今週から仕事始めという人が多いでしょう。月曜日は気鬱で、金曜日が嬉しくて…。そんなサラリーマンの日常がまた始まりました。「たかが仕事」と思いつつ「されど仕事」でもあるーー。そんな会社人生の悲喜こもごもを描いて大ヒットした韓国ドラマの名作「ミセン-未生-」を紹介します(2025.1.7)
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新入社員の奮闘と成長
妻はきのうは在宅勤務で、きょうが今年最初の出社日でした。
いやだなあ、また会社が始まっちゃうわ…
この年末年始は9連休だったから、気鬱さもひとしおのようでした。
わたしはというと、もう会社勤めから解放されているので、年末に通しで観た「ミセン-未生-」(全20話、2014年製作)を、名場面だけもう一度観なおして、至福のひとときを過ごしています。
「ミセン-未生-」のあらすじを「韓国テレビドラマコレクション」(2023年版)から紹介します。
社会人世界をリアルに描き社会現象に
プロ棋士を目指すも26歳で挫折したグレは大手商社にインターン入社を果たす。コネ入社かつ高卒資格しかないグレに上司も他のインターンも冷たい視線を送る。だが、何事にも真剣で、時に囲碁の定石を使って解決策を見出すグレに周囲の目も変わり……。新入社員たちの奮闘と成長を中心に、日々を懸命に生きるサラリーマンたちのリアルを描いた名作群像劇。原作は同名のウェブ漫画。2016年に日本でもドラマ化された。
とてもよくまとまっているあらすじですが、これはユーチューブ動画を先にみてもらいましょう。
主人公のチャン・グレの奮闘がストーリーの幹ではありますが、同期入社の3人もそれぞれ直属の上司との関係に悩まされています。
チャン・グレの直属の上司で指導役でもある課長代理のキム・ドンシクも、アフリカ勤務を断ったためにずっと代理に据え置かれ、花形の海外勤務を手にした同期の姿に寂しさを感じたり……。その上司のオ・サンシク課長はといえば、中間管理職の悩みをもろに抱えて、社内の派閥政治の荒波に翻弄される日々です。
日々を懸命に生きるサラリーマンたちのリアル
という文章を読むと、個人的には「うーん、会社ってこんなかなあ???」と思う場面もなくはないのですが(特に「そんなの、パワハラで一発アウト!」という場面…)、大ヒットしたのですから、多くの人の琴線に触れたドラマであるのは間違いないでしょう。
「俺たちはまだ弱い石だから」
ちなみに、タイトルの「未生」は韓国の囲碁用語で、碁盤上にある石が完全には生かされていない状態を指し、「死んでもいないし、生きてもいない石」のことだそうです。
先のユーチューブ動画で、オ・サンシク課長が会社の屋上でチャン・グレに向かって、
とにかく踏ん張れ
踏ん張ったものが勝つ
俺たちはまだ弱い石(ミセン)だから
と語るシーンが出てきますが、新入社員はもちろん中間管理職でも、会社組織ではまだまだ完全には生かされていない石に過ぎないことを表しています。
レジェンドに挙げられる13話?
そんな「ミセン-未生-」を年末年始を使って観直すことにしたのは、出演者たちがドラマ制作から10周年ということで集まったという記事(『ミセン』の面々が集結…カン・ソラがカン・ハヌル、ピョン・ヨハン、イム・シワン、キム・デミョンと共に明るいほほ笑み)を読んだからです。
その中に気になるくだりがありました。
先にスタジオドラゴンとCGVは、『ミセン-未生-』放映10周年に合わせて、全20話の中でもレジェンドに挙げられる13話を『ミセン:最高だったぞ』というタイトルで劇場上映を決定。今月20日から韓国国内17カ所のCGVで上映している。
エンタメコリア – 『ミセン』の面々が集結…カン・ソラがカン・ハヌル、ピョン・ヨハン、イム・シワン、キム・デミョンと共に明るいほほ笑み
え? 全20話の中でもレジェンドに挙げられる13話? どんな回だったろう?
そう思って13話を見始めると、
いやいや待て待て。これはもっと前から観直さないと良さがわからん!
