きょうは映画「はじまりのうた」(原題:Begin Again)を紹介します。監督はジョン・カーニー。前作の「ONCE ダブリンの街角で」(原題:Once)も優れた音楽映画でしたが、それを上回る音楽映画です。DVDのパッケージのキャッチコピーのとおり、「凹んだ心は、(音楽で)いつか凸らむ」ことを実感させてくれます(2023.8.28)
【追記】YouTubeの公式(認証済み)チャンネルに関連動画がありましたので加筆修正しました(2024.5.5)
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「ONCE」監督の2作目
正直に打ち明けると、わたしが最初に見たのは「ONCE」のほうで、そこに収められている「Falling Slowly」や「When Your Mind’s Made Up」といった曲がすごくよかったので知人に勧めたら「『はじまりのうた』のほうがもっといいよ」と教えられました。確かにそうでした(でも「ONCE」もいいです)
監督のジョン・カーニーは、アイルランド出身。自身が元ロックバンドでベースを担当していて、そのときのバンド仲間を主役に抜擢して2006年に「ONCE」を制作しました。

アメリカでは当初限定2館のみの上映でしたが、口コミで評判になり、挿入歌の「Falling Slowly」は2007年のアカデミー歌曲賞を受賞。11年にはオフブロードウェイで舞台化され、12年にブロードウェイに。トニー賞を8部門で獲得しています。

「ONCE」の成功からハリウッドに進出、次に制作したのが「はじまりのうた」で、これも2014年に全米5館で限定公開でスタート。最終的に1300館以上に拡大され、「ONCE」を超えるヒット作となりました。
自殺を考えたふたりが出会った
さて、前置きが長くなりましたが、「はじまりのうた」です。キーラ・ナイトレイ演じるグレタが酒場でギターを弾き語るシーンからはじまります。
気づいたら地下鉄にいた
(略)
列車が迫り来る
線路をつたい
痛みが消えて
真っ暗闇になる
鉄道自殺を図る心境を歌った曲です。
一緒に音楽の世界をめざした恋人に手ひどく裏切られ、もう故郷に帰ろうという気持ちで唄ったその曲が、その酒場に居合わせたダン(マーク・ラファロ)との出会いとなった…。
ダンは落ち目の音楽プロデューサー。最初の成功で音楽会社を設立したものの、その後はヒット作を生み出せず、精神を病み、献身的に支えてくれた妻とも離婚。ひとり娘とも関係がぎこちなく、ついに会社をクビになり、自殺が頭をよぎったその夜、偶然立ち寄った酒場でグレタの歌に出会った…。
このふたりが、ニューヨークの街角で街録しながら、アルバムづくりを共同で始める…。
というストーリーです。
どうです? 面白そうでしょう。こういうストーリーですから、登場人物はグレタやダン、あるいは裏切った恋人、ダンの元妻や娘であるわけですが、やはり主役は音楽です。
帰りたいならちゃんと言って
「はじまりのうた」はすてきな歌が多いので、ぜんぶを紹介するのは避けますが、いちばん印象的なのがビルの屋上で演奏する「Tell Me If You Wanna Go Home」です。
Just tell me if you wanna go home 帰りたいならちゃんと言って
ダンの娘が途中からギターで参加して(このギターがかっこいい!)、ダンもベースを弾いて親子共演。その姿を元妻がカメラで撮影して、音楽が壊れていた家族関係を修復していくという場面です。
ユーチューブでInterscope Recordの公式チャンネルが、この曲の音楽クリップを公開しています。
もう一曲紹介します。グレタが恋人と関係がよかった頃に作った「Lost Stars」という曲です(映画では、グレタが歌い、恋人がギターを弾く場面もあります)
元恋人役はアダム・レヴィーン
グレタを裏切った恋人を演じているのは、なんとマルーン5のリード・ボーカル、アダム・レヴィーン!
一緒に音楽の世界をめざそうとニューヨークに出て来たのに、すぐに業界の色に染まって浮気の末破局。しかし、人気シンガーに登りつめても、一時の浮気がさめてみるとグレタを思い出し、グレタとの復縁を模索する…というしょうもない役柄です。
でも、さすがアダム・レヴィーン。映画の終盤、グレタを招いたライブ演奏で、会場の袖に立つグレタに聴かせるように「Lost Stars」を演奏します。
God, tell us the reason 神様、理由を教えて
Youth is wasted on the young 青春が過ぎ去って行く
これも、マルーン5の公式チャンネルに音楽クリップが公開されています(使用映像は「はじまりのうた」ですが、映画とは微妙に異なり、グレタが映る場面はカットされています)
「はじまりのうた」はいい曲が多いので、紹介した曲以外にも、いくつかスポティファイのミュージックプレイヤーをつけておきます。
もちろん、映画としても優れているので、ぜひ機会を探して観てください。
(しみずのぼる)
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