年間の実現益がどの程度になるか見通しがつく12月は「損切り」と「損出し」を恒例行事にしている投資家も多いと聞きます。わたしも今年は夫婦合わせて1000万円超の実現益が出た年なので、含み損が膨れていたインフラファンドやJ-REIT(不動産投資信託)を中心に「損切り」「損出し」を行いました(2024.12.15)
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資格不要で稼ぐなら「クラウドワークス」実現益に20.315%の税金
仕組みを簡単におさらいすると、国内株や投資信託等の売買で、購入価格よりも高い価格で売却できた場合は利益(実現益と言います)が出て、利益の20.315%が源泉徴収されます。
逆に、購入価格よりも低い価格で売却すると損が発生します。ひとつの証券会社の特定口座(源泉徴収あり)での売買は、実現損益は合算されて計算されるため、売買のたびに取り過ぎた税金分が還付されます。
確定申告をすれば、おなじ証券会社の損益は過去3年分の損益を通算してくれますし、同じ年の売買で異なる証券会社の実現損益も通算してくれます(これを損益通算と言います)
例えば、楽天証券で100万円の実現益があり、SBI証券で50万円の実現損があれば、確定申告すれば差し引き50万円の20.315%で収める税金は約10万円で済みます。楽天証券で100万円×20.315%で約20万円が源泉徴収されていますから、確定申告すると源泉徴収で取り過ぎた約10万円分が還付されます。
このように実現損益に20.315%の税金がかかるので、実現益が多い年は意図的に含み損の大きい銘柄を売却して損を確定させれば、実現損益が相殺されて収める税金を少なくできます。12月になれば、その年の売買でどの程度の実現益があるかがはっきりして、どの程度の損を確定させればよいかも目算がつくので、12月は損切りや損出しが恒例行事となるわけです。
損切りと損出しの違い
実現損を確定させる方法には「損切り」と「損出し」があります。
「損切り」は単純に売却するだけです。それで得た資金で、値上がりが期待できたり高配当だったりする他の銘柄を購入する。そのほうが大きな含み損を抱えているよりはマシだろう…という判断で行う人が多いと思います。
もうひとつの「損出し」は、売却して実現損を確定させた後、翌日以降に売却価格と同額で買い戻す方法です。
例えば、配当利回りが高くて手放したくはない銘柄があったとします。しかし、購入価格よりも相当下がって大きな含み損を抱えていた場合、その年に相当の実現益があるなら、いったん売却して実現損を確定させて損益通算で収める納税額を減らすと同時に、翌日以降に売却価格と同額で買い戻せば高配当の”果実”は引き続き得られる…ということになります。
損出しの買戻しは翌日以降に
ここで「翌日以降」と書いているのは、同じ日に買い戻すと「買い」が先にあったものとみなして、取得単価が平均化され、節税効果が失われてしまうからです。下記の記事も注意を促しています。
損出しは「同一営業日」におこなってはいけません
例えば、1,000円で買った株が100株あったとします。これを600円で売って、同じ日に600円で買い戻した場合、取得単価は800円になってしまうのです。 同じ日に、同じ銘柄を複数回売買した場合、「買い」が先にあったものとみなして、取得単価が平均化されます。これは特定口座の制度上、仕方ないのです。
株の「損出し」とは? 年末のクロス取引でお得に節税するやり方、2024年はいつまでにすればよいか解説
なお、この記事では信用クロス取引の手法も解説していますが、わたしは現物取引しか行っていないので、翌日以降に売買価格と同額で指値注文するスタイルをとっています。
源泉徴収額は夫婦計230万円
それでは、この1週間に行った「損切り」「損出し」の”成果”を確認してみましょう。
わたしの場合、大きな含み損を抱えていたのはインフラファンドとJ-REIT(不動産投資信託)でした。どれも5%を超える配当利回りばかりですが、今年1年間の下落幅は予想を超えて大きなものでした。
そのため、インフラファンドはすべて損切りし、J-REITは翌日以降に売却価格と同額で買えたら損出し、買えなかったらそのまま損切り、というルールで対応しました(ほかにも、いくつか個別銘柄で評価損が大きいものも同様の方法で売却しました)
下記が損出し・損切りを行う前です(12月8日)
赤枠部分をごらんください。わたしの実現益が614万円で、源泉徴収額が124万円。妻の実現益が522万円で、源泉徴収額が106万円です。 源泉徴収額は夫婦合計で230万円にもなっています。
損切り・損出しで約50万円節税
次が損出し・損切りを行った後です(12月12日)
わたしの実現益が497万円まで減っています。つまり、117万円の損出し・損切りを行ったことになります。その結果、源泉徴収額は101万円となり、収める税金は差し引き23万7570円分減らすことができました。
こちらは妻名義です(12月12日現在)
妻名義の実現益は394万円ですから、128万円の損出し・損切りでした。源泉徴収額は80万円。収める税金は25万9731円減らせました。
いかがですか。夫婦合わせて源泉徴収額が230万円から181万円に減りました。その結果、50万円近い金額(正確に書くと49万9731円)の節税を行うことができました。
還付金は口座明細で確認できる
損出し・損切りを行った後の還付金は(楽天証券の場合は)口座明細(精算履歴)で確認できます(マイメニューから入って「口座明細(精算履歴)」を選び、取引種類で「譲渡益税」を選択)
上がわたし名義、下が妻名義です。
どうしても引き続き保有していたい銘柄なら「損出し」の手法を使えば、引き続き配当金は同額得られます。
株主優待も同様に得られますが、長期保有優遇制度を採用している銘柄の場合は、株主番号が変わってしまうため、長期保有のメリットは失われます。
その場合は、節税メリットと長期保有で優待内容がグレードアップすることのどちらが自分にメリットが大きいか、その損得で判断すればよいでしょう。
(いしばしわたる)
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