今年も残り40日余りとなり、そろそろ来年の新NISA(成長投資枠)でどの銘柄を買おう…という話題が、わたしの周囲でもよく聞かれるようになりました。新NISAの特徴から共通する部分と、その人の置かれている状況でケース・バイ・ケースの部分とあると思いますが、まずは共通する部分を記事にまとめてみました(2024.11.18)
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最初に新NISAの仕組み・特徴のおさらいです。
NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」があり、前者は年間120万円、後者は年間240万円という投資枠があり、同時に生涯投資枠が前者は600万円、後者は1200万円の合計1800万円と設定されています。
つみたて投資枠は米国株や全世界株のインデックス型投資信託やETF(上場投資信託)をコツコツと積み立てていくスタイルが想定されており、成長投資枠は積立投資信託で枠を使ってもいいですし、配当金が発生する国内株や分配金が発生するJ-REIT(不動産投資信託)等で埋めても構いません。
20.315%の税率がかからない
つみたて投資枠と成長投資枠に共通する特徴は、(1)利益はすべて非課税、(2)ただし損益通算はできないーーの2点です。
国内株や投資信託の売却で得た利益(キャピタルゲイン)は「譲渡所得」として課税対象です。税率は20.315%で、実現益からすでに20.315%分が源泉徴収されています(特定口座=源泉徴収ありの場合)
国内株の保有で得る配当金・分配金(インカムゲイン)は「配当所得」として同じ20.215%の税率で源泉徴収されています。
これに対してNISA口座で得た実現益や配当金・分配金は非課税です。同じ銘柄の配当金でも、特定口座なら最初から20.315%分源泉徴収されているので、新NISAで保有すれば単純に約20%増しで受け取る額が増えることになります。
NISAは損益通算ができない
次に損益通算の説明です。通常の証券口座(一般口座・特定口座)の場合、確定申告をすれば、国内株や投資信託の売却で生じた損益は、3年分の損益を通算することが可能です。
例えば1年目で100万円の実現益が発生して20万円を源泉徴収されていて、2年目に100万円の損が発生した場合、損益通算することで前年源泉徴収されていた20万円が還付されます。そのような損益通算が3年分は可能というわけです。
これに対してNISA口座の場合、非課税という恩典がある代わりに、損益通算はできません。
もうひとつ、新NISAは、売却することは可能ですが、年間の枠が復活するのは翌年以降になります。例えば、成長投資枠ですでに240万円の枠いっぱい購入している人が、銘柄Aを欲しいと思って銘柄Bを売却しても、銘柄Aを買えるのは翌年1月から…となります。
NISAは長期保有が前提
このような制度設計となっているのは、NISAは基本的に長期保有が奨励されているからです。つみたて投資枠なら、インデックス型投資信託をコツコツと積み立てて、複利効果を効かせて資産を増やすことが期待されています。成長投資枠も、損益通算ができませんし、枠が復活するのは翌年以降なので、長期保有を前提にした銘柄を購入することが期待されています。
公的年金だけだと老後の暮らしに2000万円程度不足すると言われた「2000万円問題」が話題にのぼっていた時期に制度設計されたので、新NISAの生涯投資枠(1800万円)を”個人年金”のように活用してほしい…という含意が、制度設計した政府・与党関係者にあったのでしょう。
以上の新NISAの仕組み・特徴を踏まえれば、全米株や全世界株のインデックス型投資信託をコツコツと積み立てることが想定されるつみたて投資枠はもちろん、成長投資枠のほうも、長期保有が前提ーーつまり、購入したら絶対に売らないと心に決めているような銘柄から選べばよい…ということになります(若い世代の人なら、つみたて投資枠同様にインデックス型投資信託を成長投資枠でも積み立てて複利効果を狙うスタイルも適しています)
複利効果については以下の記事を参照してください。
3つの選定ポイント
「購入したら絶対に売らないと心に決めているような銘柄」という言い方は抽象的過ぎますね。具体的には、以下の3点が選定のポイントとなります。
- 配当利回りが高い高配当株である
- 増配が期待できる
- 減配リスクを避ける
1の高配当かどうかは、配当利回りで検索すれば利回りが高い順に銘柄が出てきます。 以前は配当利回り3.5%以上がひとつの基準でしたが、日経平均株価が3万円台後半が常態化して4万円台もうかがう局面まで上がっている現状では、2%台後半まで広げて銘柄探しを行うとよいように思います。
2の増配が期待できるかどうかは、累進配当株から選ぶのも一案ですし、わたしの場合は、会社四季報の業績予想で「1株益」(*)の欄をチェックするようにしています。
(*)1株益:企業の発行済み株式1株あたりの純利益を指し、英語では「Earnings Per Share(EPS)」と呼ばれる
