今年12月から健康保険証は新規発行されなくなります。マイナンバーカードと紐づけた「マイナ保険証」に一本化させるためですが、本当に大丈夫でしょうか。お年寄りを中心に混乱を招かないのでしょうか。不安が先に立ってしまいます(2024.9.10)
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おうちでトランポリンクリニックで渡された紙
先日、6か月に1度の眼科定期検診で、妻と一緒にかかりつけの眼科クリニックを訪れました。
このクリニックは事前予約制で、入口で診察券を機械に差し込めば、バーコード付きの受付票が発行されます。この時点では保険証の提示は不要で、視力検査と視野検査の待合室で、名前を呼ばれてスタッフの人に提示する段になって、はじめて保険証の登場となります。検査を終えると別のフロアで医師による診察で、薬の処方がなければあとは会計。会計も機械に診察券を差し込み、希望すればクレカ払いができる…という、まあまあ先進的なクリニックのひとつです。
さて、その検査前の保険証提示で、今回はじめてマイナンバーカードのことがスタッフの人の口から発せられました。下記の紙を渡されたのです。
決まりなので一応お渡ししますね。いまお手持ちの保険証はこれからも使えますが、次回は保険証と一緒にマイナンバーカードをお持ちください。
「決まりなので…」という言い方から、厚生労働省からの”お達し”でもあるのでしょうか、いろいろな医療機関で似たような出来事が起きているのだろう…と想像しました。
そこで妻とこんな会話となりました。
ねえ、私のマイナンバーカードって、保険証との連携はできてるの?
家に帰ってから確認してみるよ。カードリーダーがないとアクセスできないから…
連携の確認は「スマホアプリでできる」と政府は喧伝していますが、機種に依存していて、わたしが連携作業をした頃に使っていた機種(楽天ビッグ)は対象外でした。
連携しろ連携しろと追い立てておいて、機種で未対応のスマホアプリでどうするんだよ…
と悪態をつきながら、パソコンにカードリーダーをセットして連携作業をした苦い記憶がよみがえりました(この種のことは、妻はぜんぶ私任せなのです…)
PCもスマホも持たない90歳の母
とりあえず、くだんの眼科クリニックは注意喚起の紙を渡されただけでしたが、実はその翌日、わたしは実家の母(90歳)を病院に連れていく約束があったのです。
年齢も年齢ですから軽度認知障害(MCI)の症状があり、いわゆる「ものわすれ外来」のあるクリニックで、1か月に1度、症状の確認とビタミンB12の処方を受けているのです。
わたしの母は、パソコンも持っていませんし、スマホも持っていません。マイナ保険証のことがあるので、昨年、一緒に市役所の出張所に付き添ってマイナンバーカードだけは作らせましたが、保険証との連携なんて、わたしの母にはとても無理です。
そのため、母には
これからはマイナンバーカードを後期高齢者用の紙の保険証と一緒に持ち歩いて、病院や薬局で『マイナ保険証は?』と聞かれたら、マイナンバーカードも一緒に見せればいいからね。いままでの紙の保険証も使えるから心配いらないけど、念のためマイナンバーカードも携行しようね
と説明してから病院に同行しました。
幸い病院でも薬局でも、いままでの紙の保険証の提示だけで済みましたので、わたしの母は、とりあえず困ったことになりませんでした(猶予期間が切れる1年後はそういうわけにもいかないかもしれませんが……)
マイナ保険証で往生する高齢女性
でも、その病院で別の患者さんが”往生”しているのを目撃しました。
その70歳代くらいの女性は、マイナ保険証を使おうとしていて、暗証番号の打ち方がわからないという状態でした。受付の女性が手伝って顔認証で受付しようとしたところ、マイナンバーカードが失効していることがわかりました。受付の女性に「これは市役所の出張所で更新する必要があります」と言われ、結局、紙の保険証で受付をしていました。
その間、時間にして5分程度とは思いますが、後ろには70歳代くらいの男性がずっと受付待ちの状態でした。
いい方でしたから黙って立ったまま待っておられましたが、もし短気な怒りっぽい人だったら…と思うと、病院でも薬局でもトラブルが続出する予感しかしませんでした。
わたしの母のように「パソコンもスマホも使えない」なんて高齢者はごくごく少数派でしょう。でも、確実にいるのです。そういう人たちはどうしたらいいのでしょう。
わたしの実家は電車でいけるところですし、歩く時間を含めて1時間ちょっとですから、1か月に1度の病院同行はそれほど苦ではありません。でも、実家が遠い人も少なくありません。「父が死んで田舎に母ひとり残してるけど、飛行機で帰らないといけないから…」なんて友人もいます。そういう人たちはどうしたらいいのでしょう。
マイナ保険証によって引き起こされる混乱を、政府関係者が想像もできないのだとしたら、お粗末な限りだ…と思ってしまうのはわたしだけでしょうか。
金融機関との連携はワンストップ?
わたしと妻の話に戻りましょう。
眼科クリニックでの定期検診を終えて、その夜、パソコンにカードリーダーを差し込んでマイナポータルにアクセス。ふたりともきちんと連携していることを確認しました。
わたしは今年6月に保険証が新しいものに変わっていたのですが、マイナポータルで確認したところ、ちゃんと新しい保険証に更新されていました。
健保組合から連絡がいったのでしょうか。仕組みはわかりませんが、いちいち保険証が更新されるたびに自分で手動で手続きしないで済むのなら便利です。
もうひとつ、金融機関の連携というのもありました。わたしも妻も「みずほ銀行」で連携していましたが、こちらは「JREバンク」に設定しなおしました。
JREバンクについてはこちらの記事をごらんください
運賃4割引券貰える「JRE BANK」の口座開設を完了しました
マイナポータルの設定変更だけで、固定資産税や住民税の支払いがJREバンクに変更されるんだったら、これは便利かも…
と思いましたが、ちゃんと変更できているかどうかは次の引き落としで確認します(9月末に固定資産税、10月末に住民税の引き落としが控えています)
高齢者を中心としたアナログ世代はほんとうに大丈夫か、これは思い切り不安です。 でも、デジタル化で恩恵があるのも事実です。
わたしの場合、不動産収入もあって確定申告は税理士さんにお願いしているため、自民党総裁選で候補のひとりが「確定申告もマイナンバーカードでできるようにする」と主張しても心に響きませんが、マイナポータルで税関係の手続きもワンストップでできるようになれば便利なのは確かです。
大きな不安と(できたらいいな)の小さな期待……。そんな感想を抱いた、ごくごく私的な体験談ですが、みなさんのまわりではいかがですか。
(いしばしわたる)