ビートルズのことを何度も書いたため、少しセンチメントな気持ちになりました。そこでひとつ質問です。あなたが子どもの時、何度も聴いた音楽(レコード/CD)や繰り返し読んだ本は、いまも手元にありますか?(2023.11.24)
初シングルは「ヘイ・ジュード」
わたしの場合は、悲しいかな、ほとんど手元に残っていません。親が転勤族だったため、小学生の頃あんなに夢中になったレコードも本も、散逸してしまいました。とても残念です。
親にせがんではじめて買ってもらったビートルズのシングル・レコードは「ヘイ・ジュード」でした。小学4年生、9歳の時です。
高校生のお兄さんがいる同級生から、クラスの男子児童のあいだにビートルズやサイモン&ガーファンクルの人気が広がり、みんなで夢中になりました。でも、その年(1970年)にビートルズもS&Gも解散。みんなで「間に合わなかった!」とくやしがったものです。
中学生になってお小遣いがアップしたので、LPも買えるようになりました。はじめて買ったビートルズのLPは「オールディーズ」。今も公式にはCDになっていない珍しいレコードでした。
漁った海賊盤も一部散逸
高校生になって新宿やお茶の水に足を伸ばして海賊盤を漁るようになりました。

その当時はもうビートルズは”卒業”していましたが、その頃に買った「トゥモロー・ネバー・ノウズ」という海賊盤のレコードも散逸した1枚です(不思議なことにアップルミュージックなどで視聴できます)

「光る雪の恐怖」も散逸
もっと悲惨なのが本のほうで、小学生の頃の本は、1冊を除いて、すべて散逸しました。
小学2~3年生のころ、偕成社や岩崎書店の出版していた児童向けのSFを、親にせがんでよく買ってもらいました。いちばん好きだったのは「光る雪の恐怖」というSFでしたが、これらもすべて失われてしまいました。

1冊だけ残った思い出の児童書
「1冊を除いて」と書いたのは、きっと自分にも思い出深い本だったからでしょう。ちょっと気恥ずかしいのですが、トーベ・ヤンソンの「ムーミンパパの思い出」(講談社)です。
小学4年生、9歳の時に父親が買ってきた本です。いつも自分でお小遣いを手に本屋に走る日々でしたから、父親がわざわざ買ってきてプレゼントしてくれた本というのは、自分の記憶するかぎり、この1冊だけです。
それなのに、「なんで2巻なのさ」「1巻は売り切れでなかったんだよ」「1巻を読まないと、読めないじゃないか」「だったら読むな!」と口げんかしてしまい、それでも読んでみたらものすごくおもしろくて…という思い出深い本です。
「ムーミンパパの思い出」の奥付をみると、昭和45年3月10日の第4刷とあります。
映画「TOVE」のパンフレットをみると、
1969年 日本でTVアニメ「ムーミン」の放送が開始
とあるので、テレビに夢中になり、原作に夢中になり……という小学生でしたが、そんな思い出深いムーミンも、手元に残ったのは「ムーミンパパの思い出」だけ。でも、亡き父の思い出深い1冊が残っただけでも幸運だったと思います。

ひさしぶりに手元でひもとくと、翻訳を手掛けた小野寺百合子さんは巻末の解説でこう書いていました。
ヤンソンさんは、ムーミンパパの出会ういろいろの冒険を、おもしろくたのしく書いていますけれども、その中には人生のふかい意味をふくませているのです。でも、小さいみなさんは、それはそんなに気にしなくていいんですよ。おもしろいと思って読めばそれでいいのです。ただ、すこしたってから、またもういちどはじめから読んでみてください。まえには気のつかなかったなにかがわかるかもしれませんよ。そして三度めには、またもっとべつのことがわかるでしょうよ。
父を思い出しながら、また読んでみようと思います。
(しみずのぼる)
【追記】本文と関係ありませんが、映画「TOVE」と、底流にあるテーマが同じだと思う「パトリシア・ハイスミスに恋して」の予告編をつけておきます。後者はいま上映中ですし、前者も動画配信サービスで観ることができます。
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