具体的に、わたしがNISAの成長投資枠で保有する銘柄(妻名義を含む)から3社選んでみましょう。
上記の会社四季報ONLINEの赤枠部分をごらんください。三菱UFJFG(証券コード:8306)の1株益は、24年の実績値が124.7円で、25年予想が132.1円、26年予想が133.8円。東京海上HD(8766)は、24年の実績値が351.6円、25年予想が446.0円、26年予想が435.7円。伊藤忠商事(8001)は、24年の実績値が553.0円で、25年予想が627.2円、26年予想が641.2円。おおむね右肩上がりで、増配が期待できます。実際、1株益の右横の「1株配」はいずれも増配予想となっています。
累進配当株については下記記事をご参照ください。
「業績の悪いまま」排除が大切
3の減配リスクは、業績欄で減収減益の銘柄や、1株益でも下落トレンドの銘柄は避けたほうが無難です。
ちなみに、最近配信されたAERA dot.の「新NISA一生お宝級の高配当日本株30銘柄・1位の利回り5.14%「JTは外しました、念のため」」という記事で、 楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジストの窪田真之さんが推奨する高配当株を掲載しています。
「TOPIX(東証株価指数)500」採用銘柄のうち、予想配当利回りが2.5%以上の銘柄を抽出。そのうえで、窪田さんに長期保有できそうな30銘柄を選んでもらった
という内容ですが、記事中で窪田氏のコメントーー「今後も性格は悪いまま(業績も悪いまま)の株をいかに排除するかが大切」ーーを載せています。上述ポイントの1と2を意識して、3のリスクを排除するーーということで、押さえるべきポイントは一緒です。
高配当株として有名なJT(2914)を避けた理由について、窪田氏はこうコメントしています。
「ロシアでのたばこ販売比率が高く、撤退や事業没収のリスクがあるといわれます。私個人としてはそこまで心配ないと見ていますが、念のため外しました」
ロシア要因はウクライナ戦争が起きた頃から言われていることなので、窪田氏自身も「そこまで心配してない」と留保をつけていますが、3の減配リスクを避けることに関係する要素です(ちなみに、わたしはNISA口座では保有せず、特定口座で200株持っていましたが、今年初めに売却しました)
窪田氏推奨の30銘柄
具体的な30銘柄の選定理由はAERA dot.の記事をお読みいただければと思いますが、銘柄名と配当利回りは下記に転記しておきます(青の下線は新NISAで私が保有する銘柄、赤の下線は特定口座で保有する銘柄=妻名義を含む)
- 日本郵船(9101) 5.14%
- ホンダ(7267) 4.24%
- ソフトバンク(9434) 4.16%
- コマツ(6301) 4.16%
- MS&AD(8725) 4.15%
- NIPPON EXPRESS HD(9147) 4.00%
- INPEX(1605) 3.95%
- イオンFS(8570) 3.89%
- 三井住友トラストHD(8309) 3.85%
- 住友商事(8053) 3.76%
- ブリヂストン(5108) 3.73%
- 三菱HCキャピタル(8593) 3.70%
- 丸紅(8002) 3.62%
- ヒューリック(3003) 3.49%
- 積水ハウス(1928) 3.38%
- 三井住友FG(8316) 3.33%
- 東京センチュリー(8439) 3.33%
- 三菱商事(8058) 3.30%
- 中部電力(9502) 3.28%
- NTT(9432) 3.27%
- キリンHD(2503) 3.25%
- 三井物産(8031) 3.24%
- パナソニックHD(6752) 3.19%
- 三菱UFJFG(8306) 3.13%
- トヨタ自動車(7203) 3.12%
- ユー・エス・エス(4732) 3.02%
- キヤノン(7751) 2.95%
- KDDI(9433) 2.91%
- 東京海上HD(8766) 2.81%
- オリックス(8591) 2.67%
わたしが新NISA口座で保有するのは7銘柄、特定口座で保有するのは15銘柄ですが、日本郵船、ホンダ、NIPPON EXPRESS HD、中部電力、トヨダ自動車の5銘柄は、昨年暮れから今年前半に売却した銘柄(マンション購入資金の捻出が売却理由)なので、窪田氏が挙げた銘柄はほぼほぼ保有または保有していたことになります。
やはり銘柄選定における重要なポイントは、業績などをみて減配リスクを避ける点にあるとわたしも思います。
高配当株投資では、配当太郎氏の著書を紹介した以下の記事も参考にしてください。
次回は、前文で書いた「その人の置かれている状況でケース・バイ・ケースの部分とある」と記した部分と、わたしが来年の新NISA成長投資枠でどういう銘柄の購入を検討しているかについて書きたいと思います。
(いしばしわたる)
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