家の不安を和らげる目的で配当を維持するケースが少なくありません。
松井証券 – 配当性向とは?計算式や目安、高すぎるとどうなるかを解説
アステラス製薬は配当性向946%
配当性向は20~50%程度が適正で、配当性向が100%を超えるケースは「企業の持続可能性が懸念され」ることを意識して、今朝の日経新聞の記事をごらんください。
「減益でも増配」拡大 アステラスの配当は利益の9倍
稼いだ利益を最も配当に回す企業はどこか。2025年3月期の純利益に占める配当割合を示す配当性向を調べると、首位は利益の9倍の配当をするアステラス製薬だった。ジェイテクトなど、株主資本配当率(DOE)という別の基準で還元を強める企業も上位に入った。資本コストや株価を意識し「減益でも増配」という企業が増えている。首位アステラスの配当性向は946%になる。今期の連結純利益は新薬の販売計画や研究開発の見直しに伴う損失などが響き、前期比18%減の140億円と減益を見込む。それでも配当は74円と同4円増やすため配当性向が上がる。今回の配当性向はかなりの高水準だが、同社は昨年4月の期初時点に公表した計画でも約440%を想定していた。過去では24年3月期が736%、純利益が1000億円近くあった23年3月期も111%と高い。
日本経済新聞 – 「減益でも増配」拡大 アステラスの配当は利益の9倍

配当性向が946%とは、その年の最終利益をすべて株主還元に吐き出しても全然足らず、過去数年分(同じ程度の最終利益なら8年分!)の内部留保を取り崩して配当に回していることを意味します。
アステラス製薬(4503)
ヤフーファイナンスより
医薬品国内2位。開発技術起点の研究開発体制。前立腺がんが柱。遺伝子・細胞治療技術育成
配当利回り(予想):5.07%
昨年8月にすべて売却
アステラス製薬は、わたしも過去に200株持っていました。最初100株購入したものの株価が下がって含み損を抱え、いわゆるナンピンで100株買い増したものの、含み損をずっと抱えていた銘柄でした。ところが、昨年8月に株価がいったん回復して、含み損が解消したことから「ここが潮時」とばかり200株すべて売却しました。


紛れもない高配当株ではあったけど、いかんせん含み損の時期が長かったからなあ。売却できてよかったよかった…
そんなふうに思っていたので、配当性向946%の記事に驚き、売却以来ひさしぶりに株価を見てみたら、アステラス製薬の株価は昨年夏の売却後にふたたび下落に転じ、かなり低迷している様子です。


いつ減配されるかわからない、と思うのが普通だろうからなあ…
配当性向100%越えが17社
ちなみに、上述の日経記事には「25年3月期の予想配当性向の高い企業」30社の一覧が載っています。
大変な労作だと思うので、そのまま転載するのは控えますが、配当性向が100%越えの企業は17社もありました。

配当性向100%越えの銘柄は、ひとつも持ってないぞ!よかったよかった…
「日経マネー」の漫画
配当性向が過度に高い銘柄は気をつけるのは、高配当株投資の基本中の基本です。
いま発売中の「日経マネー」25年3月号にも、「攻めと守りの高配当株」という漫画仕立ての特集が載っています。まだ初級レベルの投資家「マネ男」と配当株に詳しい老人「配当仙人」の会話仕立てで構成され、「極意① 高すぎる利回りは疑え!」と出てきます。

配当仙人は「配当利回り=1株配当÷株価」の計算式から、分母(株価)が減っても利回りが上がる関係性を示して、こう説明します。
なぜこんなに配当を出すのに株価が安いのか分かるか?
それは買われない「理由」があるのじゃ例えば……この「配当」は予想に過ぎん
それが下方修正で無配になったとしたら……
マネ男が「もしそんな事になったら暴落しかねえ……!」と真っ青になると、配当仙人が「配当も減り株価も下がるダブルパンチじゃ」とたたみかけます。
そして「守りが強い配当株① 配当性向が高すぎない」というイラストとなって、
これが高い銘柄は無理して配当してるかも!
30%ぐらいなら健全じゃな!
と続きます。
高配当株は人気ですが、落とし穴もあるーーという当たり前のことを気づかせてくれる日経記事です。労作の一覧表はぜひ眺めてみてはいかがでしょうか(「日経マネー」最新号の漫画もおすすめですよ♪)
(いしばしわたる)
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