となって、結局、わたし自身がいちばん好きな回ーー10話から観直して、そのまま最終話の20話までイッキ見してしまったというわけです。
わたしが「神回」と思う10話
ということで、「ミセン-未生-」の魅力をお伝えしようと、わたしが「神回」と思う10話を紹介しましょう(あらすじはNetflixから)
営業3課に異動してきたパク課長から高卒だとバカにされ、こき使われるグレ。だがグレの同期たちも同じで、3人とも上司との関係に頭を悩ませていた(9話)
女性社員にセクハラ発言をするパク課長に、「お前とは働けない」と告げるオ課長。そんな時、パクが推し進める案件の資料を見て、あることに気づく(10話)
パク課長が起案して部長や常務も裁可していた案件は、中東ヨルダンに中古車を輸出する事業だった。
しかし、オ・サンシク課長は、資料を精査して中古車を扱う中間業者の利益率が高過ぎることに不審の念を抱き、課長代理のキム・ドンシクとチャン・グレに中間業者に出向いて監査を行うよう指示する。すると、そこにはキム課長が”身内”然として座っていた……。
ドンシクらに監査権限がないことを言い募るキム課長。オ・サンシク課長は部長の了解を取り付け、正式に監査チームを中間業者のオフィスに派遣した。
慎んで軽速することなかれ
ここでチャン・グレのナレーションが重なります。
相手の流れに逆らう時が来た
敵陣の懐に潜り込むには
命を懸ける必要があるミスした側が負ける
”慎勿軽速”ーー慎んで軽速することなかれ結果は単純だ。相手の死か、僕たちの死だ
しかし、業者側は「ヨルダンの業者が私どもを指名したんです。高い利益率を求めてもいいのでは?」と反論。その説明自体は間違っていないため、監査チームも「わかりました。私どもも誤解があったようです」と言って立ち上がり、帰ろうとするーー。
どうすればいい?
確信はなくとも
打ちたい手がある
そして、チャン・グレは中間業者の人間がヨルダンの業者に韓国語で電話をしていたことを思い出す。
ヨルダンの業者には韓国人が?
電話が韓国語でした
顔色を変えるキム課長。監査チームが座り直して契約書類を見直すと、韓国名の記載はない。何度も出てくる名前は「インディラ」というヨルダン人風の名前。オ・サンシク課長がヨルダンの業者に電話して「インディラ」氏を呼び出すと、電話から聞こえてきたのは韓国語ーー。
ジェームズ…パク課長ですね
監査チームの人間が「現地人を装ったんですか」と追及すると、キム課長が割って入って「高い利益率はわたしのミスだから責任を取る」と言い出した。その一方で、「だが業者は悪くない。ビジネスは信用が命だ」と業者への追及をかわそうとする。
ある一手が……
次の手を呼ぶ彼の手の前に
我々はどんな手を指したのか彼の反応を引き出すのに
どの手が効いたのだろうかバックマージンだけの問題ではないようだ
チャン・グレはヨルダンの業者の資料を引き寄せて、そこにある人物の名を見つけた。
ジェームズ…
ICB社のジェームズというのは…
パク課長ですね
パク課長の不正は、ヨルダンの会社そのものがパク課長と中間業者が結託して設立した会社であり、利益が自分たちの懐に転がり込む仕掛けだったーー。
いかがですか。囲碁の手を読むように相手を追い詰めていくチャン・グレのかっこいいこと。わたしはこの10話がとにかくいちばん好きです。
ちなみに、上述の記事で「レジェンド」と評された13話は、パク課長が不正を働こうとしたヨルダンの中古車輸出事業をサルベージして純粋に事業として採用することをチャン・グレが提案。オ・サンシク課長が課を代表して会社役員たちの前で決死のプレゼンを行う回です。
何をしても会社は変わらない。だが…
10話に戻ります。
チャン・グレたちがパク課長の不正を暴いたことで、事業にゴーサインを出していた部長や常務が左遷を免れない事態となり、そのことを課長代理のキム・ドンシクがチャン・グレに説明する場面が出てきます。
僕たちはただの働きアリだと言われるよな
自分ひとりが何をしても会社は変わらない
だが、この仕事が今の自分だと思う
ドンシクの言葉に、チャン・グレがつぶやきます。
”たかが囲碁” ”されど囲碁”
日本でも有名な囲碁の名誉名人、趙治勲(チョ・チフン)の言葉です。
そして、この場面に仕事で苦しむ仲間たちの映像がかぶさって、チャン・グレの言葉が重なります。
なぜ囲碁を打つのか
たかが囲碁なのにでも、されど囲碁
僕の囲碁だから
僕の仕事だから
うーん、いいですね~ 「されど仕事」なんですよね!
効果的に流れる「Fly」
このシーンにかぶさって流れるのが、韓国のボノと呼ばれるイ・スンヨルの「Fly(飛んで)」です(歌詞は「WE LOVE 韓ドラ OST HIT COLLECTION」より)
「ミセン-未生-」は動画配信サービスを探せば必ず見つかります。未見の方はぜひ観てみてください。
音楽もセリフもすべてが心に沁みる名作です。
(しみずのぼる)
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