ブラックマンデー越えの下落でも「一喜一憂しない」でほしい

ブラックマンデー越えの下落でも「一喜一憂しない」でほしい

日経平均株価は先週金曜に続いて大幅な下落幅を記録し、1987年のブラックマンデーの下げ幅を超える前週末比4451円(12%)安の3万1458円。今年1月の新NISAスタートから続いた上昇をすべて吐き出した格好です。新NISAを機に投資を始めた人のショックはいかばかりかと思います(2024.8.5) 

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劇場で「火事だ」と叫んだ光景

わたしは先週金曜に「含み益の下落は「一喜一憂しない」が正解」の記事を書き、投資仲間とは「こういう時は『一喜一憂しない』だよね」と声を掛け合いました。 

ニューヨーク市場が続落したことやインテル株の急落もあって、週明け月曜日も相当な下落になるだろうと予想しあっていました。 でも、ここまでの下げっぷりは想像を超えています。株価急落を報じる日本経済新聞の記事に、こんなくだりが出てきます。 

満席の劇場で誰かが「火事だ」と叫んだ時のような光景だ。「市場参加者の全てが一気にマーケットから資金を退避させようとして、売りが売りを呼んでいる」。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは5日午前の急落をみて、こう指摘する。 

日経平均株価4451円安 相場急変動で「全員投げ売り」 

言い得て妙ですね。パニック売りということでしょう。 

2日で2000万円以上の消失

わたしも含み益は大幅に下がりました。先週金曜(8月2日)の終値時点で1億0985万円だったのが、8月5日終値で9606万円。1379万円も含み益が吹き飛びました(画面は「配当管理」アプリ) 

8月2日の総資産額は1億0985万円
8月5日の総資産額は9606万円

先週金曜に書いた「含み益の下落は「一喜一憂しない」が正解」に載せた8月1日終値の時価総額が1億1685万円ですから、この2日間で2079万円の含み益を失ったことになります。 

でも、年間配当額は逆に増えています。 

8月2日の年間配当額は387万円
8月5日の年間配当額は390万円

銘柄の増減はないので、どこかが増配したからと思いますが、承知していません(まさに「ほったらかし投資」ですから……) 

新NISA熱が一気に冷める?!

この週末、同じような年頃で資産運用をしている知人と連絡をとりました。記事を読んだAさんは昨晩、 

それでも(投資初心者は)狼狽売りをしてしまうのですよね。新NISA熱も一気に冷めてしまうかも。結局、古参組が安く仕入れて生き残るのでしょうか… 

という感想をくれました。きょうは、X(旧ツイッター)上で 

  • 「新NISAのオルカン損切りします」 
  • 「私も投資信託を全額売りました。新NISAに手を出すべきじゃなかった」 

というツイートがあることも教えてくれました。 

新NISAを機に資産運用を始めた人は、これで「(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」になったら、ほんとうに不幸なことだと思います。でも、Aさんの予想が的中して「羹に懲りて」しまった人が、少なからずいるみたいです。 

下落の耐性あって幸運だった

別の知人ーーBさんも、新NISAの成長投資枠で購入した国内株は評価益がすべて吹き飛び、含み損になってしまったそうです。 

ただ、Bさんが国内株の現物買いを始めた22年秋は日経平均株価が2万7000円台だったそうです。いったん2万6000円台にへこんだ時に評価損を出して「やっぱり銀行預金のほうが安全だったか!」と悩んだそうですが、すぐに株価が回復して23年から基本的に右肩上がりだったため、 

下がる時の耐性が22年秋にできていたのが幸いしたかも。新NISAから始めていたら、ちょっと心が折れたかもと思うと、自分は運がよかった… 

と言っていました。 

”怒り”ではなく、心に”碇”を

わたしも同じ時期、含み損が200万円超あったので、この気持ちはよくわかります。 

先日の日経平均株価が4万2000円台を突破した時は含み益だけで2500万円以上になりました。 

でも、いちばんへこんだ時の含み損をおぼえているので、「含み益はあぶく銭みたいなもの」というふうに気持ちを引き締める”心の碇(いかり)”のようなものがあります。 

新NISAについて”怒り”をぶつけるツイートもSNS上であふれているようですが、今回の下落の痛みを覚えておけば、また上昇機運になった時でも気持ちを静める”心の碇”にきっとなることでしょう。 

おやじギャグみたいなことを言いますけど、怒りではなく、碇にしてほしいーー。心からそう思います。 

新NISAの仕組みを理解して

新NISAは、非課税のかわりに損益通算ができないことや、いったん売却した枠が復活するのは翌年になるなど、仕組み的にも「長期保有」に誘導する設計になっています。

ですから、成長が期待できる高配当銘柄を購入するのに適した仕組みであり、その点からも「損したから売る」という対応は誤りだと思います。 

楽天マガジンで読んだ「AERA Money」24年春夏号に、新NISAの制度設計に関与した越智隆雄氏(自民党金融調査会幹事長)のインタビューが載っています。

非課税は政府にとって財源が減るのでは…という質問に、越智氏はこう答えています。 

「預金として眠っていたお金が投資に回るわけですよね。預金利息から約20%が源泉徴収され、税収になりますが、ご存じの超低金利。実額としては多くありません。その程度の税収が消えたところで、財政への打撃は限られています。一方、預金が投資に回ると……。日本株の話からいくと、企業にお金が入って企業が儲かれば、法人税が増えます。投資したお金が増えれば、将来的には個人消費も増えます。投信などを通じて外国株に回ったお金も、一生、外国に行きっぱなしではありません。国は長期目線で考えています」 

新NISAで資産運用をはじめた人も、ぜひ長期目線を持ってほしいと思います。

 越智氏はこうも言います。

「昭和の新入社員は必ず生命保険に入ったものです。そんな感覚で、NISAを通してのつみたて投資が国民のスタンダードになってほしい」 

わたしも同感です。旧NISAと比べて格段に使いやすくなった新NISAは、岸田政権の唯一の善政と言っていいでしょう。ぜひ、今回の急落で心が折れたりしないでほしいものだと思います。 

わたしのNISAの現状は

最後に、いい時ばかりの数字を載せるのはフェアではないので、わたしの新NISAの数字を載せておきます。 

これまで記事で載せたもので一番含み益が膨らんだのは、6月29日の107万3387円(37.79%)でした。 

では、ブラックマンデー越えの下落を経た数字はいくらでしょうか。 

8月5日のNISA画面

まだプラスなのはマシなほうでしょう。 

でも、繰り返しで恐縮ですが、含み益の上下動は「一喜一憂しない」ことです。 

(いしばしわたる)