きょうは、最近何度か記事で言及している「高配当」株に興味がある方なら、わたしは必読の書だと思っている本を紹介します。今年2月に出版され、発売から3か月で5万部も売れたという配当太郎氏の「年間100万円の配当金が入ってくる最高の株式投資」(クロスメディア・パブリッシング刊)です。新NISAの成長投資枠で高配当株を買いたいと思っている方に強くお勧めしたい本です(2023.10.28)
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配当氏はSNSでも発信
配当太郎氏はX(旧Twitter)のフォロワー数が12万人超という方で、SNSでも発信されていますが、SNSの文字数ではどうしても情報が表面的になりがちです。体系的に高配当株について知りたい場合、書籍に勝る情報ツールはないようにわたしは思っています。
配当氏の「年間100万円の…」については、わたしも一度記事で言及したことがあります(「成長投資枠では高配当株を買おう」)
でも、24年1月スタートの新NISAに向けて、いよいよ高配当株への関心が高まっているように思い、そうすると配当氏の本をきちんと紹介したほうがいいのではないか?と思い改めました。
そこで今回もう一度読み直して、ここに注目してほしいと思う点をピックアップして紹介します。

配当株投資 6つの魅力
まず、配当氏が使っているのは「配当株投資」という表現で、「株を保有していることで、その企業が利益の中から株主に分配する「配当金」によって利益を得る……という投資法」と説明。そのうえで「配当株投資には、大きく分けて6つの魅力がある」としています。その6つとは、
- 企業が利益を上げ続ければ、半永久的に配当金が得られる
- 企業の利益が上がると、配当金も増える
- 株価や市場の動向に影響されない
- 給料以外に安定した収入を確保できる
- 配当金は自由に活用することが可能
- 配当金は家族や子孫に引き継ぐことができる
というものです。
リスクは途中でやめる
また、「配当株投資の恩恵を受け続けていくため」には大事な4つのポイントがあるとして、
- 株価の動向に左右されず、できるだけ早く始める
- 長期的な視点を持って、淡々と株数を増やしていく
- 1つの企業に集中せず、分散して株を保有する
- 自分の目標に届くまで、中途半端にやめない
の4つを挙げています。「配当株投資の一番のリスクは、途中でやめてしまうこと」とも強調しています。
わたしもまったく同感です。次のようなくだりもあって、思わず「その通り!」と声をあげてしまいました。
自分が持っている株が上がっていても、その「含み益」(買った時よりも値上がりして、売却すれば利益が出る状態)は、単なる「ぬか喜び」に過ぎません。
逆に、株価が下がって「含み損」(買った時よりも値下がりして、売却すると損をする状態)が出たとしても、それは一過性の「杞憂」でしかないのです。
配当金を積み上げていって、投資した元本(収益を生み出す元になるお金)を回収してしまえば、まさに「金のなる木」のようなものです。
株式投資の世界では、これを「恩株」(投資元本を回収済みの株)と呼びますが、元本を回収して、あとはその恩恵を受け続けるだけ……の株を、わざわざ手放す必要はありませんし、そのつもりもないのです。
わたしはまだ投資をはじめて5年程度の初心者ですから「恩株」はひとつもありませんが、含み益は「ぬか喜び」というのは、とてもよくわかります。
含み益は「ぬか喜び」
以前の記事で紹介したオリエンタルランド株は、コロナ禍で購入したため、その後の値上がりで数百万円規模の「含み益」になっています。しかし、売る気はまったくないので、そうすると「数百万円も得したぞ」というのは、確かに意味のないことです。
ある意味、自分の持ち家の地価が上がっても、売る気がなければ関係ないのと同じです。逆に地価が下がっても同じです。住み続けるなら地価の上下はどうでもいいことです。
わたしはまだ人間が練れてないので、そうはいっても株価で一喜一憂はしますが、それでも、いちばん重要視しているのは配当金の多寡と思っているので、配当氏のこのくだりは思わず首肯してしまいました。
本書は、このように資産運用の考え方や心構えも出てきます。わたしが「ぜひ読んでほしい」と推奨する理由のひとつです。
高配当株の危うさも指摘
「配当株投資=高配当株を買う」という意識は捨てるべきだーーというくだりも紹介しましょう。
すでに配当株投資を始めている人の中には「配当株投資というのは、要するに高配当株を買えばいいのだろう」と決めつけている人が意外に多くいるようです。
「Yahoo!ファイナンス」などにアップされている配当利回りのデータを見て、その上位から順番に買っていくという人も決して少なくないはずです。
それを全否定するつもりはありませんが、そのアプローチでは、なかなかいい結果が得られないのではないかと思っています。
上手く成長が続いてくれれば何の問題もありませんが、その時点でいくら高配当であっても、それがマックスの状態で、その後は減配するだけということがあります。
減配になれば株価も下がりますから、二重のダメージを受けることになるのです。
わたしも配当利回りに惹かれて購入し、その後に減配された銘柄をいくつか持っているので、くやしい思いで「その通り…」と思いながら読みました。
大型株推奨 4つの基準
では、どのように銘柄選びをしたらよいかということで、配当氏は、最初に買うのは「大型株」がよいと勧めています。
配当株投資で着実に成果を手に入れていくためには、早い段階でしっかりとした「地盤」を築いておくことが大切です。
その地盤の基礎となるのが、これまでお伝えしてきたような大型株です。
(略)
ここで大型株を選ぶ際の基準を整理しておきます。
【基準①】「参入障壁」が高い業種から選ぶ
【基準②】業界の第1位と第2位の企業を選ぶ
【基準③】「3割」以上のシェアを持つ企業を選ぶ
【基準④】「ストック型ビジネス」の企業を選ぶ
ちなみに、「大型株」とは、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄のうち、時価総額と流動性が高い上位100銘柄のことです。大型株に次いで時価総額と流動性が高い上位400銘柄が「中型株」、それ以外が「小型株」です。
配当氏が挙げる4つの基準をもう少しくわしく紹介すると、
「参入障壁」が高い業種は「銀行・金融」「商社」「保険」「通信・キャリア」で、業界1位と2位なら、「銀行」なら三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループ、「商社」なら三菱商事と伊藤忠商事……という具合です。
「ストック型ビジネス」とは、一度契約したら、その契約が終わるまでは継続して対価が得られるタイプのビジネスのことで、「銀行・金融」「保険」「通信・キャリア」がまさに該当します。
配当氏推奨「15銘柄」
以上のような基準から、配当氏は最終章で「注目15銘柄」を具体的に挙げて、注目する理由を具体的に記しています。
以前の記事では掲載を控えましたが、ネットを見れば載っていることでもありますので、銘柄と現在の配当利回りを一覧にしておきます(銘柄名の後ろの数字は証券コード、配当利回りは10月28日現在の予想配当利回り。トヨタ自動車のみ2023年3月期の実績値)
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) 3.27%
- 三井住友フィナンシャルグループ(8316) 3.42%
- 三菱商事(8058) 2.84%
- 伊藤忠商事(8001) 2.95%
- 東京海上ホールディングス(8766) 3.61%
- NTT(9432) 2.85%
- KDDI(9433) 3.13%
- ソフトバンク(9434) 5.08%
- トヨタ自動車(7203) 2.97%
- ENEOSホールディングス(5020) 3.95%
- オリックス(8591) 3.45%
- キヤノン(7751) 4.04%
- JT(1914) 5.39%
- 大和ハウス工業(1925) 3.31%
- 積水ハウス(1928) 4.08%
推奨理由もとても納得のいく記述ですが、これは本書をぜひ購入してお確かめください。
(いしばしわたる)