きょうは貸株サービスについて書きます。前回の記事(新NISAでお勧めの優待銘柄「10選」)で、長期保有を優遇する銘柄は「貸株をしてはいけない」と書いたところ、案の定、知人の中に「貸株していた!」というケースがあったからです。貸株サービスはやったほうがいいのですが、税処理など面倒な部分もあるので、今回は貸株サービスに絞ってメリットと注意点をお教えします(2023.9.8)
〈PR〉
登録は簡単、3ステップのみ!無料会員登録はこちら貸株サービスとは
まず、貸株サービスについては、前回記事の該当部分を再掲します。
貸株サービスとは、投資家が、保有している株券等を証券会社に貸し出すことで、証券会社からこれに見合う貸株金利を受け取ることができるサービスです。
証券会社は、主に信用取引で株を空売りしたい投資家に借りた貸株を貸し出します。借りた側は「貸株料」を支払い、それが証券会社を通じて貸株をした投資家に支払われます。
引用:新NISAでお勧めの優待銘柄「10選」
サービス内容は以上のとおりです。国内株は権利確定のタイミングで配当金の効力が発生するので、それ以外の期間は「保有しているだけ」という状態です。
その期間、証券会社に貸株として貸し出せば、貸株金利が支払われるわけですから、貸株サービスはやったほうがいいに決まっています。
塵も積もれば山となる
ほとんどの銘柄の貸株金利は0・1%ですが、それでも、保有銘柄が増えてくれば、結構バカにできない金額になってきます。
たとえば我が家の場合、わたしと妻名義の貸株によって、8月の貸株金利分として6878円が証券口座に入金されました。月によって前後しますが、1か月でこの金額なら1年で8万円超の金額になります。まさに「塵も積もれば山となる」です。
ただ、貸株サービスは、大きく2つの注意点があります。各証券会社とも注意点を意識してサービスを用意しているので、楽天証券のケースで説明しましょう。
3つのコースの違い
楽天証券では「金利優先」「株主優待優先」「株主優待・予想有配優先」の3つのコースを用意してあります。
受け取り額が一番大きくなるのは「金利優先」です。金利優先のコースを選ぶと「権利確定日は貸株金利は通常の5倍になる」と書いてあります。0・1%がその期間だけは0・5%になる、ということです。
しかし、その次に配当金は「配当金相当額」として支払うと書いてあります。2つ目の「株主優待優先」コースにも、株主優待のない銘柄の分は配当金相当額で支払う、とあります。
この配当金相当額が第1の注意点です。
配当金相当額は雑所得
通常、配当金については、20・315%の税率で源泉徴収されます。そのため、原則として確定申告は不要です。
ところが、配当金相当額は税法上「雑所得」として処理されます。20万円以上の雑所得がある場合は確定申告しなければいけません。
しかも、雑所得は総合課税です。給与所得などと合算して税率が決まるため、金額によって所得税率が跳ね上がります。
例えば、一般的なサラリーマンなら所得税の税率はこのあたりでしょう(控除額は省略)
- 330万円~694万9千円 ⇒ 20%
- 695万円~899万9千円 ⇒ 23%
- 900万円~1799万9千円 ⇒ 33%
給与所得が600万円の人なら、所得税率は20%のゾーンです。
その人が国内株を保有していて、配当金が100万円あったとしましょう。
配当金として受け取れば、すでに20・315%の税率で源泉徴収されているので、所得税率は20%のままです。
ところが貸株サービスを利用して配当金相当額で受け取ると、600万円の給与所得+100万円の雑所得という計算から所得税率は23%のゾーンになります。
給与所得が800万円の人なら、配当金なら所得税率は23%、配当金相当額なら33%となってしまうのです。
ですから、わたしの場合、貸株サービスは利用していますが、すべて「株主優待・予想有配優先」にしています。雑所得で税率が上がるのを避けるためです。
長期保有の効力失う
第2の注意点が、前回の記事で書いた、長期保有を優遇する制度を採用している銘柄は「貸株をしてはいけない」という点です。
これは各証券会社とも注意喚起しています。例えば、auカブコム証券のページにはこう書いてあります。
株を長期にわたって保有している場合、特別な優待を受けられることがあります。企業によっては優待の金額が増えたり、特別な優待品が追加されて特典をもらえたりするケースもあるでしょう。この株の保有期間は基本的に、「株主番号が変わらない限り」継続されます。
(略)
貸株サービスを利用した場合も同様に、株主番号が変更されるおそれがあります。これは、貸株サービスによって株の名義が証券会社に移転し、名義が変わった状態で株主名簿の更新タイミングを迎えてしまうことが主な要因です。
参考URL:https://kabu.com/kabuyomu/howto/406.html
前回記事で紹介したINPEX(証券コード:1605)の場合、400株保有すると配当金のほかに1000円分のクオカードが送られてきます。2年目は2000円のクオカード、3年目以降は3000円のクオカードがもらえます。
ところが、楽天証券の「金利優先」コースなら、クオカードはもらえず、配当金に代わって「配当金相当額」を受け取るだけです。
「株主優待優先」と「株主優待・予想有配優先」も、配当金と1000円分のクオカードはもらえますが、2年目以降のクオカードの額面は1000円のままです。
長期保有優遇の銘柄は「貸株をしてはいけない」ーー理解できましたでしょうか。
しかし、この2つの注意点をきちんと意識してさえおけば、貸株サービスは有益です。ぜひ利用するとよいでしょう。
(いしばしわたる)