山岸凉子さんのホラー漫画「わたしの人形は良い人形」が文春文庫から再刊されました。宣伝文句が「少女漫画界のレジェンド、山岸凉子の“最恐”ホラー、令和に降臨」ーー。降臨かぁ……すごいなあ、と思いますが、これは是非読んでほしい作品です(2025.2.5)
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トラウマ級の恐怖…
「わたしの人形は良い人形」は、以前に記事にしています。
山岸さんは多くのホラー短編を編み出していますが、その中でも代表作といえる作品です。世代を超えて続く人形にまつわる怪異に恐れおののくばかりです。
わたしの手元にあるのは、2009年に潮出版社から刊行された山岸凉子スペシャルセレクションの一冊です。
手元にあるのは1巻「わたしの人形は良い人形」、2巻「汐の声」、5巻「天人唐草」ですが、どれにもホラー作品が収められています。2巻の表題作「汐の声」や、5巻の表題作「天人唐草」、1巻の「鬼来迎(きらいごう)」など、どうしてこんな怖い作品ばかり書けるのだろう…という気持ちになります。
その中でも1巻の巻頭を飾るのが「わたしの人形は良い人形」ですから、山岸ホラーの代表作であるのは間違いありません。
世代超える人形の怪異:山岸凉子「わたしの人形は良い人形」
今回、文春文庫から再刊され、お求め安くなったのですから、これを機会に多くの人に手に取ってほしい作品ですが、それは文春さんも同じ思いなのでしょう。宣伝文句が尋常ではありません。
少女漫画界のレジェンド、山岸凉子の“最恐”ホラー、令和に降臨。
山岸作品の中でも、トラウマ級の恐怖と言われる伝説的な作品がある。
それが表題作「わたしの人形は良い人形」だ。昭和21年。初子という少女が交通事故で死んだ。
葬儀では副葬品として立派な市松人形が添えられたが、
その人形は初子と一緒に焼かれないまま箪笥に仕舞われることになる。
長い時を経て、今、呪いの人形が背後から忍び寄ってくる……。
ラストの1ページが、読む者を更なる恐怖に突き落とす!「こんな恐ろしい話、ほかにない」──三宅香帆
「令和に降臨」も凄いですし「トラウマ級の恐怖」という表現も凄いですが、確かにこれを読んでから市松人形をみると「わたしの人形…」を思い浮かべて背筋がゾクッとするようになりました。
「わたしの人形は良い人形」のあらすじは、わたしの以前の記事をごらんください。

収録作「八尾比丘尼」
きょうは、わたしの手元にあって、文春文庫版「わたしの人形は良い人形」収録作のひとつ「八尾比丘尼」(やおびくに)を紹介します。
十六の時、人魚の肉を食べ
幾百年たっても若わかしく
十六歳の容顔であった八百歳の時に
空印寺境内後瀬山麓の
大巌窟に入定し
八尾比丘尼と称せられる
こんなふうに八尾比丘尼の言い伝えが巻頭に書かれた後、場面は現代の原宿に移ります。
上京して二年目
つまらない
女子高生の江崎は、父の再婚で家に居場所がなく、ひとりでアパート暮らし。加えてクラスでも浮いた存在だ。
男と服と化粧の話しかしない級友
こんなところを一人で歩いていると
もうたまんない!たまんない!
あなたは一人ぼっち?
そんな孤独と不満を抱えた江崎は、ある日、美少女から声をかけられた。
あなたは一人?
一人ぼっち?
江崎が答えないでいると、
あたしもよ
あたしもあなたと同じ
あたし探していたの
あなたのような人
そして、美少女は江崎を誘った。
ねえ 夏休み 用がないのなら
うちに遊びに来ない?
江崎は美少女に誘われて別荘でひと夏を過ごすことに…。その別荘には美少女の母と叔母がいた。美少女、母、叔母は、3姉妹と言っても通用するほど若く、驚くほど容姿端麗だったーー。
わたしたち八百歳まで生きるの
聞いたことあるでしょう
人魚の肉を食べて八百歳まで生きた話を
美少女のこの後に続くセリフーー事の真相は明かさないでおきますが、「令和に降臨」した山岸ホラーは確かに”最怖”です。
「化野の……」「千引の石」 も収録
このほかの収録作は、
家々に火が灯る日暮れ時。歩いても歩いても家に辿り着けないその訳に戦慄する「化野の……」
両親の離婚でN市のとある学校に転校した少女を襲う怪奇現象を描いた「千引の石」
ですが、わたしはどちらも未読です。

うーん、既読が2篇、未読が2篇かあ。でも、未読の短編が気になる……。やっぱり買っちゃおうかな…
(しみずのぼる)
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