ミュージカル「プリティ・ウーマン」を観てきました。オリジナルの映画が有名ですから、ストーリーを忠実になぞったミュージカル版が良いのは当然なのですが、ミュージカル版は何より音楽がいいのです(2024.9.25)
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2018年初演、初来日公演
2018年にNYブロードウェイで初演のミュージカル「プリティ・ウーマン」は、東京・立川のホールで観ました。初来日公演も残すところ10月の大阪公演のみですが、日本人好みのミュージカルですから、近い将来、必ず再演されることでしょう。
オリジナルは1991年公開の映画「プリティ・ウーマン」。主役を演じたリチャード・ギアとジュリア・ロバーツのふたりにとっても出世作、代表作です。

実業家のエドワード(リチャード・ギア)は、ビバリーヒルズで偶然にヴィヴィアン(ジュリア・ロバーツ)という娼婦と出会う。“ウォール街の狼”として知られる仕事一筋のエドワードにとって、無邪気なヴィヴィアンとの出会いは新鮮で、彼女にとっても彼の住む世界は見たことのない眩しいものだった。二人は一週間だけのパートナーとしての契約を結び、一緒に暮らし始める。娼婦からトップレディへと変貌するヴィヴィアンとの生活は、エドワードの心に変化をもたらした。やがて、お互いに惹かれあうことに気付くが、同時に二人の住む世界があまりにも違いすぎることにとまどいを感じはじめるのだった…。
今回ミュージカルを観る前に、予習をかねて映画を観直し、ミュージカルのサントラ盤をずっと聴き続けました。
当初ハッピーエンドでなかった?
ミュージカル版のキャッチコピーは「愛で、人は変わることができる」というものです。
ところが、ウィキペディアによると、映画のエンディングは、当初はハッピーエンドではなかったそうです。
当初、作品にはまったく異なる結末が用意されていた。『プリティ・ウーマン』ではエドワードとビビアンはリムジンでホテルを一緒に出発するが、オリジナルの脚本では、エドワードは彼女をビバリーヒルズの街角で降ろし単身でニューヨークへ帰ることになっていたのである。J.F.ロートンが書いた最初の脚本は今よりもずっと暗くて重たいものだった。実はヒロインは身体を壊し、オリジナルストーリーでは道端で最期を迎えることになっていた。本作の脚本は、少なくとも6回は書き直されたと言われている。 制作プロセスは深刻な危機に陥ることもあった。撮影を担当していたプロダクションは資金不足で作業を中止せざるを得なくなり、ディズニーが本企画を引き受けることを申し出た。ただし、元のストーリーではなくハッピーエンドに変えることが条件だった。こうして現在の明るいストーリーが誕生した。
ウィキペディア「プリティ・ウーマン」
驚きですね。ディズニーに心から感謝です。このエンディングではじめて「愛で、人は変わることができる」ストーリーとなったのですから。映画が当初の脚本でなくてほんとによかったです。
映画のトリビュートが基調
ミュージカルのストーリーは、映画にきわめて忠実です。
映画で監督を務めたゲイリー・マーシャルがミュージカル版の脚本を担当しているので、当たり前と言えば当たり前なのでしょうが、セリフ(例えばジュリア・ロバーツに対して「似合う服はない」と追い返したブティックに、ジュリア・ロバーツが着飾って乗り込んで言い放つ有名なセリフーー「Big mistake! Big! Huge! I have to go shopping now!」)や小物(例えばラストでリチャード・ギアがジュリア・ロバーツを迎えに行く有名なシーンなら、バラと傘)までそっくりです。
「映画を愛する人たちにくすっと笑ってもらいたい」という気持ちもあったでしょうが、何よりも映画へのトリビュート(讃辞)がミュージカル版の基調にあるように思います。
音楽はブライアン・アダムズが担当
ストーリーが映画に忠実なら、動画配信サービスで映画をみれば十分…と思う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。機会があれば、ミュージカル版もぜひ観てほしいと思います。
なぜなら、ミュージカル版の最大の魅力は音楽にあるからです。
「プリティ・ウーマン」で音楽と言えば、真っ先に思い浮かぶのがロイ・オービソンの「オー・プリティ・ウーマン」です。
1964年の曲ですが、「プリティ・ウーマン」で使用されてリバイバル・ヒット。「プリティ・ウーマン」と言えば、このイントロが分かちがたく結びついています。
でも、ミュージカル版では、このイントロは出てきません。第2幕の冒頭でイントロだけ流したり、カーテン・コールでキャスト全員がそろって歌うファン・サービスがあるだけです。

ミュージカルそのものは、カナダ出身のシンガーソングライター、ブライアン・アダムズのオリジナル曲で構成されています。
ポップな曲もメロウな曲もとても印象に残るもので、さすが屈指のメロディメイカーです。
心の揺れや気持ちのひだを歌う
でも、メロディがいいというだけではないのです。
映画ではリチャード・ギアとジュリア・ロバーツの演技ーーセリフはなく表情やしぐさで表現する心の揺れや気持ちのひだの部分が、ミュージカルですから歌詞で表現できます。
例えば、「フリーダム」という曲なら、リチャード・ギア扮するエドワードの心の奥底の願望を歌っています(映画ではリチャード・ギアが黙々とピアノを弾くシーンです)
「ユー・アンド・アイ」は、ふたりでオペラ「椿姫」を観に行ったシーンで歌われます。
「ロング・ウェイ・ホーム」は、エドワードの申し出を断ってヴィヴィアンが別れを選ぶシーンで歌われます。
どの場面も、映画では心境を吐露するセリフはありません。ところが、この場面で歌われる上述の3曲は、メロウなメロディに合わせて歌詞がジーンと心の奥のほうまで沁みわたってきます。
特に今回のミュージカル公演では、何度も予習で聴いていたはずなのに、わたしは「ロング・ウェイ・ホーム」でエドワードとヴィヴィアンが繰り返し繰り返し「extraordinary」(「並外れた」「素晴らしい」の意)と歌うシーンで、目尻に涙があふれてしまいました。
ミュージカル版は驚くほど捨て曲なしですが、特にわたしが好きな上述の3曲のサンプル音源(+「ロング・ウェイ・ホーム」のユーチューブ動画)をつけておきます。
It can all be rearranged
I need freedom, sweet freedom
And I know it might sound strange
I believe that I can change
And when I look into the future
I can see another me, and I’m free
I’ve got an unfamiliar feelin’ now
And it’s slowin’ over me
I just wanted somewhere to belong
It’s amazing what could happen when you’re makin’ all good plans
But how was I to know you were right here all along?
Darling, you look beautiful tonight
I can’t remember ever seeing anything so right
Like a vision in the darkness
A sight for lonely eyes to see
You and I
I always want to feel this way
You and I
On any other day
I might have missed the moment, now I just want to stay
Together, you and I
Forever, you and I
Oh, how I wish our lives could be
Extraordinary, extraordinary
Extraordinary, extraordinary
Extraordinary, extraordinary again
‘Cause I believed in you
I believed in you
And you believed in me
And you believed in me
And it’s a Long way home
And I remember when
The way it used to be
And it’s a long way home
And I’m alone
Once, I dared to dream…
ぜひ機会があったらミュージカル版も観てみてください。映画に勝るとも劣らず心動かされること間違いなしです。
(しみずのぼる)

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