マネーの記事では、資産運用の初心者が最初に手を出すなら、積立投資信託がおすすめであることを縷々説明してきました。いよいよ証券口座を作ろう!という気持ちになってきたと思いますが、その前にNISA(ニーサ)とiDeCo(イデコ)の基本を知っておく必要があります(2023.7.19)
通常の20%課税が非課税に
この記事を書いている時点(2023年7月)では、資産運用する先として”お得”な選択肢は、NISA(少額投資非課税制度)、つみたてNISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)が考えられます。24年1月から、NISAとつみたてNISAが一本化した新NISAがスタートしますが、これは後述します。
どうして”お得”かと言うと、投資によって得た利益が非課税だからです。
通常、投資によって得た利益(株式の売却益や配当金、投資信託の譲渡益や収益分配金)は、約20%課税されます(現在は復興特別所得税が加えられて20.315%)
例えば、株の売却益で100万円得ても、あらかじめ約20万円源泉徴収されて、実際に受け取るのは約80万円というわけです。
NISAは、その名のとおり、少額投資に限って非課税にしますよ、という制度です。NISA口座で100万円の売却益が出たら、そっくりそのまま100万円を手にできるわけですから、やらない手はありません。
23年7月時点では、NISAは年間120万円までで、非課税期間は5年という制約がありました。つみたてNISAは年間40万円までで、その代わり非課税期間は20年です。また、NISAとつみたてNISAの併用はできず、売却した枠を再利用することもできません。
iDeCoは60歳まで現金化できない
一方のiDeCoは、その名のとおり、年金制度のひとつです。運用益が非課税である点はNISAと同じですが、さらに積み立てた掛金が全額所得控除となるメリットがあります。
ただし、NISAは好きな時に売却できるのに対して、iDeCoは「年金」ですから、原則として60歳まで解約できません。
結婚、子育て、マイホーム、教育など、人生のステージの階段を上がるたびにまとまった資金が必要になります。しかも会社員なら、会社が企業年金を用意しているケースがほとんどです。それに上乗せする形でiDeCoで掛金を積み立てるよりも、いつでも現金化できるNISAのほうが使い勝手がよいと言えるでしょう。
これまでにも紹介してきた両@リベ大学長さんの「お金の大学」(朝日新聞出版)は、
投資用口座はざっくり、
・一般口座、特定口座
・つみたてNISA
・NISA
・iDeCo
の4種類あるんや。
と紹介したうえで、「初心者はつみたてNISAを」と勧めています。

基準満たした商品だから安心
まず、運用期間が長いのはさっきの表の通りや。学長は基本的に初心者の投資は長期投資から入るのがおすすめと思っとる。だから、つみたてNISAは非常に相性が良いんや。
そしてもう1つ、つみたてNISAの場合「金融庁が設けた基準をクリアしたファンド」しか買う事ができないんや。これは、初心者にとって非常にありがたい事や。ぼったくり商品を、国が除外してくれているという事やからな。
つまり、つみたてNISAの対象ファンドから選べば、初心者でも大きくは失敗しにくいということなんや。
以前の記事(投資商品は利回りと手数料に着目しよう)で紹介した「eMAXIS Slim全世界株式」「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」など計7商品は、どれも金融庁の審査を通った投資信託商品です。まずはこのあたりからつみたてNISAで積立設定する、というのが「きょうこの時点での」おすすめの資産運用方法でしょう。
24年1月から新NISAスタート
わざわざ「きょうこの時点での」と断り書きを入れたのは、2024年1月からNISAが全面的に改まるからです。

金融庁はそのための特設サイトも用意していますが、簡単に言えば、つみたてNISAが「つみたて投資枠」に、NISAが「成長投資枠」に衣替えしたうえで、
- 年間投資枠が大幅拡充
- (つみたて投資枠は120万円)
- (成長投資枠は240万円)
- 非課税期間が無制限
- 両制度の併用が可能
- 売却枠の再利用が可能
となります。
1年間の非課税枠は360万円に
1年に利用できる投資枠は、積立投資枠と成長投資枠の合計360万円です。
現在は、NISAを選べば120万円が限度、つみたてNISAを選べば40万円が限度でしたし、両制度の併用はできませんでしたから、つみたてNISAの利用者からすれば、24年1月から一気に9倍も非課税枠が拡大するわけです。
しかも、生涯投資上限も1800万円(現在はつみたてNISAが800万円、NISAが600万円)に拡大されます。
これはもう1800万円の枠いっぱい新NISA口座で投資信託や国内株を購入して、さらに余裕がある場合は通常の証券口座(たいていの人は「特定口座・源泉徴収あり」)で購入する、という利用がベストと言えるでしょう。
証券口座はどこでも無料で開設できますが、NISA口座はどこかひとつ金融機関を選ぶ必要があります。
次回は(NISA口座を含めて)証券口座をどこに開設したらよいかを取り上げます。
(いしばしわたる)