ネット銀行の伸長が予感させる「経済圏」勢力図の激変

ネット銀行の伸長が予感させる「経済圏」勢力図の激変

けさの日本経済新聞にインターネット銀行の顧客数が載っていました。楽天銀行が1位ですが、2位につけたのはPayPay銀行です。ポイント経済圏の重要なピースのひとつに「ネット銀行」があるのは間違いなさそうです(2024.8.28) 

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ネット銀行は5年で2倍に

日経新聞の記事は「ネット銀、口座4000万超に倍増/楽天など6行、5年で/3メガの半分弱に迫る」(金融経済面)というもの。 

主要ネット銀6行の2024年3月期末時点の口座数を集計すると前の期比13%増の4007万口座となり、この5年間で2倍になった。3メガバンクの口座数の半分弱の規模にまで成長した。 

ネット銀行伸長の理由もこう書いています。 

グループ内外のポイント経済圏やスマートフォン決済との連携、外部企業へのシステム提供を強みに拡大しており…… 

わたしは現在、 

  • 楽天銀行 
  • JREバンク 
  • みずほ銀行 
  • 三井住友Olive 

に銀行口座を持っています。 メーンは楽天銀行、サブはJREバンク。みずほ銀行は税関係の引き落としだけ、Oliveは(後述しますが)ポイ活目当ての資金還流にしか使っていないので、実質は楽天銀行とJREバンクに集約している状態です。

以前は、会社の給与振込口座だったみずほ銀行がメーン口座でした。しかし、楽天証券で資産運用を始めた6年前から、同時に開設した楽天銀行に移せる引き落とし関係をできるだけ寄せた結果、(国税庁や自治体での手続きが面倒で残った)確定申告の支払い・還付、固定資産税と住民税の引き落としだけが残った状態です。 

そもそも、みずほ銀行の店舗に出向いたのは今年に入って一度だけです。しかも、それは住宅ローン完済の手続きが理由でした。ATMを使うこともなく、きっとこれからもないでしょう。 

店舗型銀行に縛られているのは年輩者やアナログな人だけで、わたしのようなデジタルネイティブとは言えない世代でも、ネット銀行のほうが使い勝手がいいことに気づいた人は増えていると想像します。

ましてや若い世代になれば、その傾向に拍車がかかるのは当然でしょうから、ますますネット銀行が伸びていくのは間違いないでしょう。 

楽天銀1位、PayPay銀2位

けさの日経記事が参考になったのは、各ネット銀行の口座数が一覧になっていたことです。 

店舗型を含めて一覧を書き写すと、こうなります(単位は万口座。ゴシックがネット銀行) 

  1. 三菱UFJ 3800 
  2. 三井住友 2900 
  3. みずほ 2200 
  4. 楽天 1523 
  5. PayPay 789 
  6. 住信SBI 726 
  7. auじぶん 597 
  8. ソニー 193 
  9. 大和ネクスト 178 

伸長が止まらない理由

企業の給与振込口座や公的機関(例えば子供の学校)の引き落としなどは店舗型銀行が依然として使われるでしょうが、個人利用ではネット銀行の勢いはとまらないでしょう。 

そのように考える理由のひとつ目は、政府が掲げる「貯蓄から投資へ」という政策誘導のもと、証券口座との連携がますます重要になってくると考えるからです。 

新NISAがスタートし、NISA口座の開設数のツートップが楽天証券SBI証券であることを考えれば、証券口座と紐づけしやすいネット銀行が伸びることは容易に想像がつきます。 

理由のふたつ目は、「ポイント経済圏」という言葉がすでに人口に膾炙し、誰もがポイントを意識した消費行動になっていく流れは不可逆的だろうと思うからです。 

ポイントを意識する人は、裏返しで手数料も意識しています。自分の口座に振り込むのでも手数料がかかるような店舗型銀行は、ポイント経済圏を意識する人からは忌避されるのは当然です。 

PayPay証券も急伸著しい

日経記事をみて個人的に目をみはったのはPayPay銀行が2位だったことです。PayPay証券の伸びも著しく、2024年6月末時点の口座数は117万口座を突破。ネット証券で4位につけています。 

昨年秋の時点で「5大ネット証券」は、SBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、松井証券の5社を指し、PayPay証券は一覧表にも載せてもらえない枠外の扱いでした。週刊東洋経済の新NISA特集を取り上げた記事から再掲しましょう。 

「5大ネット証券を徹底比較する」という記事では、クレカ積立を中心に書かれていました。 5大ネット証券の一覧比較表のなかで、注目ポイントが赤くラインマーカーがついているのですが、売買手数料が無料になる部分はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、auカブコム証券、松井証券のいずれにもついていました。SBI証券が先陣を切った手数料無料競争を、他の証券会社も軒並み追随した形です。  

他方、クレカ積立では、月額積立上限額では楽天証券の「10万円」に、還元額ではSBI証券のプラチナプリファードの「5.0%」にそれぞれラインマーカーがついていました。このあたりも今後サービス競争が起きてきそうな気配がします。  

週刊東洋経済「新NISA革命」を読む 

この特集から1年もたたないのに、PayPAY証券の口座数は松井証券とauカブコム証券を抜き去り、3位のマネックス証券も抜き去る射程圏内に入れてきています。 

下記の記事でPayPay証券の番所健児社長が「(PayPay証券が)200万口座とか300万口座の証券会社になるのは時間の問題だと思っています。まずは2024年も昨年と同じ“倍増”を狙っています」と語っています。この伸長ぶりからすると、ほんとうに実現させるのではないかと思います。 

1月にスタートした新NISAをきっかけに投資をはじめる人が急増している。2024年3月末時点のNISA口座数は2,323万口座。昨年3月末の1,874万から約4…
www.watch.impress.co.jp

PayPayがトップの強み

私の娘2人は、下の娘が20歳になった時、それぞれ楽天証券で旧NISA口座を開設させ、併せて楽天銀行楽天カードをもたせました。ですから、キャッシュレス決済も楽天ペイをメーンで使っていますが、会社の同僚や友人はみなPayPayユーザーだそうです。 

我が家の娘たちは(親のすすめで)入口は楽天証券でしたが、そうでなければ、若者のいちばん使う決済方法はおそらくPayPayです。

PayPayの日常の使用から、いずれ資産運用に関心を持てば、PayPay証券にNISA口座を開設するのが自然でしょうし、企業側もそこに付加価値(ポイント付与)をつけるでしょう。さらにそこからPayPay銀行やPayPayカードにつなげる施策(ポイント付与)を打つ……。そうやってPayPay経済圏に取り込むのは容易に想像がつくところです。 

PayPayがキャッシュレス決済でトップの座にあることが、証券口座でPayPay証券がすでにネット証券で4位に急躍進した理由であり、ネット銀行で2位という高位置につけている理由と考えて間違いないでしょう。 

目をみはる勢力図の激変

それにしても、すごい勢力図の激変です。いずれ楽天経済圏を”追走”する一番手は、PayPay経済圏となるのはほぼ確実ではないでしょうか。 

最も話題にのぼることが多いVポイント経済圏は、ネット証券最大手のSBI証券と組んだのはきわめて正しくて、Oliveも下記記事によると口座開設数は2024年7月時点で300万口座を突破したそうです。 

三井住友銀行の「Olive」は、300万件のアカウント開設を達成。付帯サービスやキャンペーンが充実し、旅行予約サービスやマネーフォワードとの連携も進行中です。
manetatsu.com

上述のネット銀行の口座数にあてはめると、わずか1年でソニー銀行(193万口座)や大和ネクスト銀行(178万口座)を抜いて、auじぶん銀行(597万口座)に次ぐポジションに着けたわけですから、さすがというしかありません。 

ただ、以前の記事で書いたとおり、キャッシュレス決済がよくわかりません。VISAタッチ決済に集約するのか、それともアプリまで作ったVポイントPayにするのか。もし後者なら、PayPayはもちろん楽天ペイにも追いつくのは至難の業でしょう。 

Oliveは残したが、住信SBIは解約

わたしの銀行口座の話に戻ります。 

わたしはSBI証券の証券口座は維持するつもりのため、SBI証券と相性のよいOliveは残しました。しかし、SBI証券の開設に合わせて口座を開設した住信SBIネット銀行は「口座を維持するだけのメリットが乏しい」と判断して今月解約しました。 

残すことにしたOliveにしても、口座残高はいつも3万円です。月初めに楽天銀行から3万円を入金して、月末に楽天銀行あてに3万円を出金するという、ポイント(月200ポイント)目当ての資金還流だけに使っています。 

最初の気づき(ヒント)を教えます

資金還流の仕組みは下記記事をごらんください
自分の預金を還流させるだけ:究極の「ポイ活」教えます

たった月200ポイントのために…とは思いますが、それでも100ポイントからSBI証券で投資信託をスポット購入すればよいので、ポイントの使い道として無駄にはなりません(住信SBIネット銀行を解約したのは、貯まったポイントの使い先がなかったためです) 

NTTはどう動くか話題に

こうやって経済圏争いを眺めると、NTTdポイント経済圏拡大のため、唯一欠落しているピースーー銀行をどうするつもりかに注目が集まるのは当然です。 

会員にならないと全文は読めませんが、FACTA ONLINEが「NTTドコモ/異色の前田新社長が狙う「銀行進出」」という記事でいろいろと”推理”しています。 

ひとつの可能性は三菱UFJ銀行との連携による新銀行設立です。 

素直に考えれば、既に「dスマートバンク」で提携する三菱UFJと合弁で新銀行を設立するのが早道と思われる。
(略)
仮にNTTドコモと三菱UFJの合弁新銀行が誕生したら、KDDIだけでなく、みずほと関係が深い楽天や、SBIと連携するSMBCのOliveなどを揺るがす大きな地殻変動になる。

もうひとつは既存銀行の買収です。 

「とにかく時間のかかる新銀行設立を避け、既存銀行の買収に踏み切る場合は、真っ先に名前があがるのはふくおかFG傘下の「みんなの銀行」だ。
(略)
サプライズとしてはSBIグループの出資比率が34.19%に低下し、グループ内の中核銀行の座をSBI新生銀行に譲りつつある「住信SBIネット銀行が狙い目」(ネット証券幹部)との指摘もある。

6月にNTTドコモの新社長に就任した前田義晃氏(54)は、リクルート出身で2000年にNTTドコモ入社後も非通...
facta.co.jp

たかがポイ活?されどポイ活

ポイント経済圏争いについては、「たかがポイ活」と低く見る人はいまだに少なくないと思います。

でも、日本を代表する巨大企業を巻き込んだ地殻変動を惹き起こす可能性を考えれば、間違いなく「されどポイ活」だと思うのですが、いかがですか。 

(いしばしわたる) 